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男は誰だってイケメンになりたいよね

(いや~あのときの青年が王様になっているなんてな~)


翌日、朝食の最中にグランがやってきた。


「今日の夜、パーティーがあるから来てね」


部屋に入って来るや否や、やたらいい笑顔で言う。


「おい『来てね』じゃねえよ」

「む、いやかい?」

「いやだよ、政治のドロドロした部分に巻き込まれてたまるか」


いちいち相手の顔をうかがいながら食事するなんて苦痛でしかないだろ。


「今回はダンスはなく立食パーティーだけだからそうゆうのはないはずだよ」

「それがなくともだ、しかも服とかはどうするよ」

「それなら大丈夫、この後採寸すれば夜までには間に合うはずだから」


もうすでに連絡を入れて準備をしているようだ。


「はぁ~、俺はずっと食べ続けるからな」

「それでいいよ」

「ちなみに、ステラたちは?」

「さすがに奴隷をつれていくのは無理だね。そういう趣旨のパーティーじゃないと」

「言い方は悪いが奴隷品評会みたいなものか?」

「まぁそうだね、正直やめさせられるならやめさせたいけど、無理だろうね」

「一応なぜか聞いてもいいか」

「理由は二つあってね、一つは腐った貴族が貴族は平民の上に立つものだからって主張しているんだ。これはあながち間違ってないから強くは出れないんだ、そして二つ目なのだが・・・・・・」

「なのだが?」

「そうだな・・・貴族が皆、顔がいいと思うかい?」


あ~、その言い方で大体察したは。


「顔に自信がないものが美しい奴隷を侍らせているんだよ。貴族同士での婚姻は冷たい部分があるからね、奴隷に癒してもらおうって事さ。しかもそういうのに限って奴隷の待遇が信じられないくらいよかったりするから・・・・」

「・・・・」

「まぁそういうわけで奴隷は部屋においといてもらいたい」

「了解」


その後、俺はグランに連れられ王家御用達の服屋で採寸された。どのような色がいいのかたずねられたので薄緑色を選んどいた。それからも嫌いな装飾、今流行の装飾とか聞かれて一通り答える。


「うんうん」

「どうした?」

「君がパーティーに出ると貴族の令嬢とかが群がってきそうだな~って」


確かにこの体作ったときは、いろいろ完成してテンションが高くなっていたからな。それ故に出来心でかなりイケメンに仕上げたんだった。だから、顔をほめられてもズルした気分になってあんまりいい気がしない。


「そうか、グランもモテそうだぞ・・・・・・・・男女から」


グランは中性的な顔立ちをしていて、女性の服装をしたら男よりの女性で通せるくらいだ。


「・・・・・君って人が気にしていることをはっきり言うよね」


あっまずった、グランの顔が笑っているのにどうやって仕返しをしようかって顔に書いてある。こういうときは話題を変えるのがベターだ。


「あ~あ~、そういえばグランに婚約者とかいるの?」

「・・・・はぁ~、一応いるよとある公爵家の女性だ」

「へ~、どんな女性なんだ?」

「名前はヘレナ。ヘレナとは幼馴染だ、小さい頃はいつもよく遊んでいて、綺麗で可愛くて私が落ち込んでたらいつも慰めてくれる。私にとって何者にも変えがたい存在だ」


あっこいつ、その女性にべた惚れしているな。なんでヤンデレ化してないのか不思議なくらいに


「そ、そうか、大事にしろよ」

「わかっているさ」


服屋での採寸が終わり、俺はグランと別れて都市まわる。


数時間後~


(うん、迷った)


最初は大通りにいて店などを回っていたのだが、少し経つと店が少なくなり、徐々に道が暗く狭くなり最後には迷った。


(まぁ、少し開けた場所に出れば城が見えるから帰れるけどな)


この王都は開けた場所ならどこからでも城が見えることで有名だ。帰れなくなるってことはまずない。


(しかし、ここらへんはひどいなスラム街ってやつなのか?)


少し細い道を見てみると小さい子供や横になっている老人、ガラの悪い大人などがいる。


そのうちの一つを進むと後を付けられているのがわかった。


(誰だろ?誘ってみるか)


俺は翠風を使って、近くにある行き止まりの道を探してその道に進んだ。


少しすると路地裏でぽっかり空間できているところについた。


(出てくるかな?)


そのまま立ち止まっていると後ろから近づいて来るのを感じた。そのままの体勢でいると刃物で背中を刺され、衝撃のまま倒れる。


「はぁ、はぁ、はぁ」


後ろから息切れしている音が聞こえる。


「これでイリアを・・・!」


俺が立ち上がり、その顔を見ると「なんで生きているの!」と表情に出てた。


「不思議か?」

「・・・何で死んでないの」

「う~ん、こんなもんじゃ何百回やっても無駄だよ」


背中に短剣は刺さっておらず立ち上がるとそのまま落ちていく。見たところ短剣は錆びところどころ刃こぼれしている。


「お願い・・・・見逃して」


俺が視線を戻すと子供は少しずつ下がっていった。


(う~ん、こいつここらに住んでいるのか?住んでいるのなら何か知っているかな)


「おい、って」


声を掛けた瞬間、ガキは一目散に逃げようとした。それを逃さないようにすばやく襟の部分を掴む。結果、子猫を持ち上げるような状態になった。


「はなして!」


持ち上げられた状態でジタバタと暴れる。


「ちょいと聞くがお前はここら辺には詳しいか?」

「・・・・少ししか知らない」

「なら、その少しを話せそうすればさっきのことはなかったことにしてやる」

「ほんと?」

「ああ」


だがこの子は少し考えるような顔をして、勢いよく顔を上げた。


「・・・・・さっきのことはなかったことにしなくていい、それよりイリアを助けて、お願い!」

(どうすっかな、まぁよほどの状態じゃなければ助ければいいか)

「いいぞ、それでイリアってのはどこにいるんだ?」

「ほん・・・とう・・・ほんとうに助けてくれるの?」

「いいぞ、変わりにここら辺で知っていることをある程度教えろ」


その後、子供(後にアリアと判明)に連れられ家(木に布を被せている程度)に案内された。中にはボロ布の中に入っている五歳くらいの子供がいた。顔が赤く汗の量が尋常ではない。


「このこがいもうとのイリアだよ。ふつかまえからかおがあかくなって、あせがすごいの。きのうはごはんもたべられなくて、どんどんわるくなっていくの」


早口でしゃべっているせいか少し発音がおかしくなっている。そんな少女アリアを無視して、イリアの額に手を当てて調べる。魔法を使い体内がどうなっているか調べた結果とある病原菌が原因なのがわかった


「入り口閉めてくれないか」

「うん、わかった」


さてそれじゃはじめるか。


まず、原因からいうと細菌だな、バクテリアとも言う。この細菌は死んだ細胞を食べ、その際食べた細胞の中にある魔素を使い膨大の熱を引き起こし宿主を殺し、さらにその捕食者をも殺す、というパンデミックばりの細菌だ。


ちなみに原因が解れば治療は簡単だ。あくまでその細菌が潜んでいるのは胃や腸の中であるので下剤を使ってやればいい。もし熱が発生している場合は魔法や魔術を使わせて体内にある魔素を減らしてやればいいだけだ、もし無理なら治療するまでの間に魔法陣や魔術式の供給源にすれば解決する。


よってまずは家の中に魔術式を描く。そしてイリアを魔力の供給源に設定する。魔術式の内容は部屋を明るくする『ライト』の魔術だ、しかも効率は悪くしてあるので通常よりも大量に魔力を食う。


魔術が発動すると姉のほうがわめいてうるさい。その後、一応手持ちの素材を使って下剤を作り飲ませ安静にさせる。


「ねえ、イリアはだいじょうぶなの?」

「ああ、もう大丈夫だ明日にはよくなると思うよ。それより今日下痢がくるはずだから面倒見てやれよ」

「うん!」

「それじゃあここら辺のことを少し教えてくれないか」

「うん」


それからの話(要領を得ない話もあったが)である程度わかった。


これから家を出て話に出てきたこのあたりを仕切っている怖いおじさんに会いに行こうと思う。


さっきの場所よりさらに奥に入っていくと入り口にガラの悪いのが数人で護っている場所に着いた。だがそろそろ日も落ちるので今日は此処までにした。


城に着くとメイドに連れられて一室で今朝作られた服に着替えさせられた。そしてグランのいる一室に案内された。


「いいじゃん、似合ってるね」

「それは婚約者にでもいってやれよ」

「いつも言ってるさ」

「あっ、そうなの」


俺がグランの傍にいる騎士に視線を移すとそっと逸らされた。どうやらグランの相手への熱愛っぷりは有名みたいだ。


「殿下、皆様が到着させました」

「わかった、それでは行くか」


その後、パーティー会場に連れてかれた。会場内には数十人の貴族と思われる人物が集まっている。


「それではパーティーを始めようか」


グランの声でパーティーが始まった。


まず侯爵や伯爵など位の高い貴族がグランに挨拶し、その後に子爵、男爵と続く。グランに挨拶し、終わると同じく位の高い貴族などに低いくらいの貴族が挨拶していく。俺はグランの挨拶のついでだ。


「海賊を壊滅させたらしいな下賤のものにしてはやるではないか」


とか


「さすがグラン殿下が見出したものですね」


とか


「その腕を見込んでわが騎士団に入らないか」


などがあった。それは罵倒8割、罵倒のような称賛1割、称賛8分、勧誘2分ぐらいだ、グランには愛想よくしとって言われたけど正直めんどくさい、いまは無理して笑顔を作っているが筋肉がつりそうだ。


パーティーも終盤になってきた。するとグランが退室し誰かを連れてきた。グランと同じような格好をした男性が二人、俺が助けたとき以来見かけなかったグランの妹と妹に寄り添ってるグランより少し年上の女性、それと赤い髪をした少しキツめな女性一人の5名だ。最初の四人はあの王と王妃の面影があるから王族なのがわかる、が、あと一人がわからない。


だがその後の行動でわかったグランの婚約者だ、四人が離れるとグランの腕に抱きついたのが見えた。グランも嫌そうにしてないむしろ嬉しそうにしている。


その様子を見てグランをからかいに行こうとしたが周りが面倒そうだからやめた。


貴族の興味が俺から離れた頃にグラン一行がやってきた


「楽しんでるかい」

「ええ、楽しんでますよ」


俺の返答が意外だったのかグランは笑いをこらえた顔になった。


「普通にしゃべっていいよ、君の敬語を聞くと笑いそうになるから」

「わかったよ」


俺らがしゃべっていると後から咳払いが聞こえた。グランが振り返り何度かうなずく。


「さて私がここにきたのは君の事を兄たちに紹介するためだ」


そこで後ろの二人が前に出てきた。


「我はライル・ザラ・ヘクメスだ。弟を助けてくれて感謝する」

「お堅いね~兄上は、僕はニコル・ザラ・ヘクメス。グラン兄上を助けてくれて感謝するよ」


少し硬いしゃべり方をしているのがグランの兄であるライル殿下で、その後フランクに話しかけてくるのが弟であるニコル殿下だ。二人ともグランと違って髪は青色だ。


よかった王族はまともみたいだな。


「でも」


ん?


「海賊に捕まるなんてグラン兄上も馬鹿だよね~」


・・・・訂正。


「おい、ニコル」

「ライル兄上、僕は本当のことを言ったまでだよ。しかも『王族』がだよ、恥さらしもいいとこだ」


こいつ徹底的にグランを蹴落とそうとしているな、ニコルの言動に耐えられなかったのかグランの姉と思われる女性が止めに入った。


「ニコルここはグランの歓迎パーティーです。不適切な発言は控えなさい」

「ですがルナリア姉さん、これはどういいつくろってもグラン兄上の落ち度です。これにより僕たちの王族の評判にかかわります」

「それでもです、ここには多くの招待客もいます。グランをけなすのはおやめなさい」

「は~い、姉上」


グランの姉であるルナリア殿下が出てきたことにより、ニコル殿下はこの場から離れていった。


「ニコルがごめんなさいね。私はルナリア・ザラ・ヘクメスです、グランのことを助けてくれて心から感謝してます。そしてこれが私の妹の」

「メルダ・ザラ・ヘクメスです!」


グランの妹であるメルダは人見知りなのか、自己紹介の時だけルナリアの前に出てきてすぐにまた後ろに隠れてしまう。まるで小動物だな。


「この子は人見知りなのよ。本当はもっと前に貴方に挨拶しようとしたみたいだけどできなかったみたいでね」

「そういうことですか、嫌われたかと思ってましたよ」

「そんなことない!・・・・です」

「どうやらうまく挨拶できたみたいだね」

「グランお兄様」

「本当は旅の途中で挨拶しようとしたんだけどね、勇気が出なかったんだよねメルダ」

「お兄様!」

「まぁ、この話はそろそろおしまいにして、テオ」

「ん?」

「少し話があるこっちに来てくれるか」


どうやら何かあったみたいだ、グランと共に少し離れた場所に移動した。


「どうした?」

「君はこれからどうするつもりだ」

「どうした急に?」

「いや、おそらく早くて数日遅くても十日にこの国は大きく動くと思う」

「・・・・・何か掴んだか?」

「ああ・・・・・ニコル派閥の貴族が大きく動いている、大量の食料、武具、防具、それと多くの傭兵団を雇ったと情報が入った」

「おいおいそれって・・・・一戦おっぱじめようってことか」

「かもね、正直この国と周辺の国が不安定になってきてね」

「それで俺にどうしてほしいんだ?」

「正直、君には継続して僕の護衛をしてほしい、引き受けてくれないか?」

「・・・・・」


俺はその答えを保留してパーティーを終えた。










翌日、三人に現状を話した、その夜にステラのみが部屋にやってきた。


「テオドール様、お願いがあります」

「どうした~」

「私をこの王都にいる期間の間だけでもルナリア様の護衛をさせてください」

「へぇ~」

「奴隷の身で許されないことはわかっています、ですがどうしても私はルナが心配なのです」


ルナってルナリアの事か?


でも


「今回の王位継承権の争いでは、ルナリア殿下の危険は少ないと思うが?」

「・・・数年前の王族殺人事件は知っていますか?」

「ああ、亜人との関係が悪化した事件だな」

「その事件は私の実家であったレリアバァル家が担当していました。当初は亜人の過激派の仕業だと思っていたのですが・・・」

「どうした?」

「ここから先を聞くと命を狙われる可能性があります」

「そんなことか、ここまで聞いたんだ、気になるし聞くさ」

「では――――――」




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