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光は何処に

5日の午後六時ごろのアクセス数が軒並み可笑しなことになっていました。つながりにくい状況だったのか分かりませんが

 とりあえず家に帰ってから自室へ戻る。「ただいま」も言わないでゆっくりゆっくり階段を上る。


 そして自分の部屋に置いてある道具をリュックの中に入れてから静かに降りる。気付いてる様子はなさそうだ。

 行ってきますを言うとまた面倒な気がしたので、僕はそのまま家を出てある場所へ向かった。



 向かった場所は、今年の年始に大黒天と初めて会った、小学生の頃に見つけた森の奥に存在する小屋。

 神棚を作るという名目で、道具類を一旦避難させようと考えて。見つかった時に又何か言われるのが面倒だし。

 まぁ家で練習しているの見られるのが恥ずかしいというのもあるけど。それに、どうせここに飾るのだから手間が減るというのもある。


「まぁ大黒だしそこら辺許してくれるよね」


 到着して小屋の中に入った僕は中を確認する。相変わらず暗いのでライトを照らして。

 まず此処の照明どうにかしないと無理かなと判断した僕は、埃がどのくらい積もっているのかを確かめる。……うん。三ヶ月ぐらい経っているけど、そこまで汚れてるわけじゃない。大黒戻ってきて掃除してるのかな? だとしたら本当に続いてるようでなにより。


 今までのことを思い返しながら成長した姿に感慨深くうなずく。そして一旦外に出て持ってきた手帳とペンを取り出す。


「掃除道具はこれならそこまで大掛かりじゃなくてよさそうだね……箒と塵取りぐらいかな。それで相変わらず暗いから照明は必要で……天井に吊る形は厳しいかな。四隅だと不気味だし……電気通ってないしな……」


 状況を把握するために考えを呟きながら手帳にメモをする。そうすることで問題点とかアイディアとか書き留めることが出来るから、それなりに有効だ。こういう時は。


「神棚を飾るにしてもまずは光源がないと大まかな位置を決められないよね……そうなるとやっぱり中心で照らした方が間違いはないのだろうけど……」


 そこで僕はいったん手帳を閉じて小屋の中をライトで照らす。天井の方を。

 照らしてみて分かる。なんか小屋と屋根の中間あたりに一本の木材がある。それを交差するように何本もあるのを見ると、結構重要な部分だと考えられる。


「ここから吊るせば光源の確保はできる……かな。光量とかって完全に建築分野だよね。なんとなくで照らせるかな……」


 その前に光源となるものが必要なわけなんだけど。燃料とかを考えるなら何がいいんだろう……カンテラ?あれの光源ってなんだっけ。石油だから火?


 ……大黒に訊いてみよう。


 そう思った僕は携帯電話で大黒に連絡してみた。


『もしもし?』

「あ、大黒? ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ、小屋の照明ってどうしたらいいの? 暗くて敵わないんだけど」

『あ、そうか……そこ基本日差しがねぇんだったな』


 今更思い出したかのように呟いたので、「何となくここをこれからも使う可能性あるからさ、小屋の中に光が欲しいんだけど、カンテラとか勝手に取り付けていいの?」と無視して質問する。


『ん? う~む……それなら、あれだな』

「あれ?」

『まぁ、その問題なら明日解決してやるよ』

「そうなの?」

『ああ』


 明日、ね。

 とりあえず今日の作業は諦めた方が賢明だね。この状態じゃ測定も何もかもできないし。


「あ、とりあえず工具おいていくから」

『あ、そう。別にいいけど』

「じゃ、これで」


 電話を切る。そして時計を確認したところ、時刻は三時ごろを指していた。


 ……これ、大丈夫かな。姉さんが買い物行ってるかどうか怪しいんだけど。

 急に不安に襲われたので、とりあえず宣言した通りに道具を小屋の中においてリュックを背負いここを後にした。


 家に帰ったところ、姉さんの靴がない……どころか母さんの靴もない。

 ? 二人で買い物に行ったのだろうか? 不思議な組み合わせというと怒られそうだけど、父さんと母さんは基本セットで動いてる印象しかなかったので首を傾げてから部屋に戻り、リュックを片付けてからリビングへ。


 そこには父さん一人でゲームをしている姿が。


 なんか哀れというか悲愴というか。そんな雰囲気をまとわせながら一人ゲームをやっているので、「どうしたのさ?」と思わず質問する。

 するとゲームをポーズ画面にしたかと思ったら、僕の方を見て「連~~!!」と叫んだ。


「……どうしたのさ?」

「どうしたもこうしたもない! 一人で留守番してろと言われてゲームしてたうちに寂しくなったんだ!」

「……一人で留守番でゲームしかしてないって……洗濯物とか干しっぱなしだったことに気付かなかったの? それをやろうという思考にも至らなかったの?」

「……」


 外に干されたままの洗濯物を視界に入れないよう上手い具合に視線を僕から外す父さん。

 その技術に感服なんてできない僕は、すぐにできるなんて思ってないどころか一生できるかどうか怪しいとさえ考えているので「まぁいいよ。ゲームの続きでもやってたら?」と話を終わらせて洗濯物をたたむために外から持ってくる。


 というか姉さん、母さんに何を教えているんだろうか。今日の姉さんの行動に疑問を覚えたけど、教えたとして果たしてそれが続くかどうか疑わしいよねと思い直す。


 父さんはゲームをやろうとしない。ただ固まったままだ。いつも通りに接しているはずなのにどうしたのだろうか。ひょっとして今頃僕がどうしてこんな接し方になっているのかを理解したからなのだろうか。だとしたら本当に今更で、後の祭りもいいところじゃないだろうか。


 リビングの床に置いた洗濯物をたたむ。どれが誰かなんて十年近くもやってれば分かるから、たたみながら仕分けるのも簡単。多分、家事の中で一番簡単だと思う。難しい、というより面倒なのはもちろん掃除。


 料理はまぁのめり込んだ方だから苦ではないかな。偶にやりたくない気分に陥るけど。


 そんな感じで半分ほどたたんだ時に父さんが「て、手伝うぞ?」と遠慮がちに言ってきたので、手を止めて少し考えてから「じゃぁ自分の分だけやったら?」と言って畳んでいない父さんの服を放り投げる。

 慌ててキャッチした父さんが「で? どうやって畳んだらいいんだ?」と訊いてきたので「Tシャツとかなら袖口を裏に折りたたんでからそれを隠すように下側をたたむ。ズボンはチャックの部分を中心に二つ折りにして腰の部分に一番下側を合わせてた畳み、それをさらに半分にする。それだけ」と教えておく。


「……そうか。そういえばそうだったな……」


 感慨深そうにつぶやきながら自分の洗濯物をたたみ始める父さん。その頃にはすでに僕は終わっており、畳んだ洗濯物をもとの場所に戻すために持ち上げてリビングを出た。


 ……そういえば午前中にひどく疲れたのにその疲れが残ってる感じしないけど……大黒のストラップとかが効いてるのかな?


 よくやってる胡散臭い商品販売のそれじゃないのは当たり前なんだけど、効果が健康促進以外にないのが悲しいよなぁと説明されたご利益のほとんどをないものとして考えながら、作業を終わらせた。


 すぐに終わったので下に降りたら、父さんが悪戦苦闘していた。


 助ける気もないのでキッチンへ向かい、コーヒーを入れるためにやかんでお湯を沸かす。別に電気ポットでもいいんだけど、まぁそれなりに熱いのを淹れたいから。


 沸騰する前にカップの中にインスタントコーヒーの粉末を入れる。そしてその中に少量の水を入れてかき混ぜ、沸騰するまで待つ。


 それからすぐに沸騰したので火を止めて少し冷めるのを待つ。父さんが「出来た!」とはしゃいでるのを無視して。


 冷蔵庫の中を確認。材料自体は、まぁ今日の夕食分は残っているぐらい。お昼どうしたのかどうでもいいけど。


 飲み物の賞味期限や消費期限も確認してからやかんを少し触り、このぐらいの熱さなら問題なさそうだなと判断してカップに注ぐ。


 とりあえず香りをかいでから、僕は自分の席に座ってコーヒーを飲む。


 そんな時だ。


 僕の携帯が鳴ったのは。


「…………」


 時刻は午後四時ごろ。父さんは畳んだ洗濯物をほったらかしにゲームを再開した。分かっていたのでどうでもいい。


 で、着信相手がエリーテルさんだった。


「もしもし?」


 カップを置いて電話に出る。すると向こうはとても慌てた様子でまくし立ててきた。


『ああ連君! 申し訳ないんだが、病院から連絡があった。レミリアが脱走したらしい!! すまないが、探してもらえないだろうか!』

「………………」


 向こうが焦っているというのに、僕は変わらないままだった。


 真っ先に思い浮かんだのは『僕が行くと一層ひどくなるのですが』だったけど、エリーテルさんに対して言う言葉ではない。

 ただ、冷静な反応とは裏腹に心臓の鼓動は早くなって汗がにじんできたと錯覚し始めた。


 少し逡巡したけれど、「分かりました。探して病院へ連れ戻しておきます。それでは」と電話を切ってから、聞いてるかどうかも分からない父さんに「夕飯要らない! あと、出かけてくるからよろしく!!」と言って自室に戻って財布と鍵を持って家を飛び出す。


 まずは事情を……と病院へ行こうと思ったけど、それより探した方が早いと思った僕は、人探しに適任の圭に病院へ向かいながら電話をかけた。



「あ、圭? レミリアさんどこにいるか見つけたら情報送って」



 ――ああ、柄じゃない気がするんだけどなぁ、こういうの。

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