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午後の行き先

最近動画を見たり仕事疲れからか筆が進みません。申し訳ございません

「おいしかったですね、レン」

「うん。一流の料理人だったよ。どの料理も味が完成されてたし」


 僕の感想に彼女は頷いたようで「あの料理を食べたら、自分で作りたくなくなります」と気落ちしていた。


 現在は昼食を食べ終え、レストランから出てジェットコースターへ向かっている最中。中央部にもあるんだけど、他の場所にもあるそうだ。現在どこのブースに向かっているのかわからないけど。


 肩を落としている彼女に、「あれは考えて作り続けている人だから。落ち込む必要ないんじゃない?」と言っておく。励ましというわけじゃないけど。

 その言葉を聞いたレミリアさんは「レンにはわかりませんよ……」といじけてしまった。


 まぁ実際分からない。僕は彼女じゃないから、今抱いている気持ちを断定することなんて。

 ただまぁ、ショックを受けていることぐらいは流れで察することができるけれど。僕としては世界は広いなぁって再確認できていい経験だと思えたけど。シェフの人達には逆に驚かれただろうけど。


 この場合何を言ったらこれ以上彼女の機嫌が悪くならないんだろうと不思議に思いながら歩き続けていると「少し休みませんか?」と提案された。そこまで疲れてないから大丈夫なんだけど、彼女の方からという状況なので合わせる。


「ちょうどベンチあるし、そこに座って休もうか」

「すみません」


 そんなわけで人の往来で忘れ去られたようなベンチに二人で座る。位置は隣同士で、肩と肩が触れ合った状態。僕の荷物は足元に置いといた。置き引きに遭わないように警戒はしておく。

 そんな状態で黙ったままでいると、レミリアさんが「楽しいですか?」と聞いてきた。


「それはもちろん。ただ、やっぱりお金に関しては申し訳なくなるけど」

「そこは気にしなくてもいいですから……でも、楽しいですか。よかったです」

「やっぱり気にしていたんだ」

「そりゃそうですよ」


 思わず「ごめん」と謝る。まぁ原因作っているの僕だし。

 にも拘らず、彼女は慌てていた。


「い、いえ!こちらこそ変なことを言ってすみません!」

「別に変なことじゃないよ。僕には前科あるしね」

「あ、はは……」

「それにしても、本当に大丈夫なの?」

「はい! そこは気にしていただかなくて大丈夫です!!」

「そっか……」

「「…………」」


 話 が つ づ か な い。


 うん。悲しいことに自分のコミュニケーション能力や協調性がないせいか、彼女との会話が続かない。

 なんでだろうなぁ。


「……レン」

「ん? なに、レミリアさん」


 小さく漏れた声に反応する。雑踏にかき消されずも、彼女が発した弱々しい声に。

 湿っぽい雰囲気になるとこの後大変だなと思いながら続きを待っていたところ、こちらに近づいてくる人影が見えた。


 段々と近づいてきたのでぼんやり眺めていると、レミリアさんも気付いたのか「どうしたんでしょうか」とつぶやいた。


「多分迷子だよ」


 右往左往しながら人混みを抜け出すためにこちらに向かってくるようだ。それを手助けするかのように、人混みはその子を避けて素通りする。

正に我関せず。いやまぁ、自分が楽しみたいのだから面倒事はゴメンという気持ちは理解できるし、僕もそうなんだけど。


 ただ……視線をあっちこっち移しながら向かってくるその子を見ていると、まだ存在している良心が訴えてくる。


 見過ごして良いのか、と。


「レミリアさん」

「何ですか?」

「ちょっと寄り道しようか」

「え?」


 戸惑う彼女を尻目に立ち上がった僕は、不安そうな表情を隠さずにいる彼にそのまま近づく。

 見た目小学生くらいのその子は、僕が近づいてきたことに気付いていないのかそれとも通り過ぎると思っているようなので、彼の前に立ち止まり、しゃがんで視線を同じ位置に持っていき、「迷子?」と話しかける。

 話しかけられた彼は驚いたようで目を見開いてから、小さくうなずく。


「そっか」


 確証が得られたので笑みを浮かべ彼の頭をなでながら「自分で探そうとしたのは偉いことだよ」と最初に褒め、「でもここまで人が多いんだから、まだそれは早かったね」と注意する。親じゃないけど。


「……はい」

「それじゃ、迷子センターに行こうか。そこに行けば君の両親も見つけやすいからね」

「! あ、ありがとうございます!」


 幼い声のわりに礼儀正しいその子に育ちの良さを見ながら、後ろにいるであろうレミリアさんに「はは、ごめんね。勝手に決めて」と謝っておく。

 その謝罪の言葉に彼女は「かまいませんよ、レン」と優しい言葉で返してきた。


 まぁ送り届けてから文句言われるかな。


 そう邪推しながら、彼の手を握ってホープに迷子センターの場所を聞いた。



 迷子センターの場所は昼食を食べたエリアにあるようなので、元来た道を引き返すことに。

 それにしても。広い遊園地に迷子センターが一つしかないというのはどうなんだろうか。地図とか座標見たらそれなりに施設が大きいことは分かるけど。

 疑問に支配されながらも歩いていると、「ありがとうございます、お兄さん。お姉さん」と彼が言葉を漏らした。


 考え事をその時点で切り上げることにした僕は、「大丈夫ですよ」とレミリアさんが返事をした後に「どういたしまして」と答える。実際はまだ道中だけど。

 それにしても落ち着きようといい言葉遣いといい、本当に育ちがいいんだろうなぁなんてその子の生い立ちを推測していると、レミリアさんが「でも、どうしてはぐれてしまったんですか?」と彼に話しかけた。


 彼は俯いてから「一緒に来ていたのですが、僕が足を止めたら両親が周りにいなかったんです」と答えてくれた。


「そうでしたか。すみません」

「構いません。この質問は想定できたので」


 おおっとものすごい大人な対応だ。ついつい自分の子供の頃を思い出す。

 ……うん。環境が違っているから比較しようにも、ね。

 でも彼以上に礼儀正しいことはなかった気がする。そう、思いをはせていると、気になったことがあるのか「あの、お兄さん、お姉さん」と彼が声をかけてきた。


「えっと、どうかしましたか?」

「ん? 親御さん見つけたの?」

「それはまだですけど……どうして僕の名前を聞かないのですか?」


 それに対し、悩むこともなく僕は普通に答えた。


「個人情報保護だよ。というより、迷子センターで探してくれるのだからここで訊く必要性ないし。僕達が探すわけじゃないのだから」

「…………なるほど。そういった考えだったんですか。勉強になります」


 僕の答えに納得した彼。それによりレミリアさんにも訊くことはないようで、そのまま口を閉じた。

 ここでシルフが話しかけてきた。


『数人、こちらをつけている人がいますが』

『……いいんじゃない? 襲ってくることがないなら』

『分かりました』


 ふ~む。ますます育ちの良さが際立ってきた。貸し切りにしない両親は特別ではないと思わせたいのだろうか。

 思考が飛躍しているのかもしれないけど、そこまで間違っていない気もする。自信はないけどね。

 そこから彼の両親が迷子センターで待っているかもしれないなーと考えていたところ、『着きましたよ!』とホープが声を上げたので我に返る。


 迷子センターの外観はお城だった。


 いや、確かにこの遊園地はいろいろ規模が大きいのは分かる。だけどなんでお城――しかもレンガ造りのものなんだろうか。見た目に拘り過ぎじゃないだろうか。

 ちょっとそこらを聞いてみたいなと思ったけど、誰に聞けばわかりやすい答えが返ってくるのだろうと疑問になり、その問題を解決する手段が少ない……と候補を浮かべながら中に入ることにした。



 城内――つまり迷子センターの中なんだけど、つくり自体はお城の内部のようなものではなくホールみたいに広い空間が広がりその中央に受付。それ以外の至る所に迷子になったであろう子供が燥いでスタッフのお世話になっていた。あとは子供を待っている大人の姿があるぐらい。

 年齢層を身長から考えるに小学生までだろうか。迷子になったという割には楽しそうに遊んだりしているのはスタッフの努力のおかげだろう。

 僕にはできないことかなと思いながら周りを見渡したところ、見慣れた人がベンチに座っていたのを目撃する。いやまぁ、見慣れた、というか知っている人と表現した方が的確なのかもしれないけど。


 とりあえず聞いてみることにした。


「ねぇ、君のご両親はここにいる?」


 六対四の割合で大人と子供が混在しているこの場所を見て、先回りしているかどうか確認してもらおうと思っての。

 彼は辺りを見渡してから視線をある方向に向ける。その行動のおかげで誰なのか見当がついた僕は「それじゃ、会いに行こうか」と彼を引っ張る形で視線を向けた方向――僕が知っている人へ向かうことに。


「君か……」

「偶然ですね。奇妙な縁もあったものです」

「ああそうだな……息子を連れてきてくれてありがとう」

「どういたしまして……あまり怒鳴らない方がいいと思いますよ。聡い様なので」

「……そうだな。痛み入る」


 そういって僕ではなく彼――自分のご子息に視線を向ける竣功さん。それに合わせて手を離すと、彼は竣功さんに向かって駆け寄り「ごめんなさいお父様」としがみつきながら謝っていた。


 それを黙って聞いている竣功さんを見ながら、親子の理想像ってこんなものかなと考えてから背を向けて施設の外へ出た。




「レ、レン!」

「どうしたのさ?」

「な、なんで何も言わないで出たのですか?」


 追いついてきたレミリアさんがそんな質問をしたので、僕は笑って答えた。


「だって目的は達成したから。お礼云々はあの場で言われても互いに困るだろうし、少しでもレミリアさんとの思い出を作りたいからね」


 ――そう答えたら彼女の表情は様々な変化をした。

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