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放逐女性達の旅人日記  作者: 霜月 睦月
第一章 ドノン共和国ー上・仮面舞踏会編ー
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ドノン共和国 仮面舞踏会編4

「さて。ピアニストとしての仕事は終わったわけだし、後は」

「そうね、リーズ、踊らない?」

「踊るのかい?まあ、本分ではないから、下手くそだろうけれども、私でよろしければ」

「リーズがいいわ。他の人となんて踊れないもの」


 そう言って、私とジョゼはダンスが行なわれている、場所へと行き、ジョゼがリードする形で私達は踊る。

 やはりジョゼは元王妃とだけあって、ダンスが上手。私はもうそのままジョゼのリードに合わせるので一杯一杯である。王宮魔術師の時はこういうダンスパーティーなんかは参加しなかった、というか、参加しても見ているだけだったので、ダンスはホント下手くそだと思う。リードがなければ見せられたものじゃない。少しだけやっておけばよかったかな、とは思うもの、私の仕事はそうじゃない、と思う私もいる訳で。色々と複雑なのだ。

 まあ、この旅の間に練習をして行ければいいかな、と思ったけれど、この旅で披露することはこれ以降は多分ない。そうすると練習しなくてもいいかな、なんて思う。


「下手、っていってるけど、私のリードについて来れてるなら十分じゃない?」

「そう?ついていくのが精一杯だったよ」

「そうよ。流石、私の奥さんだわ」

「そう言ってもらえるのは大変ありがたい、かな」


 一曲、曲が終わったところで、互いに礼をして、元いた場所に戻りながらもそんな会話をする。なにせ、そういうことをしておかないと、ナンパされる、という話を聞いたのだ。いや、ナンパされたほうがいいのかもしれないけれど、それはそれでなんかこう、モヤモヤはする。それはそれ、これはこれ、なのだ。

 私はこの人のものですよー、そしてこの人は私のものですよー、とアピールしておかないと不安になったりもやもやするのもどうかとは思うけれど、なんにせよアピールは大事。それはどんな所でもどんな時でも変わらないと思う。

 そんなことをして戻っていると、ジャン=マリーさんの近くに褐色の男性が立っているのが見えた。男性の方はとても親しく話しているが、ジャン=マリーさんの方はなんかとてもそっけなく見える。知り合いのようにも見えるがそうじゃないようにも見える。中々に難しい。


「あら。すみません。私達の連れになにか御用でも?」

「おっと、これは失礼。お一人に見えたので、お声がけをね。女性だと思ったので、ついダンスのお誘いをね」

「…何度も男子、といって断っているのですがね」

「そうなんですよ。いや、でも腰は」

「変態さんですか?」


 最初に、ジョゼが話しかけ、私がそう突っ込む。

 思わず言ってしまった。いや、初対面の人に腰の話をするのは変態以外のなんでもないような気がするんだけれども。私はそう聞いてから、はっとして。


「いや、なんか。申し訳ない。初対面の人にたいして」

「いやいや、そう思われても仕方がない発言でしたな。俺…じゃない、私としたことが」

「そうですよ。……名前を聞いていませんでしたね」

「ああ、そうでしたね。まあ、フルネームと顔を隠すのがこの舞踏会のルールでありますので。そうですね、ピエロ、と名乗らせていただきます」

「ピエロさん。なるほど、私はジョゼ。こちらは、リーズ。そして貴方が話しかけたのはジャン=マリー。私達、この度、初めての舞踏会デビューですので至らぬことばかりですが、よろしくお願いしますわ」

「ふむ、そうですか。初めての。ジョゼ様とリーズ様は中々に踊り慣れているように見えましたが」

「いえいえ、私なんかはまだ。ジョゼに任せっきりで」


 首を振って、にこやかに笑う私。まあ、なんだろうね。こいつはきっとそういうやつなのだろう。誰とでもにこやかに話せるタイプ。ジョゼと一緒のタイプ。私はどうにもうまく付き合えないタイプなのだった。いや、それでもジョゼは大丈夫なのだけれども。

 多分、ジャン=マリーさんも私と同じタイプなのだろう。なにせ、ピエロさんに話しかけられてもあまり愛想よくしていない、のである。いや私達と一緒にいてもそんなに愛想よくしてもらえてる気はしないのだけれども、それでも、なんとかうまくやれている気はする。まあ、確かにうまくやらないと連れという立場状まずいのだろうけれども。うーん付き合いって難しい。


「そうですわね。何度も練習いたしましたし」

「なるほど、練習。大事ですよね」

「ええ、恥をかくのは一生モノですから」


ピエロさんとジョゼの会話を聞きながら、私達にワインを、と近くを通ったウェイターに頼んだ。ジャン=マリーさんはぎりぎり飲める歳なのかどうか、なのだけれども、この舞踏会に入れた、ということは飲める歳ということなのだろう。エルフにもヒューマンにも見えるから、よくわからない。今度行なわれるルイーズさんのやつではジュースになるかもしれないけれども。まあ、それはそれ、これはこれである。


「あ、申し訳ない。こういうのは男子である私の役目なのに」

「いえいえ、丁度手持ち無沙汰でしたし」

「…リーズさん、私にいってくださればとってきましたのに」

「そうですか?まあ、たまたまウェイターさんが通りましたですし」

「そう、ですね」


なんか納得言ってない顔をしつつ、私にそういったジャン=マリーさん。いや、確かにあれだけれども。そうはいかないぞ。




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