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始まりの出会い

あれから7年が経った。


「お疲れルーク、はいこれ」

「ありがとうございます」


僕は12歳になり近所の店で手伝いをしている。


店長から給金を貰ってから家に戻る。


「ただいま」


僕の家は町はずれにある。


中に入り母さんの部屋に向かう。


「母さん大丈夫?」


部屋の中には母さんがいるのだがベットに横たわっている。


「お帰りルーク」


母さんはこの町に住んでからどんどん衰弱して言ったのだ。治癒士に診てもらうと心の不調だと言われた。慣れ親しんだ土地から離れ夫を亡くしたのだ、相当心がやられたのだろう。


「薬は飲んだの?」

「ええ」


母さんは薬を飲んで生活している。


「それより仕事はどうだったの?辛くなかった?」

「問題ないよ、今日も結構売れたんだよ」

「そうよかったわ」


そういって母さんは笑顔を向けてくる。


「それよりご飯準備するけど母さんは何がいい?」

「私は簡単なものでいいわよ、自分で稼いだお金なんだから自分のために使いなさい」

「わかった、じゃあ母さんが元気になれるようなものを買ってくるね」


母さんは好きに使えと言った。なら母さんのためにおいしい食材を買ってくることにした。


「・・・・・・・ありがとう」


背後から声が聞こえた、僕は照れくさくなり早足で市場に向かった。





この町【クレッシェ】は上から見ると丸い形をしている町で、円の中に十字の大きな道がありその道の脇で露店や商店などがある。


僕は大きな道に出ると食材を売っている店を探す。


商店はいつも同じ場所があるのだが露店は日によって場所が変わっている場合がある。


僕は露店を見て回る。露店は値段と質がバラバラでこんな安いのと思うものもあればその逆もある。僕はそのうち安いほうを探すのだ。



一時間後~


「今日は微妙だったな~」


食材を買ったのはいいが値段も質もそこそこだった。


「明日は安い奴があればいいな~」


僕は家に向かって道を歩くが路地から悲鳴が聞こえた。


僕は声の方向に走っていくと、数人の男と一人の女性がいた。


「放して!」


女性は一人の男に手を捕まれており、何とか振り払おうとしている。


その光景を見て自分の中に何かが囁いた。目の前で困っているんだ無視するのか?って。


僕は荷物を近くに置きいつも腰にさしている木剣を抜く。


「何をやってるんだ」


4人はこちらを見る。男達は忌々しそうに女性は


「お願いです!助けてください!」


助けを求めてくる。


「おいおい、まだガキじゃないか」

「さっさと家に帰んなガキ」

「ママにでも甘えてろ」


三人は僕を見て罵倒してくる。


それに対して僕は木剣を構える。


「チッもういい、やれ、あんまり騒がしくさせるなよ」


他の二人が僕に襲い掛かってくる。


普通なら子供は勝てないだろう、だけど


「ふっ」


僕は木剣を振り下ろす。


ガゴン!


木刀を腕で防ごうとした男は衝撃に耐えられずに後ろに吹き飛ぶ。


「「「は?」」」


三人は視線を僕と吹き飛んだ男との間でさまよわせている。


「ふっ」


注意がそれている間に僕は木剣を横なぎにしてもう一人も倒す。


「ガッ」


これであと一人。


この町に来てから気づいたんだが僕の力は普通ではないらしい。大の男がギリギリ持てる重さの荷物を僕は片手で持ち上げることができるくらいだった。


村に居た頃はそこまででもなかったんだけど町に来てから数年、どんどん力が強くなっていったんだ。


「テメェは何なんだ」


親玉だと思われる男は女性を放し腰にある剣を抜いて僕に近寄る。


「テメェ俺達ッ!」


僕は隙だらけで近づいてきたので一撃入れたのだが、それがうまくあごに入った。


「「「・・・・・」」」


一人は奥に吹き飛んで、一人は壁にもたれかかっている、一人は目の前で気を失いながら倒れている。


僕は女性の存在を思い出して、女性を見ると


「すごいですね、すごいですね、あの大男達を一撃で」


こちらを見ながら眼を輝かせていた。


「あ、あの」

「ああ、助けていただきありがとうございました。私の名前はレアといいます」


レアと名乗った女性はどこか上品な格好をしている、髪は薄赤色で腰まで伸ばしている。


「あのここら辺でうろついていると危ないですよ」


この辺りはごろつきやガラの悪い人が比較的多いことをレアさんに伝える。


「そうなのですか」


レアさんは少し考えると、僕の手を取って顔を近づけてくる。


「実は私この町にあまり詳しくないのです」

「は、はい」

「今日止まる宿すらもないのです」

「そ、そうなんですか」


レアさんの綺麗な顔がすぐ近くにある。


「もしよろしければ今晩家に泊めてくれませんか?」






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」













「おいしそうですね」

「味見してみる?」


僕はキッチンで母さんとレアが料理しているのを眺めている。


あの後、なんども頼まれて、ついに僕が根負けしたのだ。


で、レアさんを僕の家に来たわけだが・・・


「おいしいです」

「あら、よかったわ」


なぜかお母さんと仲良くなっていた。


「さて料理できたから食べましょ」


そういって三人でテーブルを囲む。そこで気になったことを聞いてみる。


「レアさん一ついいか」

「なんですか?」

「貴方は何で宿に泊まらなかったのですか?」


この街に止まるなら近くの宿でもよかったはずだ。


「実はお金がなくて」

「歩いてるときお金の音がしてましたけど」

「・・・・・本当は家から無断で出てきました・・・・・それとすでに手持ちは使う予定があるんので・・・・」


レアは言いずらそうに顔を背けながら言う。


それを見て母さんはある提案をする。


「ならこの町にいる間ここに住む?」








「此処を使ってください」


僕はレアさんを空き部屋に案内する。母さんの提案をレアは受け入れたのだ。


「・・・・此処をですか?」


レアさんは部屋を見て落胆している。


「物置ですか?」


レアさんはかなり裕福な家庭だったのだろう。


「此処は普通の空き部屋ですよ、多少は埃とかもありますが」

「これで・・・・」


なにやら絶句している気配がある。


「さあ、もう少しで夜になります。それまでにこの部屋を綺麗にしますよ」


僕はレアさんに箒を渡す。


「これをどうすればいいの?」


僕は掃除の仕方を一通り教えて一緒に掃除する。



夜になる前には掃除を終えることができた。


「疲れました」


レアはベットに横になりながら呟く。


「よし、掃除は終わり。もう少しで晩御飯ができるから待っていてね」


そういって僕は下に降りる。


「あら掃除終わったの?」

「うん、ひとまず綺麗になったよ」


母さんは台所で晩御飯の準備をしている。


「体は大丈夫なの?」

「ええ、動いても大丈夫よ」

「そう、僕も料理を手伝うよ」


僕は母さんの隣で食材の下準備をする。


「ルーク、あの子はこれからどうするのかしらね」


母さんが聞いてくる。


「わからないよ、僕は彼女が何のためにこの街に来たのかすら知らないんだ」

「そう、何であれあの子のことは面倒見てあげなさい」


僕は手を止めて母さんを見る。


「ルークあの子は何かしらの事情を持っているわ。それが悪いことなら仕方ないけど、もしかしたら仕方なくここに来たのかもしれない、そのときは貴方が手を貸してあげなさい」


そういって母さんは僕を見てくる。


「うん」


僕がうなづくと母さんは頭を撫でてくる。





「ルーク、レアちゃんを呼んできて」

「わかった」


僕は二階に上がる。レアの部屋にノックする。


「どうぞ」

「(どうぞ?)レアさん、ご飯で来たよ」

「あ、今行きます」


レアは少しすると部屋から出てくる。僕はレアと一緒に下に降りる。


僕とレアと母さんがテーブルに着きご飯を食べる。


「ねぇレアちゃん」

「何でしょう?」

「明日からどうするの?」


母さんは今後どうするのか聞く。


「明日はギルドに依頼しに行こうと思っています」

「依頼?」

「そうです、私はある場所に行かなくては行けなくてそのための護衛を頼みに行こうと思っています」


レアさんは近くの村に会いたい人物が居るそうで、そこの村に向かうための護衛が必要になるみたいだ。


ここで僕は一つ疑問に思った。


「護衛に使うお金があるのに宿には泊まれなかったんだ?」

「実はこの護衛が結構高額なので・・・・」


僕はレアさんの言葉で納得した。危ない所を通るのなら強い冒険者が必要になる、そして強い冒険者を雇うには莫大なお金が必要になるのだ。


「そっか」



その後、他愛無い話をして時間が過ぎていく。








次の日、僕はレアさんに付き添ってギルドに来ていた。


ギルドはこの街では一番大きい三階建ての建物だ。一階は酒場と買取所、クエスト掲示板、受付がある。二階にはクエストを受注する受付と納品所がある。


「レアさんはクエストを出すほうだよね?」

「そうですよ」

「なら二階だね、僕は一階でクエストを請けに入ってくるから、此処で一階お別れだね」


僕はそういってクエスト掲示板のほうに向かう。


「今日はどんな依頼がある?」


僕はいくつもある掲示板の中で端のほうにある所に行く。


『ニガル草採取:ランク1~

報酬:ニガル草1個につき50ナルク(品質によって価格が変わります)

クレッシェ周辺にあるニガル草を採取してきてください。』


『ニアット商会倉庫整理:ランク1~

報酬:一日で7000ナルク(整理中破損した商品などは買い取ってもらうことになります)

倉庫の中身を整理するための人材を募集しています、重い商品などもあるため力が強い人材が好ましい』


『水路掃除:ランク1~

報酬:6000ナルク

街の水路がとても汚れています。大規模に清掃するための人員を募集しています』



いくつか張られているクエスト票を見る。


「う~ん」


正直微妙だ、昨日行った紹介の荷物運搬は一日10000ナルクの依頼だった。


「(今日はいい依頼はないな)」


いつもなら大体一万ナルクほどの依頼があるはずなのに今日はない。


「う~ん」

「おっルーじゃねえか」


僕は声のしたほうを見てみる。そこには恩人達の姿があった。


「お久しぶりです」

「相変わらず礼儀正しいなルーは」


そういって鎧を着ているゼルさんは僕の頭を撫でてくる。


「ちょっゼルさん」


僕はくすぐったくてその手から離れる。


「あはは、ルー君嫌がっているからやめてあげれば?」


隣に居るヘレンさんはゼルさんを注意してくれる。


「ヘレンさんも無事そうですね」

「・・・・・・」

「???」

「やっぱりかわいい~」


ヘレンさんは僕に抱きついてくる。ヘレンさんはこの街に来た頃からこうして僕に抱きついてくる。なんで抱きついてくるのか聞くと『小さい子って可愛いじゃない?その姿を見ていると抱きつきたくなるのよ

』とのことだ。


「ヘレン、それじゃあゼルよりひどくなってますよ」


注意したのはミレアさんだ。


「健康そうでよかったですルーク君」


ミレアさんは以前と変わらず白を基本とした神官服に身を包んでいる。


「あれ?エリックさんとマーヴィンさんは?」


いつもは5人でギルドにいるのに今は三人しか居ない。


「二人は次の依頼までの宿と武具とかの修理を頼みに行ったのよ」


その言葉に僕は納得した。宿は空きがあるかわからないから速めに行っておくに越したことはない、武具の修理だって直ぐに終わる訳じゃない、もし急に必要になっても使えないってことにでもなったらどうなるか。


「皆は当分この町にいるんですか?」


僕は皆がいつまでこの町にいるのかを聞く。


「そうだな急な依頼が入らない限り当分はゆっくりするつもりだ」

「今回の依頼の報酬が結構よくてね、代わりに結構大変だったけどね」

「その疲れを癒すために少しの間、休もうと思っています」


三人が答えてくれる。


「そういや、ルーの方はどうだ?」


僕は依頼を探していたことを伝える。


「そっかルーはまだ13じゃないからランク上げられないのか」


ギルドは自己判断できる年齢で入ることはできるが依頼を受けるために必要なランクを上げるには年齢が13以上ではないといけないのだ。


まずギルドは誰でも登録することができ、僕も例に漏れずギルドに入っている。ギルドに入るとクエストというものが受けられるのだが、クエストを受ける際にあたって必要な条件が出てくる。これがランクだ、ギルドに加入した時点で1からはじまり一つずつ上がっていく、ただこのランクは年齢が13以上ではないと上がることはないのだ。ほかにも狩人ランクや商人ランク、職人ランクなどもあるがこれも年齢制限があるので僕は該当しない。


僕はいま12歳でランクは1から動かないのだ。


「ならルー明日からいつものように剣の練習するか?」


僕はこの町に来てからしばらくしてゼルさんから時間が合うときだけ剣を教わっている。


「・・・・そうですね、お願いできますか」


現在、お金に困っているわけではないのでゼルさんの提案を受け入れる。


その後、街周辺のことを教えてもらう。


街の周辺はほとんど変わってなかったそうだが、特定の場所だけ魔物などが増えているらしい、中には立ち入り制限された地域もあるみたいだ。


それには僕の村周辺も含まれていた


「それも最近はより強くなってるみたいようだ、知り合いも安全なはずの場所で怪我をしていたぐらいにな」

「ここは安全なんですか?」

「ああ、今の所は安全だと思う。ギルマスも当分は安全だろうと踏んでいる」


その答えを聞いて安心した。


しばらくするとエリックとマーヴィンがギルドに来た。


「お~す」

「お待たせしました」

「案外遅かったな」


エリックとマーヴィンは酒場の定員にエールを頼んでから僕達のテーブルにやってくる。


「それがな修理の方は問題なかったんだが宿のところで少し足止め食っていてな」

「足止め?」

「ああ、人を探しているらしくてな、俺達にも聞いてきたんだよ」

「それが結構しつこくて」

「しかもだ相当上から目線で偉そうだったんだよ」

「アレは少し怒りを覚えますよ」


二人は少し怒った顔をしている。


「二人が怒った顔をして居るって事は相当やな感じだったのね」


ヘレンさんの言うとおり、普段温厚な二人が怒りを顔に出すなんてよっぽどだ。


「でも一応話は聞いたんでしょ」

「ああ、いろいろと理解不明なことを言っていたけどな」

「なんでも赤色の髪(・・・・)をした少女を探しているらしいんだ」


僕はマーヴィンさんの言葉で固まった。

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