マカーリオ帝国 運び人編10
さて、目的地の操舵室。やはり緊張はある。私は片手をホルスターに、片手を操舵室の取っ手にかけ、ドアを開ける。と、同時に銃をホルスターから外し、安全装置に手をかけたまま、いるだろう人影に銃を向ける。
まあ、銃口を向けた時点で殺されても仕方がないのだけれども、今の所その様子はない。つまりは、罠ではなかったということだろうか。………いや、そんなんより私はタックルを受けて思いっきり外の壁に頭をぶつけたんだが。
「ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィ………」
「おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん…」
目がチカチカする。いや、まあそら頭を強く打ったら、目がチカチカするよなあ。大丈夫か私。これ脳震盪起こしてない?そこまでいってない????緊張は急に無くなって、銃も落としてしまったけれども。力が抜ける。
「愛されてるなあ、姐さん」
「一人はつい最近まであったこともないんだけどね」
「ふはは、人との付き合いなんてそんなもんだ。何年も一緒にいた奴だって、何考えてるかわかんないなんてよくあることだろう?」
「そんなもん、かね」
私は抱きつかれ、壁に体を打ちつけながら、近づいてきた人影と話していた。なんかこうすーはーすーはー聞こえているけどたった数時間離れただけだろうに。すーはーすーはーされてる私の身にもなってほしい。というか、よくすーはーすーはーされてる私と話せてるな人影さん。助けようと言う気持ちはなさそうだ。がっかり。
さて、人影は茶髪の長髪で片目に眼帯をしている、私達より少し若いかな、と思う女性。美人だと思う。がたいはよろしいので多分軍人さん・・・だと思うけれど聞いてみないとわからない。多分私、銃口向けてたし下手したら死んでた。タックルされてなければ死んでた。
「ほれほれ、嬢ちゃん達。お姉さんが困っているだろう?」
「むぅ………」
「はなれたら、おねえさんとおねえさん、ころしあい、しそう」
「しないしない。確かに、儂に銃口向けるまでの動きを見ていると腕試ししてみたい所はあるが?」
「断る。多分、瞬殺されて終わりだよ」
「あっはっは、その決断力はさすがだよ」
瞬殺されて終わりだ、って言った後から更に力強く抱きしめられてる上にスーハースーハーされてはいるけれど。いや実際戦ったらだからね?私断ったからね?
……………さて。
「お姉さん、でいいのかな?うちの連れが迷惑かけたし、助けてもらって助かった。礼を言わせて」
「いや、礼とかはよい。儂はまあ、どちらかといえばお嬢さん方に害を与える方だったんだけどの。…そこで転がってる肉塊とは長い付き合いだったし儂もあいつから商品を買っていたからのぉ。正直今回の依頼も商品が依頼料でな。受け取りに行ったら先客がいるという話じゃないか」
「………それで?」
「先客を殺して奪ってくれ、ということだったんじゃろうが、儂は人のものに手を付けるのは…まあ、たまーにあるか。だが、本当にたまーに。今回は、先客が好みだったからの」
「なんだまたライバルか」
「になりえた、ってだけじゃ。そんなすーはーすーはーされているのを見たら奪おうとも思わんよ」
カッカッカ、と笑う眼帯の女性。…この言葉にきっと嘘はない。助かった、と改めて安堵をする。ただまあ、この流れはあれだ。また一人、旅の仲間が増えそうな流れだ。強い護衛がはいった、とおもえばいいのだけれども。
私だけではどうしても守れない時が来るだろうからね。なら、強い護衛は多いほうが良い。
「名前は?」
「そーじゃなあ、仲間だったものたちにはロマーナとよばせておった。だから、ロマーナ、じゃ」
「ロマーナ。…………まあ、いまはそれで、いいか」
「そうじゃろ、そうじゃろ?」
に、と笑って片手を出すロマーナ。ほら、やはりそうなった、なんて思いながら私は出された片手をとって立とうとして、バランスを崩した。まあ、そりゃそうだよね。二人に抱きしめられてるからね、仕方ないね。




