無能な能力はキュートな能力
心ゆくまでリトルを撫でて、すっきりとした気分で残った従魔たちを見回す。
「改めて見るとやっぱり大きいなぁみんな」
一番大きなラトルは座っているだけで2階建ての家より大きいのではないだろうか。
周りが木しかないので比べる基準にはならないのだが、ラトルの体長はどう見ても私を縦に4、5人分並べた以上の大きさはある。
そんなラトルとほぼ同じ大きさと言っていいリトルに、ラトル・リトルよりひとまわり小さいルトル、アフリカゾウ並の大きさのサテラとステラ。
ここに居ると大きさの標準がわからなくなる。
「ねえ、ラトルの大きさって成体サイズ?」
私の疑問にラトルは少し首を傾げ、自分の身体を見下ろした。
「いいえ。まだまだ大きくなりますね。竜種は進化することによってその個体の大きさは変わりますので」
「この大きさでまだちいさいのか…」
てか、進化するんだ。
「何かありましたか?」
不安そうな顔をするラトルを宥めながら思案する。
町を見つけたとして、この子たちを連れて入るのはいささか無理がありそうだ。
サテラとステラまではギリギリ行けそうな気もしなくもないが、さすがに7、8メートル近くあるドラゴン3体一緒は無理な気がする。
だからと言ってここに従魔を残して、私だけ町に入るのはなんか嫌だし、私のスキルは『魔物使い』であって『召喚士』じゃないから必要に応じて魔法陣から呼び出すということはできない気がする。
「んー…、どうやったらみんなを町に連れていけるかな…」
「ご主人様だけ町に入って、我々は森の中で待機していましょうか?」
「できればそれは避けたいかな。みんなと一緒にこの世界を見て見たいんだ私は」
「……小さくなればいいだけだ」
うーんと唸りながら、しょぼい脳みそを使って思案していた私にリトルがボソッと呟く。
「え?リトルそんなことできるの?」
「……上位竜種だからな」
「そうですね。我々ならできますね」
「そうでしたね。ほとんど使いどころのない能力なので忘れていました」
リトルの案にラトルとルトルが頷く。
どうやら上位竜種であると自分自身の大きさをある程度自由に変化させることができるらしい。
「それって今の大きさよりも大きくなれるってこと?」
「いえ。それはできません。できるのはあくまで今のこの大きさまでの範囲内での変化だけですので」
「竜種にとって体の大きさは目に見える畏怖であり、より大きく、より逞しくある方が好ましいとされるので小さくなる能力というのはあっても使い道のない能力なのです」
全てにおいてでっかいことはいいことだ精神であるのが竜種というものらしい。
「生まれたばっかりなのにちゃんと自分の能力を把握してるんだね」
流石魔獣。というか自然界の動物はみんなそういうものか、人間みたいに大きくなるまで養われてから巣立つのではなく、生まれた瞬間から自分の持てる能力全てを使って生存競争を勝ち抜かないといけないのだから。
動物ってすごい。
そんな事を考えている間に、ラトル・リトル・ルトルは自分たちの能力を発動させてみるみる小さくなって体長50センチぐらいの大きさになった。
「ご主人様如何でしょうか?」
「すごい!すごく可愛い!」
見上げるぐらい大きかったドラゴンが肩乗りサイズになった。
私の周りを飛び回るラトルとルトルを褒めていると、ポスっと肩にリトルが乗った。
「リトル?」
「…」
何も言わず肩に乗って長いしっぽをてしてしと動かしている。
これは自分も構えっていう意味なのだろうか。
「ナデナデしても?」
「……」
プイっとそっぽを向くが肩からは飛び立とうとしないリトル。
ツンデレかな?この子。ツンデレかな??可愛いんですが。食べちゃいたいぐらい可愛いのですが。
「かっわいい!!」
「ちょっ!?やめっ、そんなぐりぐりとするなっ!」
慌てて飛び立とうとするリトルを撫でまわし、対抗心を燃やしたステラが乱入するまで続けたのだった。