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80/80

episode80 終章閉幕

(ナレーション)


 トリスワーズ全土を巻き込んだ騒乱は、ヴィスタネル王家の国王ヴァルデマルの亡命という結末をもって終わりを迎えた。


 多くの兵を失い、多くの無辜むこなる民が犠牲となった今回の騒乱の傷は深く、トリスワーズの国力は大きく減少することとなった。


 しかし、騒乱の英雄『エヴァルト=ヴィスタネル』の提案により、8つの人種がそれぞれに自治権を持った8つの首長国からなる『トリスワーズ首長国連邦』として再出発したことで、トリスワーズは目覚ましい復興を果たす。


 政治面では各首長国の代表による合議制を採用し、議長は持ち回りとなっている。

 

 この日も、トリスワーズでは首長国の代表が集まっての会議がもよおされていた。


「おーい、リザルト! 元気にしてたか!?」

「人の名前を成果報告みたいにしないでくれるかな」

「はっはっは。元気そうでなによりだ」


 カタパルトよりは原形が残っているな……。

 ベントットはリザドの首長となったが、性格は相変わらずだ。



「あー、エヴァルトだぁ♪ 久しぶりだねぇ。ところで、シャルはどこぉ?」

「モカ、久しぶり。シャルティなら留守番だよ。そろそろ生まれる頃だから」

「わぁ♪ 楽しみだねぇ」


 コボルの首長もモカに――ということはなく、普通にマタリ長老なんだけど、会議があると必ずモカも付いてくる。

 モカ曰く、次期首長としてお勉強中、とのことだ。


「最初に抱っこするのはあたいだからね!」

「いや、最初はシャルティだろ。で、次は僕だから」

「我も赤子を抱き……いや、なんでもナイ」

「そこは遠慮しないでよっ。むしろ抱っこしてあげて!」


 ダイサツとサラーマはふたりでひとりの、オルガの首長。

 オルガは先の大戦で大きく数を減らしたこともあり、ヒュムの自治区である旧王都の一部をオルガの自治区とすることで共存している。


「赤子の部屋はワシに作らせい」

「えっ!? 本当に作って貰えるなら是非お願いしたいんですけど……防塁はいらないですよ?」

「ちっ、つまらんのぉ」


 モンセノーの爺さんは騒乱を治めた英雄のひとりとして、ドワフの首長になった。

 本人は「やれやれ、仕方ないのぉ」なんて言っていたが、結構ノリノリだと思う。


「あ、エヴァルトだ。シャルティは元気?」

「うん。もうあとは生まれてくるのを待つばかりって感じ」

「いいなぁ。私も結婚して子供が欲しいなぁ。……ねぇ、エヴァルトのところは側室とかやってないの?」

「え゛!?」

「あははははは! 冗談よっ。そんなことしたらシャルティに殺されちゃうわ」


 ハピラの首長は、ルチアの父親……つまりシャルティの叔父にあたる人が選ばれた。これもルチアが騒乱を治めた英雄のひとりであることが影響しているらしく、ルチアが一人前になるまでの代理だと本人は言っていた。


「よぉ、兄ちゃん! ちょっとは父親らしくなったか?」

「いや、まだ産まれてないし」

「バッカだな。産まれる前から父親としての意識を持っておかないと痛い目みるからな」

「え!? そうなの?」

「子育ての恨みは怖いぞ」


 ホビトの首長となったゲインは、実は4児の父らしい。

 元々、部族の長だったこともあり政治でも鋭い意見を出してくれるが、これからは父親の先輩としてもお世話になりそうだ。


「エヴァルト! 久しいのぉ。そろそろわらわと婚姻を結ぶ決心はついたかのぉ?」

「ファニー! その話は断ったよね……」

「お主が断っても妾が諦めぬ限り、この話は続くのじゃ」


 エルフの首長はファニー女王がスライドする形で収まった。

 トーベンは引き続き、後見人としてファニーを補佐している。


 ヴァルデマルとの決戦が終わってからというもの、会うたびに結婚を申し込まれている。

 首長国間の融和、人種間の融和の象徴しての結婚という建前を押し出してくるだめ、国内でも賛成派が増え始めているのが厄介だ。


 でも、それならベントットでも良くない?


「エヴァルト首長! 奥様が!!」

 ドタドタと駆け込んできたのは、秘書のひとりだ。


「シャルティになにかあったのか!? 子供は!?」

「は、はい! 母子ともに健康です!!」


「ん?」


「あ、すみません。報告が前後しました。お子様が無事にお生まれになりました。男子です!」


「生まれた? 生まれたのか!?」


 その瞬間、議場は拍手で埋まった。

 エヴァルトと、その妻シャルティの第一子誕生。


 トリスワーズの明るい未来を象徴するかのような、この慶事は臨時ニュースとなって瞬く間に国中に民が知るところとなる。

 

 北のホワイトリベットでは今もなお戦乱が続いている。

 エルフの森を抜けた南のグレンジ公国との国交は始まったばかり。

 これまでは遠国と見ていたグランドダラム教国の介入も警戒が必要だ。



 この先の未来にも多くの苦難が待ち受けているだろう。

 それでも新しい時代の子供たちが、きっとその手で切り拓いてくれると信じてこの物語を終えたいと思う。


  

      【了】

最終章「討ち果たすもの」

 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


 これにてエヴァルトとヴァルデマルの因縁、トリスワーズの騒乱を描いた本作は完結となります。


 勉強もリサーチもそこそこに、ただ自分が書きたい世界を描いた作品でした。

 途中、何度も納得のいく展開が思いつかずに頭を抱えましたが、無事に最後まで走り抜けることが出来たのは、ブクマして読みに来てくれた皆様のおかげです。


 もしよろしければ、最後の情けで★での評価を頂けますと幸いです。

 ★から★★★★★まで、思ったままの評価を是非、よろしくお願いします。


 "応援"、"忌憚のないコメント"、"あたたかなレビュー"いずれも大歓迎です。


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