ストローボス大陸 道中での出来事 2
「へっへっへっへっへっへっ」
「なあ、ロマーナ。後ろのワンちゃん、めっちゃくちゃ尻尾振ってないか?」
「振っておるな…。こうなんかますます振り切れないし、ここにおいていけなくなってしもうた」
「振り向くなよ…振り向いたら終わりだ…」
ということでそれなりに歩いているはずなんだけれども、ついてくる野犬。いや、野犬にしてはやけに人懐っこいのだけれども。もしかして元飼い犬か?捨てたやつを見つけ次第やるつもりではいるが、そうだとしたら尚更私達についてこられるのは困る。
「走ってもきっとワンちゃんはついてくるだろうし、なあ」
「遊んでもらえてる、とおもってついてくるじゃろうなあ」
「……心が、いたい」
「わしもじゃ」
山賊を退治した時より全然ダメージが有る。やはり動物は可愛い。そして、可愛いのがおってくるのを振り切ろうとするのは、とてもダメージが出る。
こうな、心が。心が痛い。とても、とても痛い。
……思わず止まって振り返ってしまった。振り返ったことで、犬も止まる。そして上目遣いで私達を見るのだ。
「わんっ!」
「うっ」
「うっ」
私達は可愛さに心をやられた。わかるな?旅を続けていると少しずつだが、荒んでくるときがある。現に少しだけ荒んでいたのは認めよう。それを山賊にぶつけたことも、認めようじゃないか。そんな中な、犬がこういう風についてきて、可愛さを振りまいてくるのだ。
私達が耐えられるだろうか。いや、耐えられるはずがない。
「……のう、ヴィヴィ」
「わかってる。振り向いてしまったのだ、つまり私達はここで見捨てれば、こいつと、こいつの親をすてたクソどもと同じ位置に立ってしまうことになってしまう。それだけは私のプライドが許さん」
「儂もじゃ。……いや、血塗れの儂らを見て逃げないのじゃから、それなりに凶暴なのでは????」
「それだったら襲ってくるはずだろ。こんなしっぽをふって「遊んで遊んで」みたいな顔をするはずが、ない」
「それも、そうじゃな………。そうじゃな……」
いや、たしかに不思議では在るのだ。それなりにむせそうな血の匂いでも何かこう、私達を避けないのである。だから、きっと普通の犬ではない、のかもしれない。だからこそ、捨てられたのだろうし。まあ、だからといって、捨てた奴らを養護するつもりなんてさらっさらないが。飼い始めたなら最後まで面倒見ろ、と思う。
まあ、それはそれとして、だ。どう、説得するか。私達の心はそう、なっていた。




