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魔石




この国には《魔石》があります。



なんでもその昔、当時の国王陛下が竜の巫女だか、魔女だか、占い師だかに貰ったという石です。


拳ほどの大きさの、紫色の石ですが、この国を守っていると言われています。

真偽の程はわかりませんけどね。


ですが、この国は酷い凶作や天災に見舞われたことがありません。

周りの国々とは明らかに違います。


この国が《守られている》のは確かなようですね。


さて、その《魔石》ですが。

《王を選び》ます。


《王家の血を持つ者》しか《王》として認めない。

その昔に《魔石》を貰った国王陛下が、何か契約でもしたのかもしれませんね。


過去に一度、内乱が起き、王族以外の者が王になろうとしましたが……。

《魔石》に焼かれ終わったそうです。



そんな経緯がありまして。


この国の国王は、即位する時に必ず《ある儀式》を行います。

《魔石》に触れ《私が次の王だ》と宣言する儀式です。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「そんなことは知っている!その儀式なら私も行ったからな。

だが何も問題は起こらなかった。

私が《魔石》に王だと認められた証拠ではないか!」


お父様のお話を聞いた国王陛下が苛々した様子で言われました。

それを軽く流すように、お父様は国王陛下の後ろへ歩を進めます。


「貴方は即位と同時に成婚されました。

その儀式は貴方と王妃様の二人。《ご夫妻》で手を合わせて行われましたね。


直接《魔石》に触れたのは?


貴方ですか?

王妃様ですか?」


お父様に問われた国王陛下は言葉を失われました。


「王妃様、でしょう?《魔石》に認められたのは王妃様です。

つまり《魔石》からすれば、この国は今《女王陛下》の国なのでしょうね。


……この国の王と認められた者の瞳は、以前より濃い紫色になるそうですよ。

今の王妃様の瞳は……と。貴方はご存知ないかもしれないですね」


国王陛下はふん、と鼻を鳴らし横を向かれました。

お父様は苦笑されます。


「信じられませんか?

なら、試していただいても良いですよ。


ですが、お勧めはしませんね。


何年かに一人はいるんですよ。


信じずに《魔石》に触れ、冗談半分に《私が次の王だ》と宣言する愚か者が。

困るんですよねえ。


誰か《特定》するのに時間がかかって。

なにせ頭が綺麗さっぱり消えていますから」


「―――――」


無意識にでしょうか。お父様の言葉に首に手を当てた国王陛下。

居並ぶ皆様は頷き合っています。


「《魔石》があるこの国では、王家の血を引かない者は王になれないのです。

そして王家の血を引く者は、瞳の色を見れば一目瞭然だ。


―――ですが。


先代王妃様――貴方のお母上は、外交で遠くの国からいらした際に、先代国王陛下が見初めた方でしたからね。


知らなかったのでしょう。


《瞳の色以外は》夫と似た者の子――貴方を産んだのですよ。

子の《姿形》が夫に似ていれば、不貞に気づかれないと思ったのでしょうね。


お父上の先代国王陛下はもちろん、周りも皆、気づきましたよ。

当然です。生まれた貴方は王族の《証》を持っていなかったのですから。


しかし、

それでも先代国王陛下は、先代王妃様と貴方を極刑にはしなかった。


むしろご自分を責めたのです。

《自分が王妃をそこまで追い詰めたのだ》と。


責められるべきは自分で、先代王妃様と貴方には罪はない。

そう思われたのです」



よく《まるで父のような方だった》と話していた先代国王陛下を思い出されたのでしょうか。

お父様は遠くを見るような眼差しで言われました。




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