ドノン共和国 少女の恋編2
さて、このイチャイチャ空間を少し落ち着かせてからの。私はワインを頂きながら、クロエに話を聞こう、とクロエの方へよっていった。まあ、これは正直、ドミニクでもよかったのだが、ドミニクはニナにぴったりであったので、話を聞きやすいクロエの方である。
「そういえば、あの場にピエロの仲間がいなかったのは何故だ?」
「あー。そうね、彼らには”事故死”してもらいましたわ。服とマスクだけもらいましてね。詳しく状況聞きたいですか?」
「…………完全に物語の悪役の手だな、それ。いや、いい。私は使わない手だが、そういう手を使わないといけない時があるのは知っている」
「ふふっ、そうですわねね。まあ、でも、そんなことを暴こうとする正義のマスコミも、ジャーナリストも勇者もいないわけで。あとは貴方様が言うかどうか、ですわよ」
「しっかり買収済み、か。いや、いい。勇者になってこんな良い国に来れなくなるのは、余りにももったいない」
「投資と言ってもらいたいですわね。ふふ、良いご選択ですわ」
「見返りは、そういう事に目をつぶってもらう事か」
閣下は…マスコミの買収ぐらいでそこまで直接的な手は使わなかった気がする。ほら、私達の不倫もそんな大事にはならなかったのでマスコミの買収はしている。私が知っている、そういう汚い所はそこだけだと思う。いや、私が知らないところで使っているのかもしれないけれど。所詮王宮魔術師よ。
「しかし、ドノン家、というか君達の役割はそういうのが、多いのか?魔術系統もそんな感じだろう?」
「そうですわね。具現化ですので、足がついたら困る事をやらされることは多いですわね。良心は少し痛む時はありますが、それでもやらなければやられるので」
「そうか。割り切ってるならそれでいいんだ。…それは、ニナさんも?」
「ニナにはそんな危険なことやらせられないよ!」
私とクロエの会話に割り込んできたドミニク。その言葉にうんうん、と頷くクロエ。そして、困ったように笑うニナ。なるほど、過保護か。過保護なんだな。いや、まあ、見ていれば分かることだから口には出さないが。
「僕は、やらせてくれ、と言っているんだけどね」
「だめですわ!だめですわよ、ニナ。ニナにはきちんと表のお仕事をしてもらってきちんと恋もして、幸せになってもらわなければ」
「幸せ、か。僕には少し遠い話な気もするけどね」
「そんな事ないよ。ニナはいい人がすぐ見つかるよ。ねえ、クロエ?」
「そうですわ。私達の自慢の妹ですもの。焦らなくてもいい人は見つかりますし、私達も見つけますわよ」
「ああ、うん、ありがとう姉様達」
やはり、困ったように笑いながらそういったニナ。そこはなにかまだ諦めきれない恋、というか忘れられない恋があるような、笑顔だった。そうか、たまーに笑うとどこか悲しみがあったのは、これかあ、合点がいった。
なんて思いながら隣を見ると、ルネが同じように合点がいった、という顔をしていた。まあ、あんな笑顔を向けられれば、一体何がとは思うけれども、あまり聞ける雰囲気ではないよなあ、とは思っていた。ただ、今は聞けるだろうし少しは答えてくれるだろうという気持ちはある。
「ああ。なるほど。…ルイーズ、ニナはまだ引きずってる感じ?」
「そうですわね。もうそろそろ1ヶ月すぎる頃だし、そろそろ吹っ切っても良い頃、だとは思うのですが」
「そ、そうだよ。レオのことじゃ」
「だーれも口にはしていませんわよ、ニナ」
「んんんっ」
レオ。それがニナの想い人の名前なのだろう。一ヶ月前一体何があったのか。そして、吹っ切らなければ行けない、ということはその恋はもう叶うことはない、ということだろう。
「ねえ、ねえ、マリーさん」
「…はい」
「私達に話して、すっきりしない?…伯母様達がいて話しにくいって言うなら、ちょっと違う部屋いってさ」
「いえ、お姉様方は僕が失恋したというのは知っているし、ルイーズさんが行った行為は決してお家を続けようと思えば当然の事ですので…」
「伯母様????」
「………いえ、もうほら、それは、ね?」
ルネにじぃ、と見つめられ少し言葉に詰まるルイーズ。なるほど、姪が弱点なんだなあ、と思った。その弱点をついたら一族もろともなぶり殺しにされそうではあるし、そんな弱みを見せるとは思わないけれど。それはルネの兄上様達も一緒である。弱点ではあるけれど、消して表ではそれは見せないし、見せたとしてもそれを使おうものなら、その後はとてもひどいことになる。
ただ、此処数日、一緒にいて決して見れなかったルイーズのこういった姿を見れたのは、間違いなく収穫である。
「・・・わかりました。でもけして、幸せな話では有りませんよ?」
そう、口を開き、そして、持っていたワイングラスに入っていたワインを一気に呷ったニナ。なるほど、話すのに少し酔いたいんだな?分かるぞ。