緑の節・アヤカシの森
蜘蛛の巣によって身動きが取れないエルフェミスにダイオウグモがじわりじわりと迫って来た。
(ああ……、こんな事になるならフレンの挑発に乗るんじゃなかったわ……。いえ……、そんな事は考えないでおきましょう……。)
エルフェミスはフレンの挑発に乗ってしまった事を後悔するも、考えない事にした。
エルフェミスとダイオウグモとの距離が徐々に縮まりつつあった次の瞬間……
「へへっ……、いい様だな、四つ葉の姐ちゃん!」
ヴェーメに乗ったフレンが戻って来た。
「!……そうね……。あなたからすれば……。」
エルフェミスはフレンにみっともない様を見られてしまい動揺した。
「行くぜ、ムサシ!奥義、『疾風斬り』!!」
フレンの掛け声と共に、彼の乗っているヴェーメの両翼の刃が七色に輝き始めた。
そして、七色の刃がダイオウグモを捉え、真っ二つに切り裂き、ダイオウグモは絶命した。
「!……フレン……!?……ま、有難う……、でいいかしら?」
因縁の相手が自分を助けるという意外な行動にエルフェミスは安堵しつつも戸惑いながら礼を述べた。
「礼なら俺のダチに言いな!俺のダチがあんたにくたばって貰っちゃ困るからそうしたまでだからな!あばよ!」
フレンはヴェーメと共に森の向こうに飛び去った。
(……取り敢えず一難は去ったけど……、ヴェーメが壊れてしまったわね……。)
エルフェミスは原型を留めぬ程に大破した自分のヴェーメを見て落胆した。
(ここは本拠に救助信号を送りましょう……。)
エルフェミスは四つ葉の紋章で自分の本拠に救助信号を送ろうとするも、紋章は何も反応しなかった。
(!……信号が送れない……。……という事は……、ここがアヤカシの森だけあってBE濃度が高いからという事かしら……?)
エルフェミスは救助信号が送れない原因がBE濃度の高さによる物と踏み、絶望した。
しかし、その絶望に拍車をかける事が起きた。
何と、鼠程の大きさの蟻の群れがエルフェミスに迫って来た。
(!!……今度は『ネズミアリ』の群れ……、これがアヤカシの森の真の脅威……。)
ネズミアリの群れにエルフェミスは大いに戦慄した。
(……まさかわたし……、ここで終わりなの……!?……ならば……、エルフッド……、わたしに代わって……、どうか騎士団を……!!……)
エルフェミスはこのままネズミアリの群れに襲われてしまうのかと思った瞬間、森の奥から緑色の光が速いスピードでネズミアリの群れを越えながらエルフェミスに向かって来た。
「姉上!」
「!!……その声は……、エルフッド!」
エルフの男性、エルフッドは『エアロボード』に乗って姉の元に駆け付け、彼女を救助した。
「エルフッド、あなたがどうしてここに?」
「詳しい話は後です。今はしっかり僕におつかまり下さい。」
「ええ……。」
エルフッドは姉を連れてアヤカシの森を脱出し、四つ葉の騎士団本拠に帰還した。
ネズミアリ……蟻型アヤカシで、蟻の中では巨大だが、鼠程度の大きさからそう呼ばれる。習性は一般の蟻とほぼ同じだが、食糧庫を荒らされるとそこの全ての食料がBEを帯びて食せなくなってしまうだけでなく、農作物を荒らす挙げ句人まで襲う為、各ガルドの国境なき騎士団より駆除の対象となっている。
エアロボード……ヴェーメと並ぶデクード製の移動用ELビークル。風属性。デクードの板の底に四つの風属性EL結晶が埋め込んであり、ホバー能力を持つ。ヴェーメと違い飛行能力は無いが、小型かつ手動故にコストが安く、エアロボードを使用した競技が存在するのも魅力。