マカーリオ帝国 運び人編7
「わたしの、やりたいこと…」
やはり、ルネの顔をじぃ、と見つめたまま、何かを考えている”商品”。その後、タバコを吸っている私の顔を見て、そしてまたルネの顔を見る。
「わ、わたしは、やさしい、るねおねえさんとこわいゔぃゔぃおねえさんと…」
「うん」
「いっしょに、いれれば、それで…」
それを聞いて笑顔になるルネ。まあ、こわいお姉さんはどういった顔すればいいかわからないのだけれども。いやでも、たった数日、されど数日といった所か。ここまで”商品”に好かれるとは思いもしなかった。嫌われるより全然良いことだからいいのだけれども。
さて、これで本当にここでの選択が大事になってくる。このまま西へ行くのが良いのか、それともここで帝国をでてオーデンバリ王国へ行くのが良いのか。オーデンバリ王国からハンマーシュトレーム王国へと回っていこうか、なんて考えてはいるがそれはここを上手く抜けてから、の話である。
2つとも温泉がとても有名な王国なので、フレスコバルディのリベンジも出来るわけだし、ここを上手く抜けたいところであった。
そんなこんなで私は商人に連絡を取る。
「お疲れさまです。今、ザンブロッタにいるわけですが、向こうもしっかり把握していますよね」
「そうですね。彼らは貴方達がここから外へ出るだろうと予想してる、と確かな筋の情報源から聞いております」
「もしかしてそちらに私達の情報売ってたりしません?」
「ハッハッハッハ、そんなことをするような人がフレスコバルディの事件をごまかしたりしますか?」
「そうですね。でも、それはそれ、これはこれ、みたいな?」
「ヴィヴィ殿はそうするのですかな?」
「…お金によっては?生きるためですから」
「中々に悪いお方だ」
苦笑いが聞こえる。まあ、たしかに私の考えは悪い考え方。でも、あまりキレイ事ばかりではこの世の中生きていけない、っていうことだと思う。ただ売ってたとしても、それは本人たちには伝えないけれどね。だから、商人も伝えないと思うし、聞いたところで答えるはずもなかった。それでもきちんと売っていない、と答える商人なら私達の情報は売っていないのだろう。多分、そうだといいな、ぐらいの考えだけれども。
「……まあ、私があなた方の情報を売った、とか売らない、とかいう話は置いておくとしまして。”商品”の国外への持ち出し、その後の”処分”の方はうまくいきそうですかな?」
「そうですね。…その”処分”って私達に一任されてるんですよね?」
「そうです。私達は国外へ持ち出されればそれで。それ以降は私達は一切関わりません」
「…なるほど。お金も払わなくていいですね?」
「もちろん。……なるほど、ペケ家が推薦するわけだ。そう簡単な道を選ばない」
「褒めてますそれ?」
「褒めておりますよ」
互いに、なんだか可笑しくなって笑いあった。そして、その後、連絡機を先にきり、私はルネと”商品”に向き合う。
「・・・いつまでも”商品”じゃ呼びにくいな。名前、どうするか」
「なまえ?」
「そう、名前。…好きな花、とかある?」
「すきな、もの…」
また、考え込んだ”商品”を私達は答えが来るまで待っていた。こっちが勝手に決めても良いのだが、どうせなら本人が好きなものを名前につけたい、というのは二人して同じ考えではある。




