ドノン共和国 少女の恋編3
「・・・・・・・・・・、はじめてあったのは、ルイーズ様に、つくようになってからでした」
「5年前、ってことになるのですね」
「そうかあ、5年前かあ」
5年ほど前から、この人達と一緒にいるのか、と。割と大変そうだなあ、なんて思う。いや、クロエは姉妹だからもっと前からか。ドミニクはいつからかはわからないけれど。いつかドミニクとクロエの話も聞きたいところだけれど、多分、今回はニナの話だけにしておこう。まあ、聞ける時が来たら、聞いておこう、ぐらいのノリで。
あと、突っ込むと多分私達のなれそれも聞かれそうだし、今はまだ、心の傷が開かないように説明できない気がする。ニナもまだ傷が開かないように説明できないかもしれないけれど、説明するというのなら、あまり突っ込まず聞くまで、である。他の三人がどこまで突っ込むかわからない、が。
「ねえ、クロエ。私達があったのって…?」
「十年ぐらい前になりますかね。だから、その後です」
「後かあ。…あの頃のクロエは、なんか荒んでたよね」
「そうですね。丁度あれ気味だった頃の話ですか」
「…姉上って、何年かに一度、荒む時ありますよね。ここ最近はありませんが」
「まあ、それは、ドミニクにあったから…」
もぞもぞ、となにか言い出したクロエ。いや、最後の方はホント聞き取れなかったんだよなあ。とはいえ、今はそれあんまり関係なくて。
ごほん、とルイーズが咳払いをする。まあ、流石に何度もイチャイチャ空間に一人は辛いか、と思った。
「そうですね。あの頃、姉様と私は仕事がなく貯金を切り崩しながら暮らしていました。それは、名家としてはとても許せる話ではなかったのです。そこで、お祖父様のつてを使い、私達はルイーズ様の表と裏で働くことに」
「そうそう、前の働き場所が見事に没落してね。その後ヘッドハントされたのがベケ家だったんだよねえ」
「まあ、私が飼ってた人達がちょうど世代交代したい、っていう時期でしたので。ちょうどよかったんですよねえ。…まあ、ちょうどよく没落させた、っていうのもあるんですが」
「えっ」
「あ、やっぱり。そうじゃないかなあ、なんて思ってました」
「まあ、マリーの前で言うことじゃないし、私達は墓まで持っていくつもりだったけれどね。ルイーズ様本人がばらしたならしょうがない」
「しょうがない、です」
「えっ…」
一人納得してないようで、何度か、姉妹とルイーズの顔を見やるニナ。いや、まあ、たしかにあれよね。信じてた人が突然前の会社潰しました、とか言われてたら、納得も理解もできないよね。分かる分かる。多分私もそうなったら理解も追いつかないし納得もできない。
「伯母様…」
「いや、仕方じゃない。歳には勝てない、って言ってたし。…それに、前のところより給料の払いはいいでしょ?」
「確かに。前の所はひどかったですわね」
「そうですね…。良い所にヘッドハントされた、と言うべきなのでしょう」
「そうでしょそうでしょ?」
なんだか、ドヤ顔して私とジョゼをみるルイーズ。いや、わかった。部下に好かれてるのはわかったし、給料の払いが良いのはわかった。だからといって私達をそんな顔で見られても困る。苦笑を浮かべるしかない。ジョゼもおんなじような反応をしているだろう、もしくは、呆れているか。
まあ、呆れるのはきっと身内だからだろう。私はほんと、困ったように苦笑を浮かべるしかできないのである。
「それで、ニナ。君の恋の話だけれども」
「ああ、そうでした。…そうでした」




