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からくり人形のように町の停車場でシェリーの帰りを待つヨゼフ。
ある日、気になる人影が停車場にいた。その人は十五歳ほどの少女のようで、背が低く、肌を見せないように長袖に手袋を身につけ、顔を隠すように麦藁帽子を深く被っていた。それだけならば彼もあまり気にしなかったかもしれないが、異様に気になったのが、彼女のスカートだった。彼女は裾のあっていないスカートを履いていた。足元があまりよく見えないのだ。動けばもしかすると靴のつま先くらいは見えるかもしれない。そう思ってしまうほどに長いのだ。あの服装では動きにくかろうと傍目で見て感じていた。
次の日もその少女は立っていた。昨日と同じ服装で、長袖に手袋を身につけ、顔を隠すように麦藁帽子を深く被っている。スカートの裾の長さも変わりがない。
また次の日もその少女は立っていた。その次の日も、そのまた次の日も。
そして少女の服装は変わらなかった。服をあまり変えられない家の子なのだろうか? 長すぎる裾も服を買い替える余裕がないからかもしれない。
いつしか少女が気になり、傍目で彼女の様子を窺うようになった。
いつも変わらぬ服装で毎日停車場にいる彼女は、自分と同じように誰かを待っているのではないかと感じた。
彼女を見かけてから三ヶ月。ヨゼフは、変わらぬ様子の彼女に声をかけてみた。
「お嬢さん。三ヶ月もこちらに立っているけど、誰を待っているんだい?」