彼女は体が弱いらしい
完結まで書き上げており15000字程度、全14話です
さくさく読み進められるかと思います それでは宜しくお願い致します!
これは私の一目惚れが招いた国を揺るがす大事件の話だ。その事件は未だ国民に伏せられ、どうしたものかと父である国王陛下を長く悩ませる事になったのだが、申し訳なくは思っても後悔はなかった。
私はアラルジャン王国の第一王子として生まれ、正式な王位継承者として育った。そして十歳の誕生日に立太子式と婚約を同時に行った。
婚約者であるシルヴィアは同年の生まれで有力貴族であるグレイ侯爵家の令嬢だ。グレイ夫妻と俺の両親である国王夫妻は貴族学院の学友で今も公の場でもなければ気安く良好な関係を続けていた。そんなグレイ家の長男でシルヴィアの兄のリューイとは城で共に剣術を学び、私も稽古以外ではよく遊んで貰い兄のように慕っていた。
リューイの登城の際にたまたま見送りに着いて来ていたシルヴィアは、同じ年とは思えない落ち着いた雰囲気と美しさで、遠目に見たそのただ一度で私の心は彼女に奪われてしまった。
まだ八歳であったが私は彼女と婚約したいとすぐに両親に願い出た。驚かれはしたが二人もグレイ夫妻には信頼もあり、家格も問題ないため数日のうちに将来婚約する事を許され話が纏まった。そもそも、両家共にいずれはそのようにと思ってはいたようで話はスムーズに進められたのだが、悲しい事に婚約式のその日まで彼女との接触は禁じられた。
何でも彼女は体が弱く、幼いがゆえ病への抵抗力が無いため外出が出来ないという理由らしい。しかし、馬車でリューイについて来て見送る際には馬車から降りていたはず。それを指摘すればあの日はたまたま体調が良かっただけだと言われ、では自分がグレイ家へ出向くと言っても体に障るから駄目だと言われる。
訳の分からない大人の言い分に苛立ちを隠さずに私は過ごした。剣術の稽古でも彼女と毎日会えるリューイに八つ当たりのように食ってかかった。しかし五つも年上のリューイには軽くいなされ苛立ちが募るばかり。素行の悪くなるのを懸念して、本来十二歳で婚約式を行う予定だったのを十歳に短縮してもらえた。その代わりに立太子式も同時に行うから、残された日数で王太子として必要な教養を全て身につけるよう約束させられた。無理だった場合は婚約の話は白紙にすると脅されれば、そこからは態度を改めて勉学や稽古に真面目に打ち込んだ。
十歳の誕生日、彼女に会えるのが楽しみで仕方なく、先に行われる立太子式が途方もなく長く感じて苛ついたほどだ。だが、参列者の中に彼女の姿を見つけると心は高揚し苛立ちもすぐに収まった。たった二年で更に美しく成長した彼女に一瞬目を奪われるも、私も格好良く思われたくて努めて冷静に堂々と式に向き合った。
立太子式を終えいよいよ婚約式の時を迎えると、喜び勇んで会場へと向かった。やっと彼女に、シルヴィアに会える。幸せな瞬間が訪れると思っていたのだが、会場に着くと私は愕然とした。