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episode10 仮面の女


「シャルティ、エルフを頼む」

「……わかった、任せて」



 リーダーのホビトのスキルは戦闘向きじゃない。

 長身の男のスキルは分からないが、いつまでも受け身というわけにもいかない。


 僕は腰の剣を抜いて、野盗に斬りかかる。


 ――ギィン


 長身の野盗が、剣を抜いて応戦する。


 ホビトはスキルだけでなく、戦闘も苦手なのか、更に距離を取った。


 一合、二合、と切り結ぶ。

 正直、剣の腕は大したことはない。これなら――。



「さすがは元王子ってところか。剣の腕はなかなかだな」

「俺には押されて見えるけどな」

「リーダーは黙っててくれよ。まだまだ、これからが本番なんだか――らっ」



 野盗同士で軽口を叩き合っている。

 まだまだ余裕があるみたいだ。


 ――ギィン


 再び刃と刃がぶつかった瞬間、

 

 ――ゴッ


 僕の右側頭部に何かが当たって、態勢が崩れる。


 

「おっと、スキだらけぞ」



 僕は地面に転がるようにして、追撃の刃を(かわ)した。

 刃は少し肩口を(かす)ったようだが、大した怪我ではない。


 むしろ、側頭部の方がズキズキと痛む。


 足元を見ると、こぶしより一回り小さいくらいの石が転がっていた。


 どうやら、これが側頭部に当たったらしい。



「ほら、まだまだ」



 ――ドスッ


 今度は腹部に石がめり込んだ。

 地面にあった石が、突然、僕の方へ飛んできたのだ。



「なるほど、きみのスキルは念動力ってわけか」



 念動力、触れずに物体を動かす力。

 操作型スキルということは、この男はリザドか。



「だけど、そっちの岩や木を飛ばしてこないってことは、動かせるものの大きさか重さに制限があるのかな?」

「ほお、そのとおりだ。だが、分かったところで、無能な元第二王子様にはどうしようもないんじゃないか?」



 悔しいけど、ぐうの音も出ない。


 一発一発のダメージは耐えられないこともないけれど、斬り合いの最中に石が飛んでくるのは邪魔で仕方がない。


 2体1なら何とかなる、と一縷いちるの望みをかけて、シャルティの方を見るが、そちらも火球遣いのエルフと、一進一退の攻防を続けているようだった。


 このまま消耗戦を続けてもらちが明かない。

 どこかでうまく逃げ出すタイミングを作らないと。



「はい、はーい、そこまで。この王子様はわ・た・し・の・もの。あんまり虐めてもらっちゃ困るのよね」



 突然、声がしたと思ったら、隣に妙な女性が立っていた。

 鳥をモチーフにしたマスカレードマスクで顔を隠している。


 いつの間に現れたのか、全く気が付かなかった。

 これも何かのスキルなのだろうか。



「なんだ、おまえは。邪魔するなら、おまえも殺すぞ」

「やれるものならやってみなさい」



 また、いつの間にかリザドの背後に立っている。



「ぅあっちーーー!!」



 不思議なことに、前にいたはずのホビトの叫び声が、背中の方から聞こえた。


 振り向くと、どういうわけか、エルフの火球に外套を焼かれたホビトが、地面を転げている。


 いつの間に、あんな場所に?

 場所を入れ替えるスキルとか?


 シャルティも何が起こったのか理解出来ていない様子で、目を丸くしていた。



「な、なんでアニキがそんなところにいるんだよ!?」

「あちっ、あちち。分かんねえよ。気がついたらここに立ってたんだから」



 エルフとホビトも明らかに混乱している。



「ほら、今なら、サービスで見逃してあげるわよ」

「あ、アニキ! クソっ、おぼえてろ!!」



 定番の捨て台詞を吐いて、野盗達は街道の脇にある雑木林へと駆け込んでいく。



「たすかっ……た?」



 急展開した現状に、まだ頭がついていっていない。



「……この人、誰?」



 シャルティに尋ねられても、思い当たる節も無く、ただ首を振ることしか出来なかった。



「……ウソだ、だって。……殿下のこと、わたしのものって」



 言ってた! 言ってたけども!!

 知らないものは知らないんだ。


 わたしのものって……あ。

 嫌なことを想像してしまった。


 もしかして「王子様(の懸賞金)はわたしのもの」ってこと!?


 野盗なんかに懸賞金を持っていかれちゃ困るから、まずは助けました。このまま王都に連行します。みたいな!?


 ヤバい。さっきまでの野盗がかわいく見えてくるくらい、ヤバい人に目をつけられてしまった気がする。



「さて、エヴァルト王子にシャルティさん。ちょっと大事な話があるのだけど……、まずは場所を変えましょうか」



 彼女はクルリとこちら側に背を向け、スタスタと歩き出した。


 相手は野盗3人を秒で追い払った強者だ。

 おそらく、逃げようとしても無駄だろう。



 僕とシャルティは言われるがまま、マスカレードマスクの女性に着いていった。


―――――――――――――――――――――――

※読まなくてもいいオマケです。


トリスワーズ国 Tips <スキル>


『危機察知』

 超人型パッシブスキル

 グロン将軍のスキルで、自分と身近な人物の危機を察知する。

 現在進行形の危機だけでなく、近い未来の危機まで察知できるが、全ての危機を察知できるわけではない


『伝心』

 超人型アクティブスキル

 ヴァルデマル第一王子のスキルで、伝えたい相手を思い浮かべることで一方的に、考えていることを相手の心に伝えることができる。

 一度に複数の相手に伝えることも可能。伝達できる距離は未知数だが、王城から王都一体までは伝達可能であることを実証済み。



★次回予告★

 どうも、エヴァルトです。

 あっという間に10話。でもまだ始まってから丸1日経ってないんだよね。

 次はなんと、ゼロスキルだと思っていた僕にとてつもないスキルが発現!!

 次回、あにコロ『episode11 隠れた才』

 ちょっとだけでも読んでみて!

―――――――――――――――――――――――――

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