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いらない想い




初めて王太子殿下とお会いした時のことは、今でも鮮明に覚えています。



この国では、宰相である父を筆頭に大臣、主要貴族の方々の集まる会議が頻繁に開かれます。


その日も、会議の日でした。

議題は忘れてしまいましたが、お父様の教育方針で幼い私も見学で参加しておりました。


そこへ、彼を連れてやってこられた国王陛下が宣言されたのです。


「この子が次期国王。王太子である」と。


居並ぶ多くの臣下に向かい、彼を差し出すようにして。


国王陛下が後ろから彼の両肩に手を置き、押さえつけるようにしていらしたので彼に逃げ場はありません。


彼の顔は青く……ですが、それでも微笑みを浮かべて立っていました。


多くの大人たちを前にして、震えていた手足。

揺れていたその翡翠色の瞳。


その瞳がその場にいた唯一の子どもである私を見つけると、輝いたのです。


安心したように。

それは嬉しそうに。


私は、その瞳に魅入られてしまいました。


すぐお父様に「彼の婚約者になりたい」と告げたくらいです。


物心がつく前から私は彼の婚約者でした。

ですが、それは仮初のものだったのです。


私は正式に彼と婚約を結びたいとお父様にお願いをしました。

一生のお願いです。


お父様は相当驚いたようです。


私はお父様の――この国で唯一の公爵家の一人娘。

驚くのは当然でしょうか。


お父様は「よく考えなさい」と壊れたように繰り返してみえましたが、私は本気でした。


何日も、何ヶ月もお父様にお願いして。

そうして私は、王太子殿下の――彼の婚約者となったのです。



「……無理なやり方でしたでしょうか」



そして正式な婚約者となって初めての顔合わせ。


彼の瞳が私を見ることは……もうありませんでした。


王宮に行っても、お茶会に誘っても、彼は会ってもくれませんでした。

お誕生日の贈り物をしても受け取ってもらえず

私のお誕生日にはカードすら届くこともなく。


そして現在に至ります。


私は、彼に嫌われているのでしょうか?

彼には私の存在など邪魔なものなのでしょうか?


もちろん、考えました。

けれど、彼からは何も言われることはなかったので

私は、自分の都合の良いように考えてしまっていたのかもしれません。


大丈夫だ、と。


大丈夫。今はすれ違っているけれど

結婚すればきっと、私を見て下さるわ。

それから愛を育めば良いのよ。



何が《大丈夫》だったのでしょう―――――



……ミリア嬢のことは知っていました。



最近、よく王太子殿下と一緒にいる方だと聞いていたのです。


有名な豪商のお嬢さんで、私より三歳年上。

王太子殿下と同い年です。


私は存じ上げませんでしたが、同じ学園に在籍されていたらしいです。

学園で……王太子殿下と知り合われたのでしょう。


淡い飴色の髪と瞳。

初めてお会いしましたが、ミリア嬢は可愛らしい女性でした。


殿下はああいう女性が好みだったのですね。

ミリア嬢であれば殿下の色――翡翠色が似合うでしょう。


くすんだ黄色の髪に、薄紫の瞳の私と違って。


……お似合いですよ……ね。



また涙が溢れてきました。

いつになったら止まるのでしょう。



何故、誰からもいらないと言われるような想いなど抱いてしまったのでしょう。

何故、捨てられなかったのでしょう。



全て私の空回り。



私の想いなど

肝心の彼にとってもいらないものだったのに。



彼には迷惑なだけだったのかもしれません。

私の方が一方的に想い、結ばれた婚約だったのかもしれません。


けれど、私は。


彼を生涯、支えようと


……守ろうと



本当に、そう思っていたのです―――――




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