ドノン共和国 少女の恋編5
「そうかあ、レオノールが、ねえ」
「あら、ルネ。あの子は私に似てモテるのよ」
「まあ、分かるけれど。…伯母様よりはモテそうなのは分かるけれど」
「それはルイーズさんの性格をよくわかっているからでは?」
ふふ、と笑いながらそういった私。話を聞く限りきっと、ルイーズよりおとなしく可愛らしい性格なのだろう。可愛らしい性格が褒め言葉になるかどうかは分からないが、私よりはきっとモテる。まあ、いい、私はルネにだけモテてればいいのだ。特に問題はない。
私の隣りにいるルネはそれなりにモテる。こないだ行った酒場でも、仮面をしているとはいえ、なんだか持てていた。まあ、私が隣にピッタリついて、「ナンパするなら斬る」みたいな雰囲気でいたからそんなに強くは来なかったけれども。そりゃ陛下様もお妃様にしたがるわけである。
「でも、本人はモテて少し嫌だったみたいでして、よく私に「ニナのほうが可愛いのに」って言ってましたね」
「それは、女同士のあれなのでは?」
「「「「レオノール(様)がそんな事するわけない」」」」
「おおう…」
「伯母様ならともかく、レオノールはそんな事やる子じゃないもの」
「わかる」
「わかります」
「…わかりますわね」
「いや、ちょっとは私のフォローも入れてくれない???泣くわよ?私泣くわよ???」
「そんなことで泣くような精神の持ち主ではないだろう、ルイーズさんは」
しかし、なんとなくわかった。ルイーズからはあまり生まれそうにない性格の子なのだろう、ということが。それはきっと周りの大人がしっかりと教育したからだろう。もちろん、ルイーズもだが。やはり子供の教育には大人が大切なのだろうなあ、なんて思う。
いちばん大事なのは本人の努力だけれどね。
「レオノール様は、そういう事にあまり詳しくない私に色々と教えてくださいました。基本的なことも応用的なこともすべて。そのおかげで今の私がいると言っていいほど」
「あれー?お姉ちゃん達はー?」
「姉様達の教えはあまり…。いえ、育ててくれたことは今でも感謝しきれませんが、教えはほとんど暗殺とか裏のお仕事だったので」
「そういえば、そうですわね」
「まあ、生きるために、みたいな所はあったかもね」
「ふふ、クロエもドミニクもまだまだね。私はきちんと役に立つことを」
「ルイーズ様もそんなには…」
「うーんこの伯母様」
ルネが白けきった目をルイーズに向ける。いや、わかる、わかるがその目はよしてあげてくれルネ。本当にルイーズが泣きかねない。…いや、そんなことで泣くような人ではないのだけれど。
「…いいわよいいわよ。私がいなければレオノールはいなかったんだから。ふん…」
泣きはしなかったがイジケてしまった。すごい分かりやすい態度である。酔っているのもあるのだろうけれど、少しだけ外見年齢に精神年齢が引っ張られている気がする。まあ、空になった瓶がそこそこあるから引っ張られるのも仕方がない気がする。
あ、ルイーズ以外の酒飲み連中は私も含めてうわばみである。めったに酔わない。今は関係はないが。




