奴隷達と模擬戦
俺は生命神の適性があるからか生物の状況がわかる。
「どうですか?」
「三人ともその値段で買おう」
「失礼ですが、伺った予算をオーバーしてしまいます」
「それに関しては大丈夫だ」
亜空庫から海賊共から奪った金貨を詰めた袋を取り出した。
「金貨200枚だ、足りるだろ」
「失礼いたしました、ではこちらにお越しください」
俺は三人と連れられて別室に案内される。
その部屋の床に巨大な魔術式か描かれている、即座に魔眼で解読して見ると奴隷の主人を設定するだけの物みたいだ。
「三人ともこの魔術式の中に入りなさい。テオドール様はこの魔術式に魔力を流してください、三人の首輪が取れたら終了です」
三人が魔術式に入ったのを確認し、床に手を付き魔力を軽く流す。
カラン カラン カラン
三人の首輪が外れた。
「お買い上げありがとうございます。これでこの三人は貴方様の奴隷となりました。それでは奴隷についてレクチャーしていきたいと思います。まず奴隷の扱いですが、ステラは犯罪奴隷なのですが特例で略奪奴隷として扱ってもらうことになっております」
「?犯罪奴隷ではなくてか?」
「はい、反乱の首謀者や連なったものは略奪奴隷として扱われることになっています」
「わかった」
「では続きを、基本、略奪奴隷は殺そうが何をしようがいいです。ですがそれは他人にも通用されます、ですのであなたがいないところで奴隷が殺されても文句が言えませんのでご注意を」
「基本物としての扱いってことだな」
「左様でございます」
「では、もし奴隷が自衛で相手に危害を加えたらどうなるんだ?」
「その場合、主人を護るもしくは目の前で行う以外ではどんな理由があったとしても処罰されます」
「他の荷物とか所有物を守る場合は?」
「その場合は大丈夫ですがその際は近くにお客様がいてください。そうでないと奴隷が勝手に動いたと見られ処罰されることもあるんで」
「了解」
「では次に強制命令についてです、これは簡単です『強制命令』といった後に内容を言えばいいのです」
「ふ~ん、強制命令三人とも跪け」
三人は即座に跪いたが、俺の魔眼ははっきりと捉えていた。
「なるほど理解した」
その後、ある程度常識的な注意を受けてから三人を連れて宿に戻った。
とりあえず部屋を四人部屋にしてもらい、ご飯を部屋まで持ってきてもらった。
そして落ち着いたので三人と対面する。
「さてじゃあ自己紹介をしようか、俺はテオドール、君たちの主だな。一応知っているが名前と得意な武器、魔術はなにができるか教えてもらえるかな」
三人は見合わせ、まずは人族であるステラから話し始めた。
「私はこのヘクメス王国に生まれ、レリアバァル伯爵家で育ちましたステラ・ゾラ・レリアバァル・・・いえ、ただのステラです。得意な武器は剣で魔術は雷系統と光系統の適正を持っています」
ここで言う適正とは魔質がどれに当てはまっているかだ。性質が当てはまっているものがあると威力が上がる。ちなみに適性が無くても他の属性は使えるのであまり問題は無い。
(武器は剣で雷と光の適正を持っているのか、あっちで武器作っとかないとな)
「私が奴隷となる前は第一王女ルナリア・ザラ・ヘクメス殿下専属である、白月騎士団の副団長をしてました。礼儀作法などには自信があり剣の腕は騎士団で三番目でした」
「得意な剣の種類は?」
「レイピヤやエストックなどが得意ですね」
(なるほど刺突系の剣が得意なのか、なら作るのは刺突を主とする剣か)
その後、ある程度会話する。次は木人の娘だ。
「私はティア、武器は弓と短剣が得意よ。魔術は闇以外適性を持っていて苦手な魔術とかはないわ」
「じゃあ得意な魔術は?」
「風と水よ」
ティアはそっけない態度をとる。
(こいつはこうゆう性格か、まあいいや、武器はあれでいいか)
最後は土人族だ。
「は~い、私はクレアっていいます。得意武器は槌や斧です!魔術は土系統と火系統の適正がありま~す」
「・・・そうか」
「なんで私には質問しないんですか!」
「(めんどくさそうな性格だから)」
「ひどいです!」
「あれ?口に出してた?」
「出てました!」
「まあそれよりもだ、三人ともなぜ俺に買われたかわかってるか?」
テオドールは三人に確認する。その問いにはステラが代表して答えた
「旅のお供としてですよね?」
「そのとおり、くわえて周辺の国々の常識とかを教えてもらうためだな」
「それだけ?それじゃあなんで私たちを買ったの?」
俺の返答にティアが疑問を示す、その問いに俺は
「守ってもらうためかな(私物とかを)」
「護衛ってこと」
この答えに俺は
「プッ、アハハハハハハ」
思わず笑ってしまった。
「何がおかしいのよ!」
「ごめんごめん、でもおかしくってさ俺よりはるかに弱いお前らから護られるっておかしくってさ」
俺の言葉で三人が不満を示した。
「失礼ですが貴方は私の何を知ってるのですか」
「私たちが弱いかどうかわからないじゃないの!」
「それはすこしカチ~ンてきますね」
「まあ戦いもせずに納得するのは無理か。そうだな明日模擬戦でもして確かめてみればいいさ・・・・それはそうとクレアちょっとこっち来い」
「?は~い」
ペン
俺はクレアにデコピンした。
「なにをし・・・・え!」
クレアは驚いた顔をして俺を見る。
「まぁそういうこと」
「!!!」
「ごめんな、これは一応保険だ」
「貴方気づいて!」
俺はデコピンと同時に魔術でクレアを縛ったのだ。最初は取り乱していたクレアも少しは落ち着いたみたいだ。
「・・・いつから気づいたのですか」
「ん?最初に強制命令をしたとき魔力の流れを見て、お前だけが命令に従っていないことに気づいたよ」
「そうでしたか、時機を見てから殺してティア様をお救いしようとしたんですが」
こいつの猫かぶりまくりだな。
「おー怖い怖い、ちなみにそれが本性か?」
「さて何のことやら」
「まぁいい、俺がお前に施したのは俺の殺害と逃走をできないようにしただけだ」
「おや、そんなことだけでいいのですか」
「大丈夫だろ?クレアはティアを見捨てることはしないだろ」
「ええ、私はティア様のために生きているようなものです」
重い重い。
「そ、そうか、今日はもう寝ろ」
テオドールはベットに入るとそれぞれ用意されているベットに入った。
「もう・・・あり・・ん・ィアさま」
「だい・・・・よ、クレ・が・・ぶられる・ら里のみんなぜんい・みやぶ・・るわ」
「君ら・そん・・とを・・らんでいたの・」
俺がまどろんでいると三人の話し声が聞こえ、その数秒後俺は睡魔に襲われた。
翌朝、俺らは朝食を済ませ領主の館の前までやってきた。門番にグランに取り次いでもらいグランのいる部屋まで案内してもらう。
「久しぶりだなテオドール」
「おう、久しぶりだなグラン」
中では豪華なソファに座りながら挨拶してくるグランがいる。するとテオドールの態度が気に入らなかったのか後ろに並んでる4人の騎士の一人が声を荒げる。
「貴様!殿下に対して無礼であろうが!」
「あ〜グラン一応敬語にしたほうがいいか?」
「テオドールなら構わないけど」
てことで普通に話そうとしたのだが、騎士はそれを良く思わなかったみたいで。
「殿下それでは他のものに示しが付きません。そしてお前!殿下に対してきちんと敬語を使え」
「はぁ~すまんなロイはこのような奴なんだ、とりあえず返答は」
グランは騎士のことを気にせずに依頼の話をしてくる。
「その前に聞きたい」
「ん?なんだ答えられることなら答えよう」
「俺の奴隷も一緒でいいか?」
「大丈夫だよ」
「なら、その依頼受けるよ」
「そうか、助かるよ一人で海賊団を壊滅させた実力なら旅の安全は保障されたも同然だろ」
グランと依頼の件で話し合ってると。
「恐れながら殿下、このような素性がわからない者に護衛で背中を合わせるとなると不安、いえ信用できません」
「ん~」
グランは何か面白そうなことを考え付いたのかわくわくした顔を押している。
「じゃあ模擬戦してみようよ、テオドールの奴隷は何人だ?」
「三人だが」
「じゃあちょうどいいな4対4の模擬戦をしようじゃないか」
「失礼ですが殿下、我々は辺境伯様の騎士です」
「わかってるよ辺境伯には許可を取る」
こうしてグランのわがままで俺らは演習場までやってきた。
「さてさてそれじゃあ模擬戦やろうか」
「まてまて、どんな形式にするかとか決めてないだろ!」
「そうだなじゃあ一人ずつ勝ち抜きでどうだ」
「こちらはそれでいいがお前らはどうなんだ」
「こっちは大丈夫だよ」
「それじゃあそれぞれ武器を取ってね。審判はここ騎士団団長レイベルにやってもらうことになった」
ちょうど演習場に怖い顔をしたゴリラみたいな体型をした男が入ってきた。
「審判はこの我が行う。無論公平に判断する」
「それじゃあはじめる用意を」
俺は三人娘に近づき伝える。
「それぞれ一戦したら負けてな」
「なぜですか?」
「これはお前らの実力を見るためでもあるからだよ」
ステラの疑問に答えると三人は従ってくれた。
一回戦目はステラが戦う。相手は顔が見えないくらいのフル装備鎧に盾と剣を使う騎士だ、さてとどうなるかな。
「それではグラーダとステラの模擬戦をはじめる、それでは、はじめるが双方宣誓してもらう」
この宣誓は、まぁ簡単に言えばどのような結果になっても文句を言うなよ、そして事故で死んでも怨むなよっていう内容だな。
「それでは、はじめ!」
はじめの合図があると両方距離を詰めた、数回打ち合うとある程度見えてきた。
ステラは突きを主体としスピードを重視した型。それに対して相手側は盾を主体としカウンターで相手を倒す型だ。相性で言うとかなり悪い、さてさてどうなることやら。
10分後~
ステラの疲労が目に見えてひどくなってきた。対して相手はそこまで疲労は見えない。予想はできてたがステラの方が弱い。なぜかというとステラが勝っているのは速さだけなのだ、体力や力などは相手と比べて低い、それも速さはほんの少しだけだ上回っている程度だ。
name:ステラ
種族:人
年齢:18
状態:良好
生命力:243/243
魔力量:186/186
腕力:133
脚力:140
敏捷性:176
耐久力:86
器用度:172
魔質:140
魔抗:136
視覚:E
聴覚:E
触覚:E
嗅覚:E
魔法適正:雷・光
【種族特性】
【特殊技能】
これがステラの状態確認の結果だ、これに対して騎士4人の平均が
生命力:200/200
魔力量:120/120
腕力:170
脚力:160
敏捷性:140
耐久力:140
器用度:130
魔質:150
魔抗:150
視覚:E
聴覚:E
触覚:E
嗅覚:E
となっている基本的に数値は力関係が覆ることはない、だが数値が近ければ感情や状態や技量の差で十分埋めることができる。
本来ならここまでで勝負が決まったも同然だ、周りを見渡すとほとんどがステラの負けを確信している。
だが俺の目ではそうは映らない。
「そろそろ降参したらどうだ?こちらとしても女性を攻撃するのは忍びない」
この騎士の挑発を受けてステラは宣言する。
「いや私の勝ちだよ、宣言しようこれから私に攻撃を当てることはできない」
この宣言を聞いて周りは虚勢だとおもったようだ、それは騎士もだ
「では遠慮なく行く、ハァ!」
ステラは騎士の鋭い攻撃を剣で受け止め流れに逆らわずに、それを利用して逆に攻撃をする。
「なっ!」
「言ったであろうもう私は攻撃を当てることはできないと!」
それからはステラの独壇場だ。ステラが攻撃をすると盾で防ぎ斬り返そうとするがステラは盾に重なるように動き、剣にあわせて受け流し、力を上乗せした斬撃を放つ。
(くっ、こいつ動きが変わった。とてもやりにくい、だが毎回盾の向こう側にいるとわかれば!)
グラーダはステラが盾の後ろに回ったの確認すると盾を放し剣を両手で持ち模擬戦で一番鋭い一撃を放つ。が
「言ったであろう、もう私に攻撃が当たることはないと!」
ステラは盾に隠れたときに気づかれないように間合いから外れたのだ、よってグラーダの一撃は空振りする。その隙を逃すステラではない、これまでで最速の突きを首に放つ。
「それまで!」
ピタッ
両者とも動きを止めた、グラーダの喉元には木剣が突きつけられていてもはや勝者は言うまでもない。
「勝者ステラ」
両者とも武器を下ろした。
「いや~お見事でした。すばらしい腕前ですね」
「いやグラーダ殿こそ強かったですよ。戦って気づいたのですがグラーダ殿の剣は魔物に対する剣ですよね、対して私は要人警護など人に対する剣ですので今回は私が優勢だっただけですよ」
「そうか、なら対人訓練の増やすか」
ちなみに会話に出た魔物だが、この世界には当然のように居る。
二人はどうやったら強くなるか話し合っている、そこにゴリ・・・レイベルがやってきてグラーダを交代させた。その際、ステラも体力を使い尽くしたと理由を付けてで棄権した。
二回戦目はティアが戦うことになる。対して相手はティアと同じく弓を持っていて、鉄の兜と胸当てをしている。
「では、ティアとアルバンの模擬試合を始める」
先程と同じなように宣誓して試合が始まる。
双方瞬時に弓を構え放つ。ティアは相手の心臓に向けて、アルバンはティアの額に向けてだ。
それを二人とも木でできた短剣で切り払い、ティアは後ろに飛び距離をとる。対してアルバンは短剣を手にして詰め寄る。
「ふ~ん、これはアルバンは矢を温存する選択なのか」
「そうだと思いますよ殿下」
横ではグランとその護衛騎士が話している。見たところこの騎士団は魔物を想定した動きが目立つ、後続がいるかわからない魔物に対しては矢の温存で正解だ。だがこれは一回きりの対人戦なのだから、なら限りのある矢を全部使った戦闘のほうが楽だろうにな。まあ、ここの騎士団は無意識なのか戦うときの癖なのかはわからんが戦うとき獣を相手にしている感じが目立つ。
(騎士を評価しても今はあんま意味ないか、ティアのほうは・・・・ほぅほう)
ティアは何度か矢を放ち相手を近づけさせないようにしている、そしてその間に魔術の準備をしている。
「木人にしては弓が下手だな」
「下手かどうかは次でわかるわよ」
「そうか、ではどうするのか楽しみにしている」
アルバンはそう言い、身を低くしさらに早く疾走した。対してティアは弓に三本矢をつがえる、すると矢に魔力が集まり風を纏う。さらに矢の前には魔術式が出現する。矢を放ち魔術式を通ると三方向に放たれた矢がアルバン目指して自動で動く。
(風で矢のスピードを上げて、あの魔術式は通った矢の軌道を操作できるようにしているのか。しかも今でも遠隔操作できる。だがそれは)
「魔力を大量に使ってますね」
「なんかわかったのか」
魔法の存在に気づいた騎士のつぶやきにグランが説明を求めている。
三本の矢はかなりの速度でアルバンに向かっている。そのアルバンは慌てて矢を放ち打ち落とそうとしているがもう遅い、矢を取り出そうとした時点でティアの矢が額と心臓の腹側と背側の部分に当たりアルバンは倒れる。
「そこまで勝者ティア、負傷兵が出た治癒魔術を使えるものを呼べ!」
レイベルはすばやく審判を下し、周りにいる兵士に治癒魔術を使えるものを呼び出した。幸いアルバンは無事に済んだ。その後、ティアも魔力切れを理由に棄権した。
「それでは三回戦目クレア対ドルバをはじめる。双方前に」
「それではいってきま~す」
クレアは木槌を肩にかけながら前に進む。対してドルバのほうは木でできた槍を背負ってきた。その後、宣誓し試合が始まる。
この試合を一言で言うなら『派手』である。
共に長い武器を使ってるので両方とも演舞しているように見える。ドルバが突きをするとクレアはそれを柄で受け流しそのまま回すように振るう、それを槍の反対側で少し軌道をずらし避ける。さらにそこから槍を横なぎにする、こうした行為が開始直後から始まる。時間が経つにつれクレアのほうが有利になっていく、ちなみにクレアのステータスはこうなっている。
name:クレア
種族:土人
年齢:18
状態:良好
生命力:270/270
魔力量:180/180
腕力:275
脚力:293
敏捷性:140
耐久力:214
器用度:85
魔質:159
魔抗:186
視覚:E
聴覚:E
触覚:E
嗅覚:E
魔法適正:火・土
【種族特性】
土の響き:周囲の土の状態がわかる
【特殊技能】
腕力が300近いのだ、対してドルバは腕力は170ほどだから腕力ではほぼかなわない。
「これでは~埒が明きませんね~」
「そうですな」
「では~次の一撃で決着としませんか~」
「承知」
二人とも少し距離をとる。互いに構えるこうなるとタイミングの勝負になる、膠着状態になると予想したがクレアが動いた。とある狩りゲーの溜めと同じ体勢で走っていく。ドルバは驚いた顔をしたがすぐに元に戻り、相手のタイミングを計り突きを放つ構えをする。クレアが槍の範囲に入ると鋭い突きが繰り出される。だがクレアは槌を小回りに振るい槍の穂先に当ててはじき、そのまま1回転し今度は大振りで振るう。槍をはじかれたドルバはあたるのを確信し槍を手放し両手でガードする。その結果10メートルほど吹き飛ばされ気絶した。
「そこまで勝者クレア」