表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放逐女性達の旅人日記  作者: 霜月 睦月
第6章 ストローボス大陸 道中での出来事編
60/64

ストローボス大陸 道中での出来事 3

「わんっ!」

「そうか、そうかー」

「ずるいぞ!儂にも抱っこさせてくりゃれ!」


私とロマーナが犬の抱っこの取り合いをするというなかなかにレアな状況を見つめているルネとビーチェ。

いやほら、ちゃんと説明しないといけないから、という理由で二人に見せているわけだが。なんだろうな、血塗れの二人が子犬を取り合うとかいうシュールな場面を見せられてる二人の心境はなんかこう読めるのだ。私達は何を見せられているの、という。

わかる、多分私もそっち側だったらそういう心境になるとは思う。だが、まあちょっとはまってほしい。


「あれだ。私達は旅人だろう?」

「そうだね?」

「うん」

「旅人はこころが荒む、と私とルネは聞かされていただろう?」

「そうだね。よく聞かされてたね。コロシアイなんかもあった、って聞いてたけれど、まあ、私達はうまくやれてる方なんじゃないかな?」

「そう、じゃな。儂たちの相性はピッタリじゃ。だが、いつまでもそうとは限らんじゃろう?」

「それはそう、なの?」

「ありえない話ではないね」


ルネもビーチェも血の匂いには慣れてきたのか、私達の匂いと格好にツッコミを入れない。いや、入れるとしてどこから入れるべきか、となっているのかもしれない。まあ、私達はこれが少し終わったらお風呂入るわけだが。その間にルネとビーチェが子犬に慣れてくれればいいし。

というか子犬がほんと私達の匂いにそこまで気にしないのはなんなのだ、慣れっこなのか。いや、それならそれでいいわけだが。…いやよろしくはない。何だこんな子をそんな状況にしおって。


「ヴィヴィ、顔。顔」

「あ、すまん。いかんな、色々と考えてしまう」

「まあ、そうだよね。ヴィヴィ、昔から犬とか見るとそうなるよね。当時は飼えずにがっかりしていたけれども」

「うむ。いつ何があってもおかしくない職業だったからな。…、まあそれはいまも、なんだが」

「そのへんは大丈夫じゃろ。儂がおるし」

「そう。ろまーながいればだいじょうぶ」

「うむうむ、ビーチェはいいこじゃな」

「なで、ないで。なでるならおふろいって」

「はい…」


ビーチェにいやいや、とされてちょっと凹んだロマーナ。まあ、たしかに血塗れの人に頭を撫でられたくないよなあ、と。乾いてきたとはいえ、まだ真っ赤なわけだし。どす黒くなる前にお風呂に入らなければ。

温泉だからいつはいってもあれだしな。あったかあったかである。

それに、覗きなどのあれもなさそうだし、と私達が立ち上がる。子犬もついてきそうな顔をしていたが。


「まあ、ちょっと待っていてくれ。私達、きれいになってくるからな」

「その言い方だと、なにかこう勘違いされない?」

「そうか?」

「…いやまあ、儂達今、そんなきれいではないからの」

「………」


なんとも言えない顔をした二人を背に、私達は温泉へと向かったのである


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ