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言葉って人を殴る鈍器になるんだな


 衝撃的な侯爵の言葉に頭が真っ白になる。


「ここ最近良く塞ぎ込む様子もありましたが元々大人しい子でしたから、婚約式に少し緊張しているのだろうと深く気にもしないでいたのです。本日も浮かない顔をしておりましたが大事な日だからと言い聞かせて連れて参りました。ですが目を離した隙に姿が見えなくなり今リューイに捜索に向かわせた所です」

「皆様にはお詫びのしようもありませわ」


 そう言ってついに泣き出してしまう夫人を母が慰める。


「リリア落ち着いて。それに考えたくはないけれど誘拐という可能性もあるわ。すぐに城の騎士にも捜させましょう、ね?あなた」


 母の言葉に緊張が走る。父もすぐに人を呼び出した。有力貴族の令嬢と言うだけでも手に入れたいと思う輩は多いだろう。ましてあの美しさだ、誘拐の可能性は大いにある。


「いいえ、シルヴィアはこの日が来る事を恐れていたのですもの。逃げ出したに違いないわ!」


 夫人の言葉は鈍器になって飛び出す特殊な声のようだ。言葉で私の頭がぶん殴られたような衝撃が走る。この日を恐れてた?だから逃げ出した?病弱なシルヴィアが?衝撃を食らった頭には疑問ばかりが浮かびどんどん嫌な思考に囚われていく。


 そもそも体が弱いから会えないなんて言うのもおかしかった。はなから私との接触をシルヴィアが拒んだのではないか?私の我儘で日程が大幅に短縮され心の準備も出来ず嫌々今日という日を迎えたというわけか?浮かれていたのは私だけで実はずっと嫌われていたのか?


「セシル、大丈夫か?顔色がおかしいぞ」


 父が気遣わしげに聞いてくれるが答える気力などなく、はははと乾いた笑いしか出なかった。侯爵が片膝をついて私に視線を合わせると心底申し訳ないという表情で言った。


「セシル様、臆病な娘をどうかお許し下さい。あなた様との婚約が決まった時、娘はそれはもう喜んでいたのです。ですが何故かどんどん自信を無くしていき、今日もあなた様の立派なお姿に見惚れてはすぐに怖気づいておりました」

「え?」

「そうなのです!この二年、ずっとこの日のために努力して来たのに何故か日に日に自信を無くしてしまって。我が子ながらどこに出しても恥ずかしくなく思っていましたから、わたくしも深く考えもせず放置したのがいけなかったのです!親として、もっとちゃんと向き合ってあげていればこんなことには!」


 そう言って夫人は泣き崩れた。


「僕が嫌で逃げた訳では?」

「そんな、まさか!」


 私はショックで詰めていた息を一気に深く吐き出した。嫌われていたのではなかった。



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