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episode19 旅の行先


 宴のあと、僕たちは村長に用意してもらった部屋で一晩を過ごした。


 そして、朝一番でクロ姉とシャルティに、ベントットが旅に同行したがっている話をした。



「あ、そう。いいんじゃない?」



 意外にも、クロ姉は好意的な反応だった。


 僕はてっきり、勝手に決めてくるなとか、正体がバレたらどうするんだとか、怒られるものだとばかり思っていた。



「悪いヤツじゃなさそうだし。何より、素顔を晒している人がいるだけで安心感が違うわ」



 確かに『マスクをつけた3人組』よりは、『マスクをつけた3人組を率いる素顔の男』の方が信頼出来そうな気がする。



「……クロ姉が、言うなら。……私も、賛成」



 クロ姉に従うかたちで、シャルティの許可も出た。


 こうして、僕たちはベントットと一緒に、次の目的地へ向かうことになった。


 ……そういえば、次ってどうするんだっけ?



「ところで、クロ姉。次はどこに行くか決まってるの?」

「当然! このまま南下してコボルの村に行くわよ」

「コボルの村……、そこも何かトラブルがあるってこと?」

「それは分からないわ。トラブルは現地調達ね」



 行き当たりばったりだった。



「そもそも、あんまり選択肢が無いのよ。大戦以降、人種間の交流はどんどん減っているし、居場所が分かっているのは、リザドのほかにはコボルとドワフだけ。オルガは大戦で村が無くなってて、ハピラは秘密主義で村の場所が分からない。ホビトはそもそも移動民族で定住してないし、エルフに至っては他の人種との交流を遮断(しゃだん)しているんだもの」



 そういうことか。でも、なんでドワフじゃなくてコボルなんだろう?



「……コボルの村、近い。……ドワフの谷、ちょっと遠い」

「あ、ありがとう」



 シャルティのフォローは嬉しいけど、相変わらず僕の考えていることがバレバレなのはどうにかしないと。


 ――ドンドンドン。扉をノックというか叩く音がした。



「おい、そろそろ準備は出来たか?」



 続いて、ベントットのデカい声が部屋に響いた。



「悪いヤツじゃないけど、あの無駄にデカい声はどうにかしてほしいわね」



 クロ姉がこめかみを押さえて言った。


 パッと見、平気そうに見えたけど、たぶん二日酔いだ。浴びるようにお酒飲んでたもんなあ。


 聞いたところによると、案の定、村長秘蔵のお酒をほとんど1人で飲んじゃったらしい。


 部屋に入ってきたベントットが、テーブルに革袋かわぶくろを置く。

 ジャラっと金属がぶつかる音がした。



「今回の野盗退治の報酬だってよ。正確には野盗から回収した金の分配だな」

「報酬なんて貰えないよ。野盗から回収したってことは、元を辿たどればほとんど村のお金じゃないか」

「いいから、いいから。責任もって渡してくるって言っちまったしよ。受け取ってもらえねぇとオレが困る。旅を続けるのにも金があって困ることはねぇだろ?」



 ベントットが革袋を強引に押し付けてくる。



「……正直、助かる」

「そうね。貰えるものは貰っておきなさいよ」



 女性陣も受け取る気マンマンだ。

 正義の味方ってなんだ? 「対価を求めず、困っている人を助ける」とか言ってなかったっけ?



「……対価求めないの、理想の話。……現実は、お金ないと死ぬ」



 なんだかすごくモヤモヤする!


 モヤモヤするけど、ここまでお金周りの一切をシャルティに任せてきた手前、何も言い返すことが出来ない。



「ジョーカーはお子様ねえ。いい? 私たちは一切の対価を要求していないわ。つまり、これは村からの寄付なのよ。あたし達が正義の味方として活躍することに賛同してくれた方々から善意の寄付。教会の炊き出しが、寄付金で運営されているのと一緒よ」



 うーん、これは対価じゃなくて寄付だからOKってこと?

 分かったような、分からないような……。



「別に対価でも寄付でも、何でもいいんだけどよ。オレはちゃんと渡したからな」



 ベントットは呆れ顔だ。

 お金の入った革袋は、シャルティが静かな動きで懐にしまう。



「さ、そろそろ行こうぜ」

「うん……、って、あれ? 次の行先って伝えてたっけ?」

「聞いてねぇけど、どうせコボルの村だろ? この辺から一番近い村だし。……あれ? 違ったか?」

「いや、合ってる」



 なんだろう、この敗北感。

 僕の気持ちを察してか、クロ姉がポンポンと肩を叩いて部屋を出ていく。



「……ジョーカー、元気出して」



 シャルティの優しさが、今は目に染みる。


 リザドの村のみんなに見送られて、僕たちは旅を再開した。


 目的地はコボルの村。徒歩で半日程度の距離らしい。



「あ、そうだ。コボルの村といえば……」



 村を出て30分ほど歩いたところで、先頭を歩いていたベントットが、何かを思い出したように振り向いた。



「もし、急ぎじゃなければ、ちょっと寄りたい場所とこがあるんだが……」

「まあ、今日中にコボルの村に着けるなら僕は別に」

「んー、場所によるわね」

「いや、せっかくだから温泉に寄っていきてぇな、と思ってよ」


「「「温泉!?」」」




当然、誰からも異論は出なかった。


―――――――――――――――――――――――

※読まなくてもいいオマケです。


トリスワーズ国 Tips <スキル>


『放水』

 属性型アクションスキル

 野盗のエルフが持っていたスキルで、エヴァルトが奪ったもの。

 掌から大量の水を放つことが出来る。真水なので飲むことも出来る。


『導眠』

 精神型アクションスキル

 野盗のホビトが持っていたスキルで、エヴァルトが奪ったもの。

 脳に直接作用して、強い眠気を誘発する。効果範囲は約1m。


『犬化』

 変身型アクションスキル

 野盗のコボルが持っていたスキルで、エヴァルトが奪ったもの。

 何の変哲もない小型犬に変身する。ちょっとカワイイ。


★次回予告★

 どうも、エヴァルトです。

 ベントットはこっち側だと思ってたのに。

 どうせバカは僕だけだよーだ。

 温泉に浸かって、ぜんぶ忘れてしまおう。そうしよう。

 次回、あにコロ『episode20 コイバナ』

 ちょっとだけでも読んでみて!

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