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運命

 ……運命はあるのだろうか。


 偶にそんなことを考える時はある。


 普段から何気なく過ごしているこの日常が、非日常へ一気に変わること自体に『運命』という言葉を使うなら、この世界がこうなったのも『運命』なのだろうか。


「便利な言葉だね、運命って」

「……どうした連。いきなり哲学っぽい話題なんか」

「感傷に浸りたい時ってあるよね。そうするとさ、目に見えないけど言葉が存在するのって結構不思議に思えてくるんだよ。本当に存在するのかなって」

「……なるほどなぁ。そんなこと全然考えたことなかった」

「だろうね」


 帰ってきた次の日。両親姉さんともども三日ほど自宅待機命令が出された。とのことなので、家にいる。で、相変わらず謝罪と行動が伴わないぐらいにだらけている。だから諦めているんだけど。


 というか、両親は流石に料理すらできなくなったというのは人として駄目なんじゃないだろうか。「ほらあれだ。仕事の相性が良すぎて全部持ってかれたんだ」とか言い訳にもなりゃしないと思うんだけど。姉さんも自分の荷物片づけ出来てないし。


 姉さんのついでにレミリアさんの荷物も整理しておいたから、これで彼女がどう選択した時でも対処できるね。……そのまま家に寄り付かない可能性があるんだけど。


 まぁそれはともかく。

 僕の生活リズムは崩れないので、いつも通りに起きていつも通りに洗濯機を回し、朝食を作る。食べ終えてから洗濯物を干す。この繰り返し。


 三つ子の魂百までというけど、まさしくこの状況なんじゃないだろうか。


 で、起きるのは姉さん、両親の順。これも変わらない。

 ただ、姉さんが挨拶してくるたびに弱々しいのでトラウマでも出来たんだろうかとぼんやり思う。


 で、今は全員家の中にいる状況。僕自身は学校がない間でも勉強をしている。なんかあの状況でやっていたからか、精神安定の所作になりつつある。正直困る。


 で、それも終えてぼんやりと考えいるところだった。会話は聞いていた父さんがしている。

 母さんは姉さんから家計簿のつけ方を教わっているのだろう。教えても無駄だと思うけどね。


 僕は父さんに訊いた。


「ねぇ父さん。母さんとの出会いは『運命』だと思ってる?」

「そうだなぁ……ああ。そう思ってるよ。何せ互いに仕事に特化しているからな。はっはっはっ」

「だろうね。絶対母さん以外なら即離婚されてるよ。というかそのまま結婚したいと思わないし」

「手厳しいなぁ」

「爺ちゃんたちじゃないだけましだと思うけど」

「ああそうだな」


 食い気味に肯定した。しかも顔が引きつっている。

 共感はできるけど、結局のところ自業自得なので「今回の件知ったらどうなるんだろうね?」と軽く切り込む。


 すると、話を聞いてないだろうに姉さん達までもが肩を震わせ始めた。父さんなんて血の気が引いて「やばいやばいやばいやばい……」なんて呟いてるし。

 まぁあの人たちも若干育て方間違えたからこの両親が生まれたのだろうけど。三人がトラウマでも抉られたのか勝手に怯え始めた中、僕はそんな判断をして時計を見る。


「ああごめん。僕とりあえず出かける用事あるから。昼までに戻ってこなかったら勝手に調理して食べていいから。僕の分はいらない」

「「「…………」」」


 反応が返ってこなかったので、僕はため息をついて自室へ戻り、ある荷物を持って家を出た。



 空は曇り空。生憎だが、僕としては晴れやかよりは好ましい。洗濯物乾きにくいけど。


「まずはこれ持っていくか~」


 背中に背負ったリュックが重いけど、根性でヒーヒー言いながら貰った店まで歩く。もはや筋トレの一環と同義で、いつもより三倍近く時間がかかったのだから周りからしたら『そんなに重い荷物背負っているのか?』と首を傾げるだろう。実際重いんだけど。


 ……これやってたら、庄一に近づけるかな……。なんて思えるぐらいには。


 で、三倍近い時間をかけて店の前に到着。そして僕は何とか扉を開けて中に入る。

 や、やばい。妙な達成感が沸き上がってる。今日の本題これじゃないのに。まだまだやることあるというのに。


 とりあえず気力でレジまで向かう。そしてレジへリュックを下ろす。その結果、その人は驚いた。


「うおっ。先日の坊主か。いきなり物を置くなよ……どうしたんだ?」

「あの、先日……段ボール送ってもらったんですが……」

「どうした? やっぱり返却か?」

「えっと……待ってください」

「お、おう」


 僕は膝に手を付けてしばらく息を整え気力が戻ってきたので顔を上げて彼に話しかけた。


「あの、流石に段ボールの中身全部は多すぎるので、中身整理してワンセットだけいただきます。残りを返しに来ました」


 そう言ってリュックを開けて残りの工具を取り出していく。

 分けていたら丁度ワンセット同名で出来たのでそれだけ除いてきて持って来たもの。本当は郵送したかったんだけど、住所憶えてなかったし紙捨てちゃったしで後の祭り。だからこうして持ってくるほかなかった。店が無くなってたら絶望しかなかったけど。


 彼はそれらの道具を見て「あ、ああ。確かにそうだったな。悪い」と言ってから段ボールを持って来たと思ったらまた一か所にまとめ始めた。

 言ってることとやってる事違うんだけど……と思いながらすべて取り出し終えた僕は、「今回はこれだけです」と言って軽くなったリュックを背負う。


 ……空気かなんかって感じになるんだけどこれ。違和感凄い。


「わざわざすまないな、坊主」

「いえ。お気になさらず」


 違和感に思考が割かれているので適当に返事をすると、「買うならまけてやるよ」と言われたので思考が一つの方向へ向かう。


「じゃぁビス? 螺子? 釘? あれ、ビスって何と同じなんでしたっけ?」

「螺子だな」

「じゃぁ螺子と釘買っていきます。何本入りですか?」

「どっちも板の厚さとかで大きさ変わるんだが……どのくらいのがいいんだ?」

「え? えっと……そこら辺まだわからないんで」

「だよな……じゃぁ適当に種類と本数揃えておくぞ」


 そう言って彼は釘箱と書かれた工具箱を取り出して小さく短いものから太く長いものまでの四種類ぐらいをそれぞれ十本ぐらい、同じく螺子箱から長さが違う螺子をそれぞれ十本ずつぐらい選んでくれた。


「一緒に混ぜると面倒だから個別に包装するぞ」


 そう言って同じグループで包装してくれたので、「ありがとうございます」と言ってお金を払った。


「にしても、一体誰だったんだ? 全部揃っていたの」

「えっと、澤城レガルタって人でしたね」

「……ほぅ。なんというか、そいつは運命を感じるな」

「え」


 ついさっきそのことを考えていたので僕は驚く。だけど彼はそれに気付いてないのか説明してくれた。


「その人はもともと別な仕事をやっていた傍らだったらしいんだが、次第にこっちの方に熱が入るようになったからか、仕事辞めて大工の道に進んで今では超有名なデザイナーになったんだ」

「え、そんな人だったんですか!?」

「そうそう。お前さんも別な何かをやりながらやろうとしてるんだろ? だったら同じ道をたどるかもしれねぇ。ってことで運命みたいだなって思ったんだよ」

「はぁ~~そうなんですか」


 ちょっと後で調べてみようかな。これが本名だったらアウトだけど。

 なんとなく興味が沸いてきたので「ありがとうございます」と言ってから「また来ます」と言っておく。


 応。という言葉を背に、僕は店を出た。



「まさか貰った道具を使っていた人がこんな偉い人だったなんて……」


 現在お昼。空腹が耐えられなかったので現在コンビニでパンを買って公園で食べている途中。その時にちょっと端末で調べていた。ら、あっさりとヒットしたので略歴を覗いてみたら専門店の人の言葉通り、凄い人だった。自分でも思わず焦るぐらい。


 ま、まぁ偽物の可能性あるから何とも言えないけどね。そう言い訳して凄いものという認識をなくすことにして、パンを食べ終える。


 足や腕を伸ばす。周りに誰もいないのでできる行動だけど。


 さって、いよいよ道具あそこに置いてこなきゃなぁと思いながら疲れのせいか欠伸が出る。


 さっきのは重労働だったからなぁとぼんやり思った僕は、いったん家に帰ってからにしようと思い帰ることにした。

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