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回想
――「この子が次期国王。王太子である」――
居並ぶ多くの臣下に向かい、差し出された男の子。
この国の中枢である大人たち。
その皆からの、冷たく刺すような視線を浴びながら
それでも微笑みを浮かべて立っていた男の子。
震えていた手足。
揺れていたその翡翠色の瞳。
その瞳が、私を見つけると―――――
私、知ってたの。
その前からずっと。
お父様に連れられて、王宮へ
会議室へ向かう時
いつも私を見ている男の子がいることを。
優しい翡翠色の瞳を……
ただ見られていただけ。
時折、視線が交わっただけ。
言葉を交わしたわけじゃない。
それでも十分だった。
交わした言葉は
――「君は、僕にはもったいなさすぎる」――
――「私は貴方といたいです」――
それだけ。
それで十分、だった。
……それが私たちの全て。
それは、きっと
小さな子どもの頃の
ただの
小さな
小さな……初恋の
思い出。
ただ……それだけ…………




