ヘンリクセン王国 宝石の行方編11
「さて、今回のオークションは終わりじゃ。儂らの仕事も8割終わりじゃな」
「お疲れ様ー!どうする?飲んじゃう??飲んじゃう???」
「外で飲むのはこわいな。ホテルにしよう」
「いいこと、です」
そういう事で打ち上げはホテルになりました。そうそう、貴金属以外の荷物は、ライル社にまかせてそのまま商人に送っていたが貴金属はトラックの荷台に傷付かないように入れてある。だからまあ、襲われたらまずかったけれども今の所、襲われては居ない。そして、今日そこに幻の宝石が2つ仲間入りしたわけで。これらを商人が来たら荷降ろしして、それで渡すまでが仕事であった。
いやはや、ついてこられてないか、とかついてこられてたらどうまくか、なんて考えてたけれども、その辺はライル社も分かっていて、私達以外に護衛の人がついてきてくれていた。ただ、余りにも多いのでそれはそれで「この人達は貴金属を運んでますよ」感があって襲われるんでは、とは思った。
まあ、決してそんなことはなく、安全に私達が泊まっているホテルまで安全に運べたので良かった。ホテルの駐車場で、ルネの魔術で少しだけカモフラージュと、ロマーナの魔術で防御を張ったから駐車場で盗まれることはない、とは思いたい。解除されたらロマーナが飛んでいくことになってるし、まあ、大丈夫でしょう。きっと翌日のニュースになることはまずない。
ということでホテルで。私とルネはワインを、ロマーナはビアーを、ビーチェはアイスが乗ったジュースを飲んでいる。完全に気を抜いている。ここで襲われたらちょっとやばいどころの話ではないが、大抵そういうのは杞憂で終わるのだ。
「いやあ、何事もなかったのじゃなあ…」
「なんだか、あったほうが良かったみたいな口ぶりだね」
「なんかこう、暴れたりなさはあるのじゃよ。いや、平和なら平和でいいのじゃが…、うーん、儂は、そういうところにいるほうが長かったからの」
「職業病か?」
「かもしれん。まあ、でも、こういう時間は大切にしないといけないの」
「そう。とてもたいせつ。すぐなくなるかもしれないから、とてもとてもたいせつ」
「………そうじゃなあ、ビーチェが言うならそうなのじゃろう」
そう言って、ビーチェの頭を撫でるロマーナ。そうなんだよなあ、きっとビーチェは家族とこんな時間を過ごしていたらさらわれた、んだろうなあ。急に重い話を簡単に投げてくるから、油断はできない。いや、油断していたわけじゃないのだけれども。なんかいたたまれなくなる。
とりあえず、おつまみのピーナッツを口に運び、もぐもぐさせているルネに。
「ピーナッツ、追加するか?」
「んぅー…。どうしよう。この時間のピーナッツは程々にしておいたほうがいいかも…。ううーん、でも…止まらないし…」
「いいんだ、お金ならまだある」
「…じゃあ、ちょっとだけ追加しようかな。電話ー、電話ー」
お金はここ最近受けた依頼分で足りてはいるし、いざとなったらルネの実家に頼めばいいや、みたいな事は考えてはいる。いや、頼んだらなにかとんでもない厄介事を持ってこられそうだから、それはほんと最後の手段ではあるのだけれども。
なんて、思いながら。私達の夜はふけるのである。




