マカーリオ大陸 運び人編1
現在私達は、マカーリオ帝国内の森の中にいる。もちろん、仕事でだ。
「……………」
「はい、食べていいよ」
「………………」
ルネがそう言うと、受け取った携帯食料を食べる女性。やせ細った体に可愛らしい顔ながらも何処か全てを憎むような目つき、この女性はかつて奴隷として売られていたらしい。それならこの態度も納得はする。現にここ2日ぐらいは何度か逃げられてはいるし。ただ、体力はないのか、すぐ見つかって助かってはいる。
とりあえず餌付けみたいな形で携帯食料を与え、なんとか警戒心をといてもらいたいが、数年ものだろうからそう簡単に行くとは思ってはいない。ただ、ここ半日は逃げられていないから、餌付け作戦はうまく言っている、と思いたい。
まあ、本当に上手く言ってるかどうかの結果はもう少しあとになりそうだが。
「まあ、ちゃんとご飯は食べてくれてるから良いんだけど、もう少しコミニュケーション取りたいよね」
「そのへんはおいおい、じゃないか。やっと逃げ出さないでいてくれるようになったんだし」
「食べ終わったら逃げ出したりしてね」
「そしたらまた見つければいいさ。私達は敵じゃない、とわかってもらうまでね」
「長く厳しい戦いになりそうだね」
そう言って、食べおった様子の奴隷の子を見るルネ。どうやら、なにか飲み物がほしいようで、ルネを見る奴隷の子。私は入れてあったお茶が入ったコップを奴隷の子に渡してみる。受け取ってくれた。だが、ちゃんと飲まない。
黙ってルネが自分で入れたお茶を飲むと、飲んでくれた。なるほど、私はまだ警戒するべき人物だが、ルネは少しは警戒をしなくても良い、と思ってる人物にはなったということなのだろうか。…いやまあ、いいんだけれどな?少し寂しい感じはするな?
つい、ぴと、とルネにくっついてみる。すると、寂しさを悟ってくれたのか、私の頭を撫でるルネ。うん、やはりわかってくれる人がいるというのは良いことである。なんだろう、完全に私が惚れてるよな。いや、確かに惚れてるのは私なのだが、初めはルネもこんな感じだったんだぞ?誰に言い訳しているのかは分からないが、思わず言い訳をしてしまう。
「………………………」
なんだかじぃー、と見てくる奴隷の子。いや、確かにこうやっているのを見ているのはよく見ていたが、その後彼女が逃亡しているので、このピッタリしている間は逃げるチャンスなのでは?なんて思ったりしてはいる。
ただ、今回は逃げずにじぃーと見ている。うむ、見られているのはあまり慣れていないからか少し照れるが。だがしかし、ちょいちょい、と手招きをしてみる。いや、これはチャンスかも知れない、という私の勝手な思いだが。いや、こういうふうに距離を詰めていけば、敵だと思わなくなるかもしれないし、と。
そうなってほしいだけの私のただの思い、だが。そうこう、思考をしていると彼女が近づいてきて。こう、私の裾をぐいぐい、とひっぱてくる。
はてな、を浮かべながら私がルネの隣を離れると。彼女がルネに抱きついていた。
「わ、わぁ?!」
「・・・・・・・・・・・・・・な、で、て、た、た、か、ないで、な、で」
「なでてほしいの?」
「・・・ん・・・・」
こくこく、と頷きながら彼女は頷いた。なでて、ときたか。いや、たしかに餌付けをしていたのはルネだしなんだかんだ見つけていたのはルネなんだが。ふむ、そうくるか。
…むぅ。




