序章 2
まあ、それをやらないのは、多分私がルネにとって大事な存在だ、とわかっているからだろう。だからこそ流刑は彼にとってとても都合のいいものだったはずなのだが、どうしてこうなったかは、陛下だけが知ることだろう。やはり陛下はお優しい方である。
…私が、ポケットから魔力を回復するためのタバコを口にくわえて、携帯灰皿を取り出す。火を点けるために為にマッチを探していると。ルネが無詠唱で指の第一関節ほどの炎を差し出してきて、私はそれにタバコの先を近づけ、火を付ける。
「相変わらずの無詠唱。優秀だね」
「それぐらい、ヴィヴィだって出来るでしょう?…さて、まずはどこへ行こう。ヴィヴィ。私はヴィヴィと一緒ならどこでもいいよ」
「そんな気楽な旅じゃないんだけどな。私達は罪人なんだから」
「外へ出ちゃえばそんなの関係ないじゃない」
「…まあ、たしかにそうなんだが。そうだな、海。海でも見に行こうか」
「海!いいわね!共和国周りで、この世界一周しましょう。さあ、早速出発しましょ。旅に出るための簡単な準備と足はもう準備してあるわ」
「準備のよろしいことで。…じゃあ、この国での最後のタバコを吸い終わったら出よう。あんま長居もよろしくないからね」
「はぁい♪」
くるり、と回りながら私の横に並んだルネ。紫煙をそちらに向けぬようタバコの先をルネが立つ反対方向へと向けて、私はタバコを吸い続けていた。
あんまり美味しいとは思わないけれども、起きたてはどうしても魔力不足に陥るから、仕方がない所はある。できれば珈琲とか紅茶で取れればいいな、と思うし取ってる人間もいる。ルネは珈琲側だし。ただ、私はあいにくとタバコと相性が良くて、18歳を超えてからはずっとタバコである。
ただ、考え事をするには割と役に立つ気はする。気がするだけだし、本当に役になっているかはわからないけれど。少なくとも、魔力は回復してはいるし、吸ってないときより吸ってるほうが集中力はある気がする。本当でしかないけれど。
なんて考えながら吸っていたら、あっという間に吸い終わる。できればこの国で吸う最後のタバコはベッドの上が良かったけれど、それ以上に大切なものができてしまったし、それのために生きると決めたのだからもういいのだけれど。過去にこだわったところで、私は変わらない。
「さて、吸い終わったしいこうか。まずは、海を見に」
「はい。ヴィヴィと一緒なら何処へでも」
「私も、ルネと一緒なら何処へでも」
「「行ける」ね」よ」
そう言って二人で笑い合って、足がある場所へと向かうのである。