◇04 つづき:リサと親父さん
俺が語るおとぎばなしに、リサは夢中で聞き入っていた。ガキのころと同じきらきらした目で、懐かしくなる。
「おまえほんと、このはなしが好きだな……。ぜんぜん変わってねえ」
「えー! 私も変わったよ。だってこの話すごく面白いもん」頬を膨らませ不満げにリサは言った。
「『惑星の精』ってすてきだし、あと男の子もね。なんかこの子、ぶっきらぼうな雰囲気があってかわいいのよ。親父さんも思わない?」
「はいはい、そうですか」
……まったく。心のおくでため息をついた。
すると彼女はふいに、窓に目を向ける。
「親父さん。私ね、いままで船でいろんな星を見てきたんだ。どの惑星も恒星も、ひとつとして同じすがたは無くてさ、よく思ったの。『あのおとぎばなしみたいに、星には精霊がいるのかも』って。廃棄物投棄用の座標もいくつか寄ることがあったから、余計にね」
リサが操縦席の景色を眺めるなか、俺は遠くの茶色い惑星に目をこらした。近づいた実感はまだ無いが、着実にあの惑星に向かって進んでいる。
俺は尋ねた。
「寄り道の件だが、すこし時間を食うぞ。大丈夫か予定は」
「うん……大丈夫だよ。急ぎじゃないから」
そう答えたリサの顔は、とたんにしぼんだものに変わった。
思えばこいつに疑問を感じる。偶然再会したまでは良い。だが花を渡してきたり暗い顔になったり、ひいては寄り道さえすんなりと受け入れる……。どういう理由で定期便を待っていたんだ。
「どうしたリサ」
「うん? なんでもない」
すぐにはぐらかされた。
「あの茶色い惑星にいくの?」
リサが指をさす。目的の星だ。
「ああそうだ。まだかかるな」
俺はおとぎばなしを続ける。リサが惑星を奇妙そうに眺める横顔に、目を向けながら。
――朝になりました。きょうから女性と、ごみ惑星で新しい生活がはじまります。
しかし少年はそのとき、嫌な夢を見ていました――