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この王子様は王様に向いていそう

翌日、俺は朝食を済ませるとステラを連れてスラム街に来ていた。


「なぜこのような場所に?」

「ちょっと、確認のためにね」


ここに来たのは治療した少女イリアの容態を確かめるためだ。一応、治療したのだが容態が気になったので。


道を進み、アリアたちの住処に着いた。確認してみるとなかでイリアの容態が安定したのが確認できたので城に帰ろうとする、だがそこに面白い人物を見かけた。


その人物は黒いローブで顔を隠している。その後ろには同じような格好をした人物が二人いて最初の人物を護衛している。


俺はローブの内一人の魂を見たことがあるのだ、あのパーティーで。


(にしてもどうするかな~こっそり付いていっても、ステラがたぶん無理だよな~)


一応確認する。


「ステラ、尾行とか得意か?」

「訓練はしましたが得意ではありませんね」


訓練したんだ・・


「だよなしかたない、ちょっとごめんよ」

「なっ!」


ステラの腰に腕を回して体を寄せる。ステラは突然の行動に驚いているがそれを無視して魔法を使う。


ここで使ったものは闇魔法『影潜み(シャドウラーク)』だ。


これは魔素で一時的な小動物を作り、その影に異空間を作ってその中に潜む。それも異空間に入っている人物と小動物の視覚と聴覚をつなぎ外を見ることができる。ただ小動物は発動者にしか動かすことができないが。


他にも光魔術『透明化(インビジブル)』も手段にあったが、これは物質を通り抜けることができないのでこちらはやめた。


さて小動物、今回は鼠を作り、俺らはその影の中に潜んだ。これでローブの後を付いていく。


ローブたちの後ろを付いていくとスラムの一角にある建物に入っていった。


扉の隙間や壁の穴などを通り、ローブを追いかけた。


建物の一室で黒ローブは裏組織の幹部と思われる人物と話をしている。少し遠くて声が聞こえないので近づいてみる。


そして聞こえてくるのは。


「まだわからんのか!」

「グラン王子の件は確実に何者かが裏に居ることは判明してます、ですがそれ以上のことは・・」

「それを探すのがお前たちのやることだろ!」

「皇太子殿下、我々『闇夜の梟』も全力で捜索しています。ですからもうしばらくお待ちを」

「っ」


そこにいたのはライル王子だ。


(ん?どいうことだ?ライル王子はグランが海賊につかまったのが裏があることを把握している。そして背後に居るのを探している?なぜ?保身のためか?)


「このままでは確実に内乱になる。もしそれを回避できたとしても必ず国が疲弊する」

「殿下・・・」

「我々、王族が継承権争いするのは仕方ない、王族というのは古くからそういうものだ。だがそれは宮廷内だけでとどめておくべきだ。それに今回の一件で我々の溝がさらに深くなった。これで内戦が始まる可能性が高まってしまった」


(そうだよな、あのこと(・・・・)をしらないと確実に内戦になると思うよ)


「そうなると被害を被るのは民だ!」


(・・・・・)


「我々は民によって存在を許されている。我らの愚策で民に不満があり我々を処刑するなら甘んじて受けよう。だが今回の継承権争いは何者かの介入がある。国を乱す奴が、だから一刻も早くそいつを突き止める必要がある!」


(皇太子であるライル殿下は何事もなければ王になる、よって何事もないほうが都合がいいわけだが)


「民を第一にお考えになっているライル殿下が争いを好まないことはわかっています。ですがこの一件には我々も慎重にならざるを得ないのです」

「わかっている、だが早急に見つけてくれ」


そういってライル殿下は帰っていった。


帰る時にライルはどんな人物なのかステラに尋ねる。


『ライル殿下は幼少の頃からとても優しく民のことを考える王子です。いくつもの孤児院や職場を用意しスラムをなくそうと努力しています。それゆえに民からの評判はとてもいいのです』


ということらしい、ライルが王座に付けばさぞ優しき王になると思う。


スラム街から出るとちょうど昼過ぎになったので適当に昼飯を食べる。するとふと気になったことを聞いてみた。


「ここら辺にギルドはないのか?」


こっちに来て異世界を代表するギルドをまだ見たことが無いのだ。すると返答は


「ギルドとは何でしょうか?」


という疑問で返された。それからある程度の概要を教えてみても、そういった組織はないそうだ。


(ふ~む、ギルドを作ってみるのも一興かもな)


俺らは城に戻って、ここ数日やっている訓練を行う、三人娘も一緒にだ。


「にしても」


俺は三人の攻撃をよそ見しながら対処している。周りでは騎士たちが自主訓練をしているペアを組んで一対一をするものもいれば何人かで組を作り訓練するもの、何かの流派の型を練習しているもの、ただひたすらに素振りをしているもの、さまざまだ、っと。


「何で今のを回避できるのよ!」


クレアの全力の一撃を受けて、体制が崩れると死角からステラの奇襲を無理やり体をずらし回避する。そこに回避不能と思われる五本の矢が迫ってくるのを俺は無理やり間接をはずし腕足を魔力で強制的に操作し回避する。


「うん、三人とも連携がうまくなってきたね」

「さ、っき、の攻、撃を、簡単、にかわ、してよ、くいえますね」


ちなみに俺も防御だけではなく攻撃している、無論手加減しているし身体能力も魔術で抑制している。



「はぁ!」


「たぁ!」


「やぁ!」


三人はかなり連携がよくなってきた。クレアが囮になりティアとステラが奇襲してきたり、矢でけん制しながらステラが真っ向から攻撃してきたり、ときには即席の連携をとってきたりだ。


だが結果はどうやったって変わらない。いつもどおり最後は三人とも女性とは思えない格好で横になっている、その後はそれぞれご飯まで自由にすごすのだが今日は違った。


ぱちぱちぱち


「いや~、さすが海賊団を壊滅させるだけのことはあるね」


声を掛けてきたのは第三王子ニコル・ザラ・ヘクメスだ。


ニコル王子は訓練用の服を着て脇に木剣を挟み拍手しながらこちらに来る。


「こんにちはニコル殿下、私めに何か御用でしょうか」


一応形式ばった挨拶をしとく。


「兄上みたい敬語じゃなくていいよ、正直一切敬っていない人から敬語で話されても気色悪いだけだから」

「敬ってないわけではないが、ならこっちでしゃべらせてもらう」

「いいよいいよ、それで何でここにきたかだったかな」


いいんだ正直もう少しなんか反応があると思ったんだがな。


「少し暇になったから久しぶりに動こうと思って。だけど来たら君たちが居てね少し見ていたんだよ」

「そうなんだ」

「そうそう、それとすこし模擬戦してほしくてね」

「殿下!」

「大丈夫だって、それに・・・僕に口出しするのか」

「っ!」


わぉ、この王子様は強引だな。


「それじゃあはじめるか、それとお前も断りはしないだろう」

「手加減とかは?」

「アハハしないでね、したら僕の持っている権限でお前を貶めるから」

「了解、負けても怨むなよ」


それから周りが気を使ったのか周りに空間ができた。


「じゃあはじめようっ」


しかも開始はいきなりだ、ニコルは自分で開始して切りかかってくる。しかもステラとは比べ物にならないくらい鋭い一撃だ。


まぁ、それも紙一重で交わす。


「やる~、ほとんどの奴はこれで一撃いれられるのにな」

「不意打ちくらい対処しないと、腕利きとはいえないからね」

「たしかに!」


それからしばらく打ち合う。


内容はステラたちとの訓練が可愛く見えるくらい激しいものだったが、ニコルは余裕でついてきた。


「やるな~、俺に互角に渡り合えるのは王宮内でも数えるほどしかいないんだがな」


たしかにな、俺がこの大陸に来てから見た中では1番強い。王子をやってるのがもったいないくらいである。


思考しつつもニコルの剣を捌いていく。ニコルの攻撃は一言で言うと計算されつくしてるのだ、決して隙を見せるような攻撃はせず、もし隙ができてもカウンターできるように誘っているのがほとんどだ。


それでも隙が一切ないわけではないが、正直やりにくい。ステータスに制限を掛けてなければ力押しでどうとでもなるんだがいまのステータスではできる攻撃は限られる。


数分の間、カァンカァンといった音が絶え間なく鳴り響いていた。


一見本気で戦っているように見えるが、両方一切汗をかいてないことから本気でないことがわかる。すると両方が最初の立ち位置に何事もなかったような状態になった。


「すごいすごい、ここまで打ち合うのは数年ぶりだよ!」

「お褒めに預かり光栄です」

「じゃあ、今から出す技にも耐えてくれよ」


そういってニコル王子は剣を指でなぞる、すると木剣にいくつもの丸い魔術式が浮かび上がる。


ニコル王子がその行為をすると周りが騒然となった。


「王子があの技を」

「ですがあれはいままで誰かに向けられたことはなかったはずでは」

「殿下が使うと勝負がつまらなくなるといってたあれですか」


(あの術式は『斬撃強化』と『威力上昇』、『雷刃』それと・・・・体にある方は『身体強化』かな)


魔術式は剣の表面に見えてるものだけでなく、見た限りわからないが服の中にももう一つあるのだ。


(さすがにあれを防ぐのは、このステータスじゃあ無理かな)


てことで少しだけ制限を緩和するさっきまで全項目を100にしてたが、一部を200まで緩める。


両方とも準備が終わった。


「行くぞ剣技『剣雷の迅』」


まず動いたのはニコル王子の方だった、プロが投げる野球ボール並みの速さで間合いに入り上段から斬りかかってくる。


(『雷刃』がなければ簡単に対処できるんだけどな。あれは防いでもダメだ、よけようにもある程度空間を取らないと雷が襲ってくるし・・・・・そっちが魔術使うならこっちも使っていいよな)


そう判断した瞬間、手を前方にかざし魔術式を作る。サイズは向こうが使ってるのよりも2回りも小さいが効率だけで言うと何倍もよくなってる。


そして効果のほうだが眼には眼をってことで『雷纏』をつかう、これは雷系の攻撃をすべて吸収し自身が纏う。さらに纏った雷を接近攻撃をしてきた対象に放電してカウンターをするのだ。


この魔術を発動させて剣の軌道を逸らすように剣を当てる。


すると閃光と共に何かが折れる音がして両者とも動きが止まった。


「これで終わりですよニコル殿下」

「そのようだな」


ニコル殿下の首下には折れた木剣が添えられている。


「何が起こったんだ、誰かわかるか?」

「テオドール殿が何かしらの魔術を行使したのはわかったのですが」

「それはわかっている、その後だ」


周りがまた騒然となった。


結論はこうだ、ニコル殿下の上段からの木剣をうまく逸らし、かつ木剣がいい感じに折れるように受け止める。それで少しそれた剣をかわし折れた断面をニコルの首に添えるだけだ。


「ふ~、久しぶりにいい運動ができたよ、ありがとね」

「いえ、こちらこそいい運動になりましたよ」


俺とニコルの模擬戦はこれにて終了した。






「「「・・・・・・」」」


自室に戻る間さっきから三人の視線がうっとうしい。


「なんだよ、いいたいことがるなら言ってくれよ」


三人は相談するように視線を合わせた。するとステラが


「テオドール様はどこかの国の王族ですか?」

「は?」


このときは本当に困惑した。理由を効いてみるとどうやら俺の使った魔術が原因のようだ、今使われている魔術はすべて国が管理していて使える魔術も限られている。今回使った見たことない魔術『雷纏』は一般に出回ってないことから秘伝魔術だと勘違いされたみたいだ。


ちなみに秘伝魔術を持つのはいくつかの一族のみ(それもほぼ全部が高い地位に居る)しか持ってないみたいだ。


このことから俺はどこかの滅亡した国の王族かもしれないという思考に至ったみたいだ。


「ないない、これも師匠から教わったし」

「そうなのですか」

「嘘よ!」


え?


「秘伝魔術はよほどの理由がない限り門外不出なのよ、それを弟子だからって教えるわけないじゃない!」


ああ~


「そうなのか?」

「何であんたが知らないのよ!」


記憶から秘術について調べてみるといろいろ理解した。


まず秘術は先祖代々伝わる一族を護るために作られた魔術のことだ。これは戦闘用だけとは限らない、例えば過去に聖女と呼ばれた女性は治癒魔術を作り、これを子供に継承していった。その子孫は現在とある国の公爵家として『癒しの一族』として知られている。


このように秘術を持っているのは王族など特殊な一族だけなのだ。これにより俺はやんごとなき一族の血筋だと思われたみたいだ。


「いろいろあったのさ」

「そんな言葉で納得すると思う?」

「ティア~、一応ここは納得しておきましょう」


クレアのとりなしでティアは疑問を残しつつも引き下がってくれた。


その後、自室でゴロゴロしていると来客が訪れた、それもなんとライル王子だった。


「すまぬな、急に押しかけて」

「いえ殿下の頼みとあらば断ることなどできませんよ」

「そうか、本題に入ろう。今夜、晩餐会があるのだが貴様にも参加してもらいたい」

「なぜ私を?」

「できれば貴様と縁をつないでおきたいという者が多くてな、それで招待しに来たわけだ」


なぜ今になってなんだ?縁をつなぐなら最初の立食パーティーでもよかったと思うが。


「はぁ、気づいていないみたいだな・・・ニコルはああ見えても近衛騎士団に入ったら騎士団長確実といわれているくらいの強さを持っているのだぞ。わが王族に伝わる奥義を覚えられたのはニコルだけだったからな。それを模擬戦とはいえ勝ったんだ優秀な人材を欲しがっている奴らからしたら縁を繋ぎたいだろうからな」

「なるほど」


めんどくさいな、本来ある程度協力して旅費を手に入れたらこの国を去ろうとしてるんだが。


(・・・・・・・・・・・あああ!本当にめんどくさい!もういい!この問題さっさと終わらせて次の国に行こう!)


「ライル殿下」

「なんだ」

「ここから先私に質問に答えてください」

「それは質問の内容による」


ここで押し問答する積もり無いので。


「私は一つでも答えられない質問があるなら即刻この国を出ます」

「なっ!」


もうこいつの本心を聞いてさっさとこの国の問題を終わらせよう、有無を言わせずに威圧する。


「まず一つ目、ライル殿下はグランを攫うように仕向けましたか?」

「そんなことしていない!」


魂を見ると嘘はついてない。【魂読】により感情や状態、嘘の判別などができる。


「では次に貴方はこの後継者争いを即刻終わらせたいですか?」

「それは当然だ」

「それはあなたが王にならなくてもですか?」

「それは・・・」


この問いにはすぐには答えなかった。それも当然だ彼は順当に行けば王座に付くのだから、でもこの問いには意味がある。


「答えてください」

「・・・・私は王となるべく育てられた、だがそれ以前に民のためにある王族だ、民に危害が及ぶようなら私は自分を犠牲にしてもいいと思っている」

「そうですか」


この答えで決まった。


「ライル殿下、私はこの後継者争いを終わらせる手段を持っています」

「なに!本当か!」

「ええ、ですがそのためには貴方の協力が必要が必要になる」

「・・・その手段は民を傷つけたりはしないな?」

「モチロンです、ただその手段を取れる時間は限られています」

「なら決まりだ協力しようその手段とは?」

「簡単です王様の病を治せばいいのです」


事実これは簡単だ。一度レグルスと会ったときに何の病気にかかっているか調べたからな。


「誰も治せないといわれた病気だぞ、なぜ貴様が直す方法を知っているのだ」

「私のことを詮索するのはやめてもらいましょうか。ですが唯一つだけ私は王様の知り合いの弟子ということだけは明らかにしておきましょう」


それを聞きライル殿下は疑った眼をしているが彼はこの問題を解決するすべを持たないため俺に頼るしかないのだ。うつむいた顔を上げてこちらを見る。


「頼む、この国の未来のためこの問題を解決してくれ」


俺は威圧を緩める。


「了解です殿下、それとお前たち」


俺は後ろで固まっている三人に声を掛けた。


強制命令(オーダー)、三人ともこの場で聞いたことを誰にも伝えるな」


一応命令で縛っておく、それでライルに向かい合うと。


「それじゃあ俺が知っているこの国の出来事を教えるぞ」

「ああ」

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