ストローボス大陸 道中での出来事 4
「わんっ、わんっ!」
「あー…」
お風呂から上がり再び合流すると、そこにはビーチェが子犬とじゃれている、というかなんか子犬に襲われているというシーンを見ることになった。いやこれはこれで眼福ではあるが。
「ふふっ、くすぐったいよわんこ」
「わんっ」
「ふふふっ」
「これこれ、そろそろ飼い主達が帰ってきたぞー?」
ビーチェと子犬がじゃれているところに、ロマーナまで参戦してく。なんだろう、ただただイチャイチャしたいだけな気もする。まあ、それはそれでいいんだけれどさ。なんというか、その。ロマーナは少し歳を…いや、よそう。ここまでならセーフかもしれないけれどここを超えたら私だったものが其のへんに広がりそうだ。
「そうじゃぞ。ちゃんと留まれるお前でよかったの」
「あー、はい。そうですねすみません」
「??????ろまーな?」
「いやいや、ビーチェにはあまり関係ないことじゃし、あんま聞かせていい話ではないのじゃろう」
「そう?」
「そうじゃ」
私に向けた怖い顔を一瞬でやめ、ビーチェに笑顔でそういったロマーナ。いやはや、子犬もなんだなんだ、みたいな顔してたけれど、なんかこう、あまりとんでもないことは言えないし思えないな。私の命がいくつあっても足りない。
「ほんと、ヴィヴィって怖いもの知らずだよね」
「そうかもしれない。まあ、軍人上がりだったからな。恐怖はどこか捨ててきたのかもしれん」
「昔からそうだよね。帰ってくるのをただただ待つ身にもなってほしいもの」
「それはー…、まあ、うん。すまない」
「ちゃんと無事に帰ってきてくれるからいいんだけど…。たまにはそういうのなしにしてほしいなーって」
「ロマーナがいるからもうだ」
そこまでいって、ルネの手で私の口が塞がれた。真剣な目で、私をじ、と見つめた。
これは、そういうことだろう。そしてそういうことを言わないと、多分許してはもらえない、のだろう。私達にはあまり必要がない、とは思ってはいたけれど、そう思っていたのは私だけだったのかもしれない。
優しく私の口を塞いでいるルネの手を、私の手で外して。
「…わかった、努力、する」
「努力だけー?」
「…………未来のことはまだ、わからないからな。こんな状況だし」
「…それも、そうかあ。まあ、うん。でも、……悪くはないかな」
「よかった。悪いと言われたら色々と考えないといけなかった」
「でしょー?」
にへ、と笑ったルネの頭をなでて。それから、ほっぺにキスをした。まあ、ロマーナとビーチェと子犬がなにかニヤニヤしながらこっち見ていている気がしたからこれが限界だったというのもあるのだけれども。




