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放逐女性達の旅人日記  作者: 霜月 睦月
第三章 マカーリオ帝国 運び人編
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マカーリオ帝国 運び人編2

「な、で、て」

「はぁい。…でヴィヴィは何嫉妬したような顔してるのよ」

「嫉妬など、しては……。いや、している。私もなでてくれ。むしろ私の方を重点的になでてくれ」

「だ、め、わたし」

「いや、君はいつそこまでルネになれたんだ。どう考えても、まだそんな時期ではないだろう」

「どく、じゃないのくれた。おいしいりょうりくれた、いじめないでくれている。もう、このひとはこわくない。おねえさんはこわい」

「私の何処が」

「はいはい、そこまでそこまで。私はふたりとも撫でれるから、喧嘩しないの」


 私と”商品”を同時になでながらそういったルネ。いやまったくもって不可解である。いや、確かに殴らない、毒の料理をあげないで美味しい料理をくれる、そんなに怒りそうもない、ならなれるだろうが、それでも早くなれすぎではないだろうか。動物だってもう少し警戒をとかないぞ。…いや、もしかしたら、動物は3日でなれるかもしれない。

 ”商品”、彼女は大分長い間、それ、だったこともあり、愛情には飢えているの、だろう。それは理解する。理解はするがだからといってそうたやすく許せるものでもない。それはそれ、これはこれだ。いや、私のほうが大人なのだから、大人の余裕を持て、と言われそうだけれども、そうもいかない。ここで余裕を持って、みたいな動きはきっと逆効果になるだろう。

 …かと言って、そこまで強くは言えない私もいて。これはもう、なでてもらい続けるしかなかった。


「・・・こわい、おねえさん。ばいくのせいびしないの?」

「それは、もうしてある。大丈夫だ。間違いなく君を外に連れて行くまでは、トライクが止まることはないよ」

「むぅ…。やさしいおねえさん」

「なあに?」

「………なんでも、ない」


 多分私になにかいって、二人っきりにしてもらおうと思ったんだろうけれども、ルネの顔を見るとそう行ってしまってはなにか壊れてしまう、と思ったのだろう。何も言わずに、私を見ている”商品”。私も思わず見やる。こう、ばちばち、と火花が散りそうなぐらい。

 それを困ったように、笑いながら見ていることしかできないルネはどういう感想を抱くかは、まあ、私には少しわからない。…いや、困らせるのはいけないから、よそうな、と私から目線を外し、それを了解したように、”商品”も目線を外す。

 と、同時に帝国国内だけで使える通信機に連絡が入った。多分、今回の仕事の依頼主だろう。私はその場を少し離れ、依頼主との連絡に取り掛かる。


「お世話になっております、私、です」

「こちらこそ。商人殿。なにか動きがありましたか?」

「ああ。”商品”のもともとの持ち主が雇った一団が森の中へ入っていきましてな。そろそろ移動なさっては、と」

「これはありがたい。まあ、トラップなんかも張っているので数日は見つかりませんでしょうが、そろそろ、お風呂なんかも恋しいですしこの森を離れますかね」

「それがよろしいかと。とはいえ、今は夜ですからな。向こうも動けんでしょう」

「そうですね。早朝、動き出すとします。商人殿も、あまり無茶をせぬよう」


 そう言って、通信機でのやり取りを終える私。…盗聴とか絶対されてるだろうけれど、それでも追いつかれない自信はある。トラップを回避するのにも時間はかかるだろうし、回避せず行くようなら更に時間はかかるようになっている。まあ、まだ命を取るようなものではないから、そんなの関係ない、ってこられたらあれだけど。


「…明日から忙しくなりそう?」

「そうだね。…帝国を抜けてからなら、向こうの命を取るような行動しても大丈夫だろうし、それまでの我慢」

「………わたし、のいのち…」

「………きちんと守るからね」


 ぎゅー、と”商品”を抱きしめるルネ。いや、いいんだけどさあ。

 なんだろう、どうにもどうにももやもやは、とれないのであった。

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