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よく聞こえなかったんだが、どうやら私は彼女に逃げられたらしい


 婚約式会場の扉の向こうに居たのはグレイ夫妻のただ二人だけだった。別に人が少ないのは予定通りでそこに驚いた訳ではもちろんない。この日もシルヴィアの安全を考えて大袈裟な式は行わず、両家の両親と当人、立会人である王弟のみのこじんまりとした式の予定であったからだ。両親と叔父上はこれから来るのも分かっていた。共に入室する予定だったのを、歩みののろい大人に焦れて私だけ先に駆け出したのだから。


 私が愕然とした訳は、真っ先に見たかった者の姿がそこになかったからだ。不思議に思ってグレイ夫妻に視線を向けると困ったように眉を寄せている。


「シルヴィアはどうしました?」


 問いかけた直後、今しがた私が開けた扉が背後で再び開く気配があった。置き去りにした大人達が追いついたようだ。彼らの入室に合わせてグレイ夫妻はすかさず礼の姿勢をとる。


「よせイーサン、そう畏まらずとも良い」

「そうよ、リリアも楽になさって?」


 国王夫妻に許され礼を解くが上げた顔の表情は暗い。


「なーに、リリア?この晴れの日に浮かない顔をして」


 母が気遣いの言葉を掛けながらグレイ夫人に歩み寄る。夫人は何事かを言いあぐねる様に唇を開いては閉じてを繰り返していた。


「シルヴィア嬢はどうしたね?」


 叔父上が会場内を見渡して本日の主役の一人であるシルヴィアのいない事にようやく気づき夫妻に尋ねた。今にも倒れそうな夫人を支えイーサン・グレイ侯爵が答える。


「申し訳ありません。逃げられました」


 え?今なんて言った?




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