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episode55 戦の伝承

(ゲインは語る)


 お?

 やっぱり気になっちゃう?


 教えてあげてもいいんだけど……どうしよっかなぁ。


 あー!

 ウソウソ!!


 言う!

 言うから、そんな目で見ないで!!


 でもさすがに、手を縛られたままじゃ口も滑らかに動かないっつーかよぉ。


 いや、逃げねぇって。

 つか、この状況で逃げられるわけないだろ?


 お、そうそう。


 ん-ーー!!

 自由って素晴らしい!!


 で、なんの話だっけ?


 あー!

 ウソウソ!!

 分かってる!!

 分かってるから!!


 大戦が終結した真実、だろ?

 ちゃんと話すよ。


 これは、俺が爺さんから聞いた話だ。

 信じるか信じないかは兄ちゃん達が決めてくれ。


 まずは当時の状況整理からだな。

 大戦で『ホビトがどういう立場だったか』ってのは、この話の信憑性に大きく関わるんだ。


 先の大戦で、ホビトは部族によって参戦したり、しなかったりバラバラだった……と、言われているが正確にはちょっと違う。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 どういうことかって?


 簡単さ。

 どっちの陣営が勝っても、ホビトが人種として生き残れるように、部族単位で陣営を分けたんだよ。


 ヒュムの陣営、リザド、コボル、(あん)オルガ、ハピラ(たら)の連合軍陣営、それから大戦に参加せずに隠れる陣営だ。


 俺たちホビトは見ての通り、身体が小さい。

 つまり戦闘能力が低い。

 加えてスキルは精神型で、サポートやかく乱には強いが、やはり戦闘には向かない。


 連合軍あんたらみたいにヒュムと国の覇権を争おう、なんて考えには賛同しかねる、っていうのが当時の族長たちの考え方だったそうだ。


 だから大戦に参加しない陣営も必要だった。

 大戦に勝った後に、ある程度の人数はホビトが残ってないとしゅの未来に関わるからな。


 事実、今やオルガは絶滅危惧種だろ?

 これは、もし連合軍が大戦に勝っていたとしても変わらない結果だ。


 え? ホビトには種族を統一するような長がいないから、部族がバラバラに大戦に参加していたんだと思ってた?


 そう思ってくれていたんなら、俺たちの思惑通りってことだな。


 もちろん、種族を統一する長がいないってのは本当だ。

 だが、部族の長同志がコミュニケーションを取らないってわけじゃない。


 今だって、年に1度くらいは各部族の族長が集まって話し合いをしてる。

 きっと、当時もそんな感じだったんじゃないか?

 知らないけど。


 まあ、そういう訳で俺たちホビトは両陣営の情報を共有していたってわけだ。


 もう何が言いたいかは分かるだろ?


 当時のヒュム陣営。

 つまりシュヴァル=ヴィスタネルは、だ。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 ヒュム陣営に付いていたホビトの族長が、確かに聞いたそうだ。


 にも関わらず、連合軍のリーダー達は襲撃された。

 襲撃したのヒュムだという目撃情報もある。

 もちろん、シュヴァル=ヴィスタネルの計略ではない。


 これが全て事実だとするならば、導き出される答えはひとつしかないだろう?


 ヴィスタネルの支配下にないヒュムの仕業だ。


 さあ、ならばその外からきたヒュムってのは何者でどこから来た?


 北のホワイトリベットか?

 あそこは群雄割拠の大地、ときにトリスワーズへ侵攻してくることもあるが、目的は領地の拡大だ。


 もし大戦に介入してくるのであれば連合軍だけでなくヴィスタネルも始末しておいた方が分かりやすいし、合理的だ。

 特にトリスワーズ北部を押さえているのはヒュムなんだから、連合軍だけを襲うメリットが無い。


 では南のグレンジ公国か?

 トリスワーズとグレンジ公国を阻むエルフの大森林は、そう簡単に抜けられるような場所じゃない。


 エルフたちに見つかれば問答無用で殺される。

 ごく少人数といえど、抜けるのは困難だ。


 やるならグレンジ公国が総力を挙げてエルフの大森林を攻略するくらいのことをしなくては、あの森は抜けられない。


 もちろん当時、そんな事件があったという話はない。


 残る国はひとつ。

 それがグランドダラム教国さ。


 トリスワーズとグランドダラム教国の間はシトロプ山脈があるから、軍隊での往来は不可能と言われてきた。

 最も遠い隣国、なんていう奴だっている。

 実際、そこまで大規模な移動は現在も不可能だろう。


 だけど、グランドダラム教国から商人や旅人が入ってくることはある。

 つまり物理的に越えられない山脈ではないってことだ。


 結論から言うと、犯人はグランドダラム教国から来たってことになる。


 もちろん武装した軍隊なんかじゃなく、数人の……工作員というか暗殺者というか、そんな感じのアレだ。


 グランドダラム教国なら連合軍だけを襲う理由もハッキリしてるだろ?


 そう、あそこはシュルヴァン教の国だ。

 シュルヴァン教の教義の根幹はヒュムを支配人種と定めた人種主義。

 教徒のほとんどが純血派だ。


 今さらだが、グランドダラム教国はデカい。

 奴らはトリスワーズなんて小さな国の国土になんか、なんの興味も無い。


 じゃあそんな大国が、どうしてトリスワーズの内戦に干渉してきたのか。

 それは、奴らの神にとってヒュムが国を治めていることが重要だからさ。

 さらに言えば、国を治めている王が純血派であることが望ましい。

 勝手に国内をヒュムだけ(クリーン)にしてくれるからな。


 かくして、やつらの思惑通りヒュムであるヴィスタネルが王家となり、トリスワーズを統治することになったってわけさ。


 なにか質問はあるか?


 ん?

 新王のヴァルデマルが純血派?

 それもグランドダラム教国に関係があるのかって?


 あー、そうだな。

 もちろん関係ある。


 だが、その話はなぁ……どうしよっかなぁ。


 いや、金の問題じゃないんだ。

 1分、いや30秒でいい。

 ちょっと考える時間をくれないか。

 


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もし「面白そう!」「期待できる!」って思ったら、広告下からブックマークと★を入れてくださいませ。★の数はいくつでも結構です。それだけで作者の気分とランキングが上がります٩(๑`^´๑)۶

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★次回予告★

 よぉ! 元気にしてるか? 俺はホビトのゲイン!

 俺ひとりで1話まるごと使っちまったぜ。

 気分いいな、これ。クセになりそうだ。

 次回、あにコロ『episode56 逆賊討伐』

 読むなり、ブラバするなり好きにしな!

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