ヘンリクセン王国 宝石の行方編4
「さて、今回行われるオークション、最大の目玉となっております。幻の青い宝石、マルグレット。このオークションを逃すと次に出るのはいつになることやら。皆様挙って参加していただきたい」
そう、ステージ上で司会進行をしていた女性がそういう。マルグレットとは人名でもありそうなところだが、宝石の名前をつける人もいるわけだし、そうつけられた人の方は、まあどんまいとしか言いようがないが。ただ、ここまで高貴な名前っぽいのは今のところあったことがない。いや、名前を聞くことがないからいるかもしれない、が。
ただまあ、幻の宝石を持ってる人は名前にはしないだろうし、そうそうでない名前なんだろうなって思うよ。そんな感想が浮かぶのは余りにも私のような庶民にはこういう機会ではない限り、見る機会もこういう風に変える機会もないからだろう。……実はもう一つ、ここに全力というわけには行かないのがなあ。
まあ、商人のお金だから、私達の財布が痛い思いをするわけではないが。
「それでは、200ドンからいきましょう。200ドン、居ませんか?」
「220!」
「240!」
「255!」
「280!」
私達が入りながらも、この時点では割と競り合ってくるグループも多い。まあ、流石に一気に5000とか出すのはルール違反なのはロマーナに言われていたから、やらないけれど。なんか、一気にどん、と出すと自分たちの財布、というか出せるお金の底が相手に見られてしまうらしい。そういうのを見せないために小さく、小さく上にしていくらしい。
なんでそんな事を知っているんだ、とロマーナに聞いた所、昔齧ったからね、と言われた。齧った、というからにはそれなりに手を出してそれなりに痛い目を見たり美味しい思いをしてきたのかもしれない。私はまあ、今回やった分だけで当分良いが。
体を使っていた方が私にあってるということがわかった事が、今回参加して一番の収穫かもしれない。見るのは好きなんだけれど、そういう金銭を使う戦略を考えるのはあまり得意ではない、ってことだね。後、多分見る目もない。うーんやはり私は最弱なのではないだろうか。
………ほんと、才能、というか、私の血筋だけで王宮魔術師になったんだなあ、反省することばっかりである。そして、それはまた自分が成長することに必要だったのであろう。だから、追放されたのはありがたいことである。
「290!」
「330!」
「380!」
「……………470!」
相手の1グループが少し考えて、数字を上げた。ここは勝機と見たのかそれとも一瞬降りる事を考えたのか、それはわからないけれども。
それでも降りない、という価値があのマルグレットという宝石にはあるのだろう。
「500!」
「525!」
「…………!」
私達が525ドンを上げた所で一つのグループの声が上がらなくなる。流石に上がりすぎたと見るべき7日、それとも何かまた考えがあるのか。
まだ、もう少しだけこのオークションの値上げ競争は続く、と見るべきだろう。




