第四十七話 新たな情報を求めて
ファソンって、確かブラハルト様のお兄様である、エドガー様の偽名よね? 名前が一緒なだけの可能性もあるけど、不誠実な対応をしていたみたいだし、本人で間違いなさそうだ。
でも、どうしてエドガー様がワーズ家の使者なんてしているのだろうか? それに、どうしてワーズ家と手を組んで、私達に手を出してきたのだろうか?
「貴重な情報、ありがとうございます。他に知っていることはありますか?」
「申し訳ありませんが、これ以上は……」
「わかりました。あとはこちらで何とかしてみます。では、そろそろ我々は失礼させていただきます」
「は、はい……この度は、本当に申し訳ございませんでした……」
「いえ、お気になさらず。このことに関しては、我々は口外しませんので、ご安心ください」
無事に情報を聞きだせた私達は、アセット家の方々のお見送りの元、屋敷を後にした。
ただ、その帰りの馬車の中の空気は、行く時よりも重苦しいものになってしまっていた。
「その……ブラハルト様、私の実家がご迷惑をおかけしたみたいで……申し訳ございません」
「いや、俺こそ身内が迷惑をかけたな……すまなかった」
この重い空気の理由。それは、互いの身内が、互いの大切な人を傷つけていたことへの、申し訳ないと思う気持ちのせいだった。
傍から見れば、私達は何も悪くないと思ってくれる人はいるかもしれないけど……それでも、相手が大切だからこそ、申し訳ないと思ってしまう。
「…………」
「…………」
まるで婚約を申し込まれた時の日のような静寂だ。だが、あの時は静かで居心地がよかったけど、今はあまりいいものではない。
……こんなことでは駄目よ、私。このまま気分が沈んでいても、何も状態は良くならない。
それどころか、相手はあのワーズ家とエドガー様だ。落ち込んで何もしないでいたら、さらに何かしてきてもおかしくない。
「……落ち込んでいても仕方がないな。早く事態を収拾させるためにも、前向きに行こう」
「えっ……?」
「どうした、なにか変なことでも言ったか?」
「そういうわけではなくて……私も、ブラハルト様と同じ様に、このままでは駄目だと思ったところでしたの」
「ははっ……俺達は、相変わらず変なところで息がぴったりだな」
「そうですわね……うふふ」
さっきまでは重苦しい雰囲気だったのが、少しだけ明るくなった気がする。
どんな状況とはいえ、せっかくブラハルト様のお隣にいさせてもらえているのだから、あの日の静かな夜みたいに、居心地が良い空気にしたい。
「とりあえず、今の情報をまとめておこう。今回の一件の黒幕は、ワーズ家と兄上だ。目的は不明だが、俺達に何かをしようとしている」
「どちらから手を組もうと言い出したかも、わからないですわよね」
「そうだな。それと、イリチェ村の橋を破壊したのも、彼らが関わっていると間違いない」
「橋の破壊と、パーティーでの襲撃……どちらも同じお方が行っていましたし、間違いないでしょう。ですが、襲ってきたお方は誰なのでしょう?」
「ワーズ家が雇った悪人か、兄上の知り合いか……候補はいくつかあるから、何とも言えないな」
情報は少しずつ揃ってきたけど、考えることが多くてよくわからなくなってきたわ……とりあえず、落ち付いて考えてみましょう……うーん……。
「……どうしてエドガー様が、私達にこんなことをしだしたのでしょうか?」
「これは推測だが、兄上が来た時に、エルミーユは反抗的な態度を取っただろう? 自分が一番で、自分の思い通りにならないと気が済まない兄上にとって、それが屈辱だったのかもしれない」
「そ、それでは……私が原因じゃありませんか!」
「悪いのは兄上であって、エルミーユは俺を守ろうとしてくれただけだろう?」
「そうかもしれませんが……」
あの日、ずっとヘラヘラしていたエドガー様は、私に水をかけられたことで、お怒りになられていたのは覚えている。
だからって、その報復としてこんなことをするの? それも、ワーズ家と手を組んで!?
「他にも原因があるのかもしれない。それを知るために、もっと情報を集めよう」
「それは賛成ですが、どこで情報を集めるのですか?」
「この国の騎士団だ。知り合いがいるから、彼に橋を破壊した男の似顔絵を見せて、何か知っていないか聞くんだ」
「なるほど、それはいいですわね! それで、いつ行かれるのですか?」
「今からさ。実は、既に向かっている最中だ」
なるほど、今からなのね……随分と積極的……って、今!?
「い、いつの間に会う約束を!?」
「事前に連絡をしておいたんだよ。これから俺達は、明るい未来に向かって進まなければならない。それを邪魔する連中は、早急にご退場願わないといけないからね。それがたとえ肉親でも、義理の家族でも……ね」
「ブラハルト様、頼もしいです! 私も微力ながらも、お手伝いします!」
「微力だなんて。エルミーユの頭があれば、乗り越えられる問題だって出てくるさ。だから……俺の世界一大切な妻よ、俺に力を貸してくれ」
「はいっ!」
差し出された右手に、私は左手でギュッと掴む。
そして、ブラハルト様は私をグッと力を入れて引っ張ると、私を強く抱きしめてきた。
「きゃっ……ブラハルト様?」
「怖い思いをしたというのに、俺に協力してくれてありがとう、エルミーユ。こんなことはさっさと終わらせて、いつもの日常を過ごそう」
「はい、もちろんです」
アルスター家での平和で幸せな日常を取り戻すための誓い、そして家族達によって引き裂かれそうになった愛情を確かめ合うために、私達は口づけを交わした。
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