ドノン共和国 少女の恋編4
「第一印象は、そうですね。まんまルイーズ様を落ち着かせて、少し若返らせた感じのイメージの方でした」
「伯母様を。…ああ、なるほど」
ルネは誰だかわかったかのように頷く。そして私以外の人達がわかっていることになった。いや、まあそれは仕方がないのだけれども少しだけ寂しい。まあ、ルイーズとルネは叔母と姪だし、その話題になってる子とはいとこなので分かるのも仕方がないのだが…。
なんだろうな、こういう時、私だけ他人感を感じてしまう。いやまあ、他人だしわかりあえる事なんてそうそうないのだけれども、ルネとは駆け落ちをしたわけだし、わかりあえるとは思っていたのだけれども。いや、解りあえてはいるけれど、なんだろう。…うまくいえないけれど、どうにもモヤモヤしてしまった。
…まあ、そのもやもやを感じ取ったのか、ルネがぴったりとくっつきに来たわけだけれども。私はそれが嬉しくて、ルネの頭をなでててやる。うん、私はとても単純だからこれで、寂しさは何処かへ飛んでいく。そりゃ私はルネが「逃げよう」って言ったらすぐ国を捨てるわ。いや、言った記憶も言われた記憶もないけれど。それでもこうやって、国を一緒に捨てたのだから、きっと私はベタぼれなのだろう。向こうはわからないけれど。
「ただ、性格はルイーズ様と違い、あまり会話が得意ではなく、私と打ち解けるのもだいぶ時間かかりましたね」
「私はまだ打ち解けられてる感じはしない、ですわね」
「私も」
「私もまだ」
「伯母様も?!いや伯母様はお母様でしょ?!」
なるほど、ルイーズの娘さん。…そうか、それじゃあ確かに諦めざるを得ないって感じはする。なにせ元首の家に生まれたのだ。それは、次の世代を作らなければいけないし、きっとそれは生まれた頃から言われていたのだろう。まあ、だからといって、諦めることなんてない、とは思うのだけれども。
それはそれで、なんというか。大変な人生だな、と思う。
「まあ、母親ですけど他人でもありますから。なんでしょうね、あの子がわからなかったりするんだよねえ」
「そう、いうものですか」
「そういうものよ。…あの子にも、きちんと恋愛してほしかったな、とは思うけれど」
「…そうですね。もう少し私が押していけばよかったかな、と思ったんですけれど、それはほら。上司の娘さんと変な空気になるのも、とは思いますし」
「あー…。確かに、居心地がいいと、そうなるよね」
それは分かるのである。なにせ、私がそうだったから。まあ、私の場合は上司のお嫁さんだったわけだけど。いや、それでもどうにかなっちゃったからこうなってるわけで。何かを変えようとは思わないけど罪悪感はある。この旅で少しは薄れればいいかな、とは思ってはいる。いつか帰れるとは思っているからね。
…まあ、私だけが帰れると思っていても駄目だし、ルネが帰りたいと思っていなければ、帰れないし帰らないけれど。




