ドノン共和国 少女の恋編9
サヴィニアック港。私達は生まれ育った大陸を離れるため、サヴィニアック港から出るマカーリオ帝国行きの船に乗るために私とルネは来ていた。ルイーズとクロエは仕事で、ドミニクは珍しくお酒が残った、ということで見送りには来ていない。見送りに来たニナに色々と持たせて、その色々と私達に渡すニナ。
ルネがそれを受け取りトライクに乗っているかばんにそれを詰ているのを、私は少し離れた所でタバコを吸いながら見ていた。流石に副流煙を浴びせるわけにはいかないからね。ほんと、こういう時、タバコ以外で魔力を回復したい所なのだけれど、一番効率がいいからついついそれを使ってしまう。
タバコを吸い終えて、近づくこうとするとルネがこちらに近づいてくる。
「もう、タバコはいいの?」
「ああ。後数時間は、吸わなくて良さそうだ」
「そ。じゃあ、聞いてよ。伯母様ったら姪の私にあえるのは最後かもしれないのに仕事をとったのよ」
「元首だからね、流石にそうそう仕事を抜けられないでしょ。それに君の叔母ということはあの人達の叔母でもあるわけで。きっと事あるごとに連絡くれ、って言われているでしょう?」
「ですです。それに、ルネ様が早々とお亡くなりになられるはずがありませんもの」
「えー、なぁに?ニナ?私だってか弱い乙女だよ?それだから叔母様とか兄様達は連絡くれっていってるんだし」
「………か弱いかなあ」
私がそう言うと、ルネが私の腹を肘で叩いてきた。思わず腹を抑える私。いや、うん、確かにか弱い乙女かどうかという疑問を口にするのはよろしくなかったとは思う。けれどエルボーはひどいと思うんだ。エルボーだよ、エルボー。何処かの格闘技では最強って言われてるワザだよ。私は見たことがないから、本当にそうなのかはわからないけれども。
その様子を見て、ふふ、と笑うニナ。
「お二人はとっても良い夫婦。あったときもそう思いましたけれど、こうやって、何週間か一緒にいて、ますますそう思いました」
「そう?ありがたい、な」
「そうね。今後もそうありたいわね」
「お二人なら、大丈夫ですよ。いつまでもいい夫婦です」
そう何度も言うニナ。それだけ私達の未来を予測した結果に自信があるのだろう。その自信に答えるためにいい夫婦でいなければいけない、と思うのである。…いや、まだそこまで進んでいるわけではないようなもうそこまで進んでしまったような。あくまで役であったのだけれども、それ以上の事は言っていた気がする。役とはいえ、である。
「・・・ねえニナ」
「あ、はい。ボクは、そうですね。やっと、次のステップに行く勇気をもらえたので、いこう、と思います。だから、次にあったときには」
「あったときには?」
「お二人より素敵なカップルを作れてる、といいな、みたいな」
そういったニナの顔は、私達が見た中で一番、その外見年齢にあうとても可愛らしい笑顔だった。きっとこんな笑顔を向けられれば、よほどのことがない限り堕ちない人はいないと思う。私はフリーだったら堕ちた。だが、私はフリーではない。危ない危ない。
「…ふふ、私達も負けないようにしないとね。旦那様?」
「そうだね、可愛いジョゼ。…それじゃあ、また。ニナ」
「ええ、また。必ず、ですよ」
「必ず。…いや、なんか続けるとフラグになるからそう続けなくて良くない?」
「それも、そうですね」
互いに苦笑いを向けながらそう言い合って。私達は船に乗るためにあるき出す。そして、船に乗って、私達の生まれた大陸をしばらくみれないな、という思いで、甲板から顔を出す。出発時間まで底にいるつもりである。
ルネがジュースを買って持ってきて、私に渡す。私はそれを飲みながら。
「………今度はいつ、帰ってくれるかな」
「どうだろうね。すぐかもしれないし、そうじゃないかもしれない。帰ってこれないかも」
「……まあ、私達はそういう人達だものな」
「でも、かえって来れると信じようよ。ニナの相手も気になるし」
「そうだな。帰ってこよう」
「うん」
そうして、私達はまだ港にいてくれたニナに手を振って。彼女も振り替えしてくれて。そんなときに大陸を離れるための汽笛がなり、船がハンユヘンス大陸を離れていく。私達は、また帰ってくると信じて、ハンユヘンス大陸ドノン共和国の景色を目に焼き付けて、甲板を離れた。




