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決着の日

展開が早い? その分彼が動かなかっただけです←言い訳

 ――――

 ――


 それから四日が過ぎた。僕はあれから一歩もここから出ていない。出る気もなかったし。

 他人からどう見えていたのか少し不思議だったけど、久し振りの狂気に身をゆだねている僕はどうでも良かった。けど、その状態は今回長続きしなかった。おそらく、僕がそんなに他人と会話してないからだろう。たった四日で落ち着いたのだから、あり得ない話じゃなさそうだ。


 で、その四日間何してたのかというと……まぁ勉強したり料理作ったり掃除したり一人で蹲って寝ていたりして姉さんに対しての行動を思い返して、少し反省したからかな。確証はないけど。


 花音と圭はおそらく、僕の状態に気付いてる。それを確信できるのは、この四日間での会話の回数。そしてその度に投げかけてくれるやさしい言葉。元に関してはおそらく知らないだろう。でも、普段通りに僕と接せるんだから大したものじゃないかな。鈍いのか嬉しいのか……まぁ将来大物になるのかな、こういう人が。


 まぁいいや。机に突っ伏して寝ていたけれど起きた僕は椅子から立ち上がり、ストレッチをする。首がボキボキとか言ってるけど、変な体勢で寝ていたからだね。あと身体がものすごい硬くなってる気がする。う~んちょっとまずいかな……?


「起きたか?」

「あ、圭。どのくらい寝ていたの僕?」

「……今の時刻は午後六時。大体三時間ぐらい」

「って、夕飯じゃない。もう少し早く起こしてくれてもよかったんだけど?」

「……自分で夕食位は作れる」

「ま、そりゃそうだね」


 圭の家庭の事情を察した僕はあいまいな返事をして、元たちがいないことに気付いた。夕方ごろには戻ってきていたはずだというのに。

 携帯電話は電源を切ってある。だから電話がかかってきたところで、僕はそれを知る由はない。興味もないしね。

 まぁ、爺ちゃんたちから稀に連絡してくるのが重なることがない限りは大丈夫だね。エスパーみたいな、予知でもしてるかっていうくらいピンポイントで電話をしてくることがあるけど、基本不干渉だから…。


 なんか、変な不安が襲い掛かってきた僕は、とりあえず「元たち、どうしたの?」と質問する。


「……どうやら、交戦中らしい」

「え!?」

「二人のGPSが一か所になった……と思ったら逃げ回っているところだ」

「えっと……どうするの?」


 僕が首を傾げて質問したところ、圭は少し考えてから「行ってくる」と言って荷物をあさり始める。

 とはいっても僕にはできることがないので、ただ「頑張ってね」と応援しておく。

 それに対し圭は親指を突き立ててくれた。そしてそのまま部屋を出て行った。


 残された僕はとりあえず夕飯作ろうと考え、備え付けの冷蔵庫に何か入っていたかなと探すことにした。



 ――元と圭が傷だらけになって帰ってきたのは、それなりに時間が経過してからだった。


「あれ、花音は?」

「……」

「……病院」

「え!?」


 元が黙り、圭が説明した内容に、僕は驚くけれど先程までの状況を鑑みてすぐに納得する。そしてこれから僕が取れる行動を思考して行動を起こす。


「……まぁ、大変だったね。元は夕飯食べた? まだなら作ってあげるけど」

「…………本当、すごいね、連……お願いしようかな?」

「了解」


 僕は外出してなかったのでそれほどいらなかった。だから材料はまだ十分にある。

 調理を始めながら、僕は圭に「そこって大丈夫なの?」と確認する。


「……問題ない。そもそも、向こうの能力の使用条件上、病院は真っ先に外されていたから」

「え、そうなの!?」


 元が初めて聞いたようなリアクションに圭がうなずくと、そのまま続けた。


「前にも言ったが、あの女――峯島ライカの能力は『洗脳』だ。ただし、それも段々と深度を深めていくタイプのだ。一発で洗脳できるなら、そもそも全員アウトに近い」


 もしいたとしたらそいつは真っ先に消される。なんて補足を入れたので、僕は思い出すように呟いた。


「確か、それを可能にするために体育館に仕掛けたんだっけ」

「そう。向こうの勢力がアシストするために仕掛けた。先生はその前に支配下になっていたのだろう」

「改めて聞くと、怖いよね。自分を僕の身内だと『洗脳』して、それを『事実』としてみんなを『洗脳』したんだから」

「捨て身にもほどがあるよね」

「……それだけ中島元という人間が脅威だと感じたのだろう。裏社会だと極悪犯を捕まえたことで有名だろうし」

「でも、圭は対抗策を講じていたし、元には効いてなかったし、僕はそもそも体育館に入ってないし、花音さんは呼び出されて入学式出てなかったのだから、失敗といえば失敗なのかな?」

「……それが彼らの歯車が狂った原因だろう。他の奴らと反応が違う、明らかに周囲に戸惑いを感じている……そんな反応を見て当初の案は破棄した結果が」

「これ……ね。まさか僕達が二人で行動してるところに洗脳した人たちを襲撃させるんだから」

「え」


 思わず料理の手が止まる。大体完成したけど、信じられない言葉が聞こえたから。

 僕の反応に対してなのか知らないけれど、圭は続けた。


「……どことなく苛立っているようだった。あの襲撃は完全に焦りから来たものだ。でなければ、捕まえて吐かせるか、尾行させれば俺達なんてすぐに捕まっていた」

「そう言えば久美達はいなかったね。僕としては良かったけど」

「最後の障害だろう、十中八九」

「うっ、そうか……」

「…………」


 料理を完成させた僕は不意に彼女達のことを考える。

 完全な被害者だ。多分、今回の件は僕がそう割り切れば、丸く収まる話なのかもしれない。

 でも、無理だった。そのことを考えただけで再び思考が戻る。狂気が再び、顔を出す。

 考えたことで表情を消した僕は、そのまま料理をテーブルに運ぶ。


「はいどうぞ」

「ありがとう連……って、結構豪華だね!?」

「疲れ位飛ばさないとね。本拠地は割れた?」

「明日中には割れる」

「そう……なら僕は、ここで応援するよ。外に出て教会で待ってるから、終わったら戻ってきてね」

「……分かった」「うん」

「おやすみ」


 僕は一人で寝た。




 八日目。

 午前中に本拠地を割り出した圭が元と最終確認をしている中、僕はその場で掃除をしていた。


 話を聞いていると、どうやら組織の人間が洗脳された人間を抑えて元凶と一対一に持ち込ませるので、元には悪いけど、一人で元凶を倒せというものらしい。睡眠弾で眠らせてしまえば洗脳された命令だろうが関係なく動けなくなることを組み込んでいるとか。


 元自身もやる気である。そりゃそうだ。花音さんも怪我したし、いつも通りの日常をぶち壊した彼女に対する怒りもあるだろうし。


 全体の流れが決まったみたいだったので、準備してる二人に対して昨日から疑問に思っていたことを聞いた。


「そういえばさ、なんで彼女苛立っているって感じたの?」

「え、えっと……」

「……見かけたとき地団太を踏んだりしていたらしい。物にもあたっていたとか」

「……?」


 僕は首を傾げる。どうしてそこまで苛立っているのか。計画自体は向こうが成功している。あとはこの抗争に向こうが勝てばこちらに出来る抵抗はない。だというのになんでそんなに余裕がないのかと。

 僕にやった行動を思い返し、まさかそれが原因なわけないよねと思いながら「僕の反応がそんなに気に入らなかったのかな?」と呟く。


 目ざとく反応した圭が「そういえばあの時言われたからこうした生活が始まったんだな」と呟いてから何を思ったのか僕に「なんて言ったんだ?」と訊いてきた。


「え、何が?」

「連が俺に電話してきたとき。あの時の会話の流れでなんて返事したのか気になった」

「そういえばびっくりしたよ。いきなり圭に『古びた教会に宿泊道具持って集合』ってメールが送られたときは」

「今じゃなきゃダメ?」

「……まぁ」


 僕は目を瞑って記憶を思い起こし、「あっそう、とかだったかな? 正直僕に話しかけてきた時点で内容は想像できていたから言われても平静を保てていたけどね」と自嘲気味に答える。

 そういえばなんで僕は彼と彼女を関連付けたんだろう。直感的にそう思ったのか、それともあの発言の際に思考がそのまま直結したのか……多分、後者かな。


 学校に襲撃をかける以上、生徒の個人情報及び関係性は入手しているはず。なら、現状で恐らく「彼女」という表現に当てはまるのはレミリアさん以外にいないと向こうが考えたのだろう。だから彼を懐柔したのかな。ふむ。


 ある程度予想の道筋が経ったので自分で納得していると、圭が「納得した」と頷いていた。


「え、なんで?」

「向こうが連のことを見誤ったせい。揺らぎもせず、行方もくらましたのだから、向こうに焦りが生じるのもある意味当然」

「そうなんだ。連ってやっぱりすごいね」

「すごくないし、買い被り過ぎだって。僕からしたら圭や元たちの方が凄いけどね」

「そうかなぁ」

「……。そろそろ時間」



 あ、圭が言及を避けた。まぁこちらとしてもうれしいけど。

 二人が階段を上がっていくので、ついていく。

 少し歩いて外に出てきた僕は、腕を空に伸ばしてから、「頑張ってね、二人とも」とエールを送る。


「僕は昨日言った通り、この教会内で待っているから」

「……見つからないように」

「それじゃ、行ってくるよ連」

「行ってらっしゃい」


 そういって二人の背中に向かって手を振る。そして見えなくなってから教会の中に入り、朽ちて壊れた巨大な十字架を見ながら「お願いします」と両手を合わせて呟いた。


 意味のない行為だと思うけど、ね。

前話での狂気に侵された主人公は伝わったか不安ですが続きます。

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