マカーリオ帝国 運び人編6
前回、立ち寄ったフレスコバルディから南に5日行った所、レグロッターリエ州の港町、ザンブロッタ。私達はここで帝国を離れるか、それとも帝国の西側へいくか、という問題にぶつかっていた。というのも、どちらにしろ追手もそれをよんでいるだろうから、どちらにしろ血腥い事になりそうなのだ。
なぜなら、東のコッラーディ共和国とマカーリオ帝国の国交はあるが、何かと衝突は絶えず、両国の行き来は難しいと言わざるを得ないのである。そもそも、コッラーディ共和国にはいるためには5カ国ぐらい他の国を渡らないといけないわけで。そうやっとけば、パスポートのはんこのページが埋まるので、そうすると入れるようになるということである。直接行けるのは、それぞれの大臣クラスぐらいなものだ。それもめったに無いけれども。
さて、そんなザンブロッタの依頼人の息がかかってるホテルの一室。そこで私達は額を突き合わせて、次に何処へ行くのか、という話をしていた。
「さて、本当にどうするか。ザンブロッタはそんなに広い港町じゃないから、相手さんにバレるのも時間の問題だぞ」
「フレスコバルディのときは1日半だったからもうばれてるんじゃないの?」
「たぶん、ばれてる」
「となると、早々に決めないとまずいだろうなあ。この部屋に入ってくる、ということはないだろうが」
「わからないよ?窓からばーんって」
「縁起でもないことを言うんじゃない」
実際あるかもしれないから、そういう事言うのは本当によしてほしい。ただ、そういう事があってもちゃんと対応できるようにはしているが。早い時期から王宮魔術師をやっていた事は伊達ではないからな。よくあった、とは言わないが、そういう事は想定できるのではある。
私達の大陸にあった三国はそれなりに仲は良かったとはいえ、一枚岩ではなかったのだ。そういうことだってあるよ。まあ、たいてい三国で捜査されてさっさと犯人見つかって、たいてい極刑にあってるけれど。一族郎党で極刑にあっている人達もよく見てた。なんかこう、そういうの見るとすごい切ない気持ちになっていたのは内緒だ。
「でも、そういうのもかんがえておかないと、いけない。わたしたちはとてもきけんないち、にいるのはたしか」
「そう、それはそうなんだけども。……”商品”」
「なに?」
「もし、もしだ。何もなくて、もしこのままこの帝国を出れたら、なにかしたいこととか考えているのか?」
「このていこくをでれたら…」
「そう、出れたら」
そういったルネをじぃ、と見つめる”商品”。なるほど、そういうことか。いやそれはいけない。私の脳が破壊されてしまう。いや、されるようでされないけれど、わからん。長いこといられたら壊れてしまうかもしれない。
…とはいえ、正直、一人で何処かへ放り出すということもできないのは事実であって。さて、どうしたものかなあ。




