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放逐女性達の旅人日記  作者: 霜月 睦月
第一章 ドノン共和国ー上・仮面舞踏会編ー
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ドノン共和国 仮面舞踏会編1

 ドノン共和国、首都サヴィニャックにある薔薇の館の大広間。

 そこに私はピアニスト兼参加者としてこの大広間で行われている仮面舞踏会にいた。普段は動きやすい服装、どちらかといえば男性がするような格好、が多いのだが今日はドレスである。

 足元がスースーして落ち着かないが、まあ舞踏会中は我慢である。ピアニストとしての仕事を終えたら、食事を楽しみながらもう一つの仕事を終わらして海を楽しみたいところである。

 …いや、もう一つの仕事の方は、このサヴィニャックにいる間は掛かりそうだけれども、それでも、それでもある。


「お疲れ様、ヴィ…じゃないや、リーズ」

「うん、お疲れ様、ジョゼ。…気を抜くと、名前バレて大騒ぎになりそうだ」

「そうなんだよねぇ。こういう時、帝国側からさっさと大陸抜けるべきだったかな、って思うよ」

「そうもいかないだろう。なんだかんだ言って帝国側にも私達がそういう事になったのは行っているだろうし」

「そうかあ。偽名になれておかない、とかあ」

「そうだよ。名前は知れてるけど、顔は知られてないだろうからね。いや、偉い人たちは知ってるだろうけれど」

「そういうものかあ」

「そういうものです。僕もわかりませんでしたしね」


 そう、今、私達は偽名でこの場所にいる。いや、仮面舞踏会だからっていうのもあるんだけれど、この大陸では名前はそれなりに知られているわけで。そうなるとこの大陸から出るのにも一苦労であるので、とても良い偽名を…考えてもらった。私達にはそういう名前をぱっと思いつく能力はなかったのである。

 そして、偽名をつけてもらった人から、お仕事を頂いているのである。今、そのお仕事を一緒にやってもらってる人と一緒に仮面舞踏会に参加している。

どうしてこうなったのか、というと、話は数時間前に戻る。


フォートリエ王国を出て、三日後。私達海を見よう、という理由でドノン共和国へと向かっていた。ドノン共和国からクライスヴェイク大陸へ行くつもりである。ここで偽名も考えてはいたのだが、多分すぐバレそうなので入れないかも、なんていう不安もあった。

そんなことを思いながら、ドノン共和国の入国門へと近づいたときに人影が見えた。少しだけスピードを落とす。


「ストップ。メロディおばさま、っぽい人が門前にいる」

「メロディって言うと…。君の親戚で、現元首のルイーズ・ベケ?」

「そうそう。まあ、連絡行ってるよね。どうする?拒否される可能性もあるだろうし回って帝国側にいくっていう手も有りだけど」

「…いやなんか、向こうもこっちこい、と手招きしているような」

「あ。本当だ。…気がついたかな。運転手はヴィヴィなのに。あったことあったっけ?」

「昔、一回だけお城で。…とりあえず行ってみよう」


そう言って、スピードを落としたまま門の前まで行き、ベケ元首の前で停まる。


「ようこそ、ドノン共和国へ。まずは歓迎いたしますわ」

「ありがとう、ございます。連絡入っておられると思いましたので、拒否られるかと」

「いえいえ、確かに連絡はございましたが、それはそれ、これはこれですわ。うちの役人として登用しなければいいだけですし、後は偽名で入っていただければ、別人と誤魔化せますし」

「あー。確かに……」

「それに、姪っ子の顔もゆっくりみたいですし。ねえ、ルネ」

「あはははー…お久しぶりです、伯母様」

「聞きましたよ。不倫から駆け落ちですってね?」

「駆け落ち…駆け落ちなのかなあ…。駆け落ちって言うにはなんかこうロマンがない気がするんだけれども…」

「罪持ちになったわけだからね」

「そんなことは関係ありません。愛する人と一緒にいれば、それはもう十分にロマンティック。そうじゃありません?」

「それは、そう、かな?」

「ですかね」

「そっかー。…いやでもおかしくない?そんな話をするためにわざわざこんな所に?首都からも大分かかるじゃん」

「ふふ、そうですね。首都では話せないことがあるので、こちらまで。詳しい話は、こちらで取ってあるホテル内で話しません事?貴方達もなれない旅で疲れたでしょうし」

「……ありがたいお話です。私はルネさえよければ」

「首都で話せないってことはどうせ内政の話で、さらに禄な話じゃないんでしょ。あんま、頭を突っ込んで内政干渉とか言われたくないんだけど」

「ふふ、貴方達は国を追われた身。干渉したところで、何処かの国が非難されるいわれはありませんわね」

「あー、もうわかったよ。その代わり、ちゃんとお金は頂くからね」

「わかっておりますわ。それでは、入国、いたしましょうか」


私が少し狭いサイドカーに移り、運転手はルネ。その後ろにベケ元首が乗るという形になり、門の中へと向かっていく。

そのときにまた一悶着あったのは、また別の話。

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