船の上 合間の話編4
タバコを吸い終わり、とりあえず紅茶の入ったコップを受け取る。保温機能付き水筒に入っていただけあってまだ温かい。甲板の上は少し肌寒いので、とてもこの暖かさは嬉しい。
なんだろうね、肌寒い中で立ち話をしている私達はなにか、とても暇人なんだろうな、とは思う。それでも、こんなゆっくりできたのは大分久しぶりだと思う。なにせここ二ヶ月、色々とあったので、こんな時間がとても嬉しい。
「どう、紅茶。美味しく入れられてた?」
「うん。ミルクティーかな?」
「そうだね。ビーチェが飲みたいっていうから」
「みるく、あたたかい。わたし、すき」
「そうか。ビーチェは牛乳好きかの?」
「うん。すき」
ロマーナに力強く頭を撫でられながらそういったビーチェ。うん、こう見るとビーチェは年相応、より少しだけ幼く見える。でも十代はそんなに変わらないのかもしれない。20代ぐらいからは外見年齢と実年齢が割と離れることが多い、のだが。まあ、ヒューマンはそこまで離れたりはしないが、エルフとか悪魔みたいな人達は外見年齢20代に見えても百歳超えてます、なんてのはざらなので、外見年齢と実年齢が離れていてもそんなに驚かないんだけれども。
まあ、なんだろうね。私達はそんな世界に生きているのだ。そりゃ、そんなことだってよくあるよ。
「そろそろやめて。だんなさまのうでもつかれるし、わたしのあたまもゆれる」
「おお、そうか。揺れるか」
「ゆれる」
「………そんなに力入れてる様子ないのにね?」
「まあ、それはやられてみないとわからないんだろう」
「やってもいいのじゃ?」
「お断りします」
「しょんぼりなのじゃ」
本当に、しょんぼりとするロマーナ。いや、ほんと好みなんだろうなあ、とは思ってはいるが、ルネは私のお嫁さんなので、ということをアピールするためにルネの肩を私に寄せる。なんか、こうロマーナとビーチェから見せつけか、みたいな視線を受けたので。
「うん、見せつけ」
「?????」
「「ぐぬぬ」」
ルネは私の言葉に首を傾げたが、ロマーナとビーチェはなんかわかったのか、ぐぬぬ顔をしている。いやほら、こうやっておけばまだ手だされないのだ。…いや、なんかロマーナと二人っきりになった時こわいけれど。
大丈夫だよね?!私、闇に紛れて暗殺とかされたりしないよね?!
「…………だんな、さま」
「ん?」
「おねえちゃん、をかなしませたらだめ」
「ハッハッハ、大丈夫じゃよ。やらない、やらない」
そう言ってまたビーチェの頭を撫でるロマーナ。いや、読まれてるじゃないですか。完全に読まれてるじゃないですか。
……なんて、ネタにしているうちはやらない、って言うことは知っているので、ない。大丈夫、だよ。




