黄の節・森の中のドッグファイト
ヴェーメで森の中に入った二人は樹木や枝をかいくぐりながら先へ先へと進んで行った。
二人のヴェーメの操縦技術はほぼ伯仲していると言っていいだろうが……
「流石四つ葉の姐ちゃんだな……。だが……、真のヴェーメの扱い方を見せてやるぜ!ELウェポン、『エアロブレード』!!」
フレンの掛け声と共に、彼の騎乗するヴェーメの両翼から緑色の刃が展開された。
フレンのヴェーメがエルフェミスのヴェーメをつけはなすと同時に脇の樹木を切り倒し、切り倒された樹木がエルフェミスのヴェーメに襲い掛かった。
(!!)
エルフェミスはヴェーメを上昇させる形で辛うじて回避した。
「フレン!卑怯にも程があるわ!」
フレンが仕掛けた妨害にエルフェミスは憤慨した。
「卑怯!?そんなもん弱者の戯言に過ぎねえんだよ!俺のやり方を卑怯とそしんなら、その卑怯とするやり方に打ち勝てばいいだろ!ま、その頃には卑怯もへったくれもなくなってるがな!つまり、『卑怯』なんて言葉は最初から存在しやしないって事さ!それに、俺はあくまで『上空へ出たら反則負け』と言ったが、それ以外の事は言ってねえぜ!俺の言葉を鵜呑みにした姐ちゃんがいけねえんだよ!この期に及んで人のせいにするたぁ、AUの風上にもおけねえな!四つ葉の姐ちゃんよぉ!」
「!……正々堂々と勝負しないあなたに言われる筋合いはないわ!」
フレンの主張とエルフェミスの主張がぶつかり合った。
エルフェミスのヴェーメは絶えず倒れて来る樹木をかいくぐるも、別の樹木に衝突してしまった。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
エルフェミスはヴェーメから投げ出され、巨大な蜘蛛の巣に巻き付かれてしまった。
「ああ……、死ぬかと思ったわ……。!……何これ……。」
エルフェミスは蜘蛛の巣に巻き付かれて身動きが取れなくなった。
更に悪い事に一体の巨大な漆黒の蜘蛛が彼女に迫って来た。
(!!……『ダイオウグモ』……!……という事はここはまさか……、『アヤカシの森』って事……!?)
エルフェミスはダイオウグモの存在から自分がアヤカシの森にいる事がわかった。
アヤカシの森……グルンガルドの森林地帯の一つで、アヤカシ達が多く生息するだけあって、BE濃度が高く、他の森に比べて禍々しい雰囲気だ。その為、管轄である四つ葉の騎士団から立ち入りが規制されている。
ダイオウグモ……蜘蛛型アヤカシで自分が張った粘着性の強い糸で侵入者を捕らえては喰らう。その為、各ガルドの国境なき騎士団では駆除の対象となっている。