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亡くなる故郷

魔物群集暴走モンスタースタンピードだ」


僕はその言葉を聴いたことが無かった。


「そのモンス・・・なんだって?」

魔物群集暴走モンスタースタンピード、何かしらの異常で周辺の生態系が変わり村などが襲われることだ。今回は強力な固体が生まれたことにより周辺の弱い魔物が追いやられてこんなことになったんだろう」


ユリウス兄さんが難しい単語をしゃべっている。


「それよりもだギルドからの狩人はどうした?」


村長は助かるのかどうか気にしている。


「さすがにすぐには無理だ、依頼はしたがそこまで早く人は来れない。フェルタナさんが依頼を受けた狩人を連れてくる手はずになっているが、もう間に合わない」

「そんな・・・」


村長は絶望した顔をする。そんな村長にユリウスが声をかける。


「そんなことよりこの後はどうするんだ?」

「ユリウス、ワシらはどうすればいいんじゃ?」


村長はユリウスを頼る。ユリウス兄さんは苦い顔をしている。


「最初に言ったが逃げるしかない、此処にいたって全員死ぬだけだ」

「だが外には」

「ああ、魔獣が居る。だがこのままここにいてもいずれあいつに壊されるぞ」

「・・・・わかった、皆・・・・・・この村を捨てるのじゃ」


村長の決断に皆は従った。


「ユリウスどう逃げればいい?」

「まずここで最低限の必要なものだけを持て、それ以外は捨てろ。それと強い匂いがある物は絶対にダメだ捨てるんだ」


ユリウス兄さんは皆に指示していく。


「まず優先は子供達だ、子供達はすぐにここから出して少し先にある町に行かせるんだ」


僕達は同年代の子供達と一緒くたにされる。


「次に比較的若い人たちで子供達を守るようにして町へ向かわせる」


これはユリウス兄さんなどのことだ。


「そしてその後に皆だ・・・・・・・・・ただすまないがあの魔獣の足止めが居る」


ユリウス兄さんが苦しそうに言う。


「それは俺達の役目だろ」


何人かの大人達が声を上げる。


「助かる」

「ワシらもいるぞ、年よりは逃げるのは無理だ、せいぜい餌となって時間を稼ごう」


村長と同じ年寄りの村人が声を上げる。


「・・・すまない」

「な~にワシらの命で家族が助かるなら安いもんじゃ」


そういって軽快に笑う。






その後、皆急いで逃げる準備をする。


「ルーク」


振り向くとお父さんとお母さんが寄ってくる。


「いいか良く聴きなさい」

「何?」

「これからルークはお母さんと一緒に逃げるんだ」


僕はその言葉を聴いて。


「え?お父さんも逃げるんでしょ」


僕の言葉にお父さんは首を横に振る。


「父さんは残らなくちゃいけない」


この言葉を聴いて僕は。


「やだ!やだよ!お父さんも逃げよう!きっと追ってこないよ!」


僕は何度もお父さんに言い縋る。


だがお父さんは首を縦に振らない。


「ルーク」


お父さんは優しく諭すように僕に言い聞かせる。


「これからお母さんの言うことをよく効くんだぞ、それにご飯で野采を残すなよ男がかっこ悪いぞ、それからロブ君達とは仲良くするんだよ」


それは日ごろからお父さんに言われていたことだ。


「それから、それから」


お父さんの眼を見ると涙があった。お父さんは僕を抱きしめる。


「・・・・ルークはこれからどんな大人になりたいんだ?」

「僕は・・・皆を・・・守れるようになりたい」

「そうか、なら皆にやさしくして、頼りになるように強くならないとな」

「・・・うん」


僕はお父さんからお母さんに手渡される。


「ノーラ・・・すまない」

「いいのよ、コーディも死なないように」

「ああ、もし何かあったらルークを頼む」

「ええ、わかったわ」


近くで僕達を呼ぶ声がして母さんはそっちに向かう。


「・・・・お父さん」


僕はお父さんのほうを見る。


「大丈夫よ、お父さんは強いんだから」


お母さんは僕を元気付けようとするが目に涙がたまっているのがわかる。


集まった僕達は用意された馬車に乗った。


「それでは急いでこの村を離れます、急ぐので揺れますが落ちないように何かに捕まってください」


そして僕達はこの村から脱出した。













俺は遠くなっていく馬車を見る。


(ルーク・・・立派に生きろよ)


俺は皆がいる場所に急ぐ。


そこでは20人ほどが村の門を補強している。


「コーディ、いよいよだな」


近くに居る友人が話しかけてくる。


「ああ」


俺は相槌打つことしかできない。


「大丈夫だ、子供達の護衛にはなんたってユリウスがついているんだ問題ないさ」


ユリウス、アイツはすごい奴だ8年ほど前、行商に来ていたフェルタナが道中捨てられているユリウスを拾ったのがきっかけだ。アイツは頭が切れる、小さい頃からフェルタナに付き添って行商をしていたくらいだ。うちのルークがいじめられていたのもユリウスが擁護してからパタリと止まったし。ほかにも例を挙げればきりが無い。


そんなユリウスがついているなら子供達は安心だろう。


ドォオン、ドォオオオオン


補強された門が何度も揺れる。魔獣が打ち破ろうとしているんだ。


俺はもう一度ルーク達が向かった先を見る。


(あぁ、ルークの将来見てみたかったな)



ドガァン


門が破られた、現れたのは赤い大きな狼だ。大きさは馬車ぐらい有り、狼の額と四肢に角を持ち、牙も二本がとてもでかく、毛も一部が黒色で紋様にも見える。


「コーディ怖いか?」


友人は声をかけてくるが友人も震えている


「ああ、怖いさ。でもここで時間を稼がないとルーク達のほうが襲われるかもしれないからさ」

「ハハ、ならできるだけ時間稼がないとな」


(じゃあな、ルーク)


俺達は魔獣に向かっていった。












僕達は馬車に乗り村から脱出した。


僕はいまだに村のほうを見ている。


「・・・ルーク」


母さんは僕を見て声をかけてくる。


「大丈夫よ、お父さんは村では一番腕のいい猟師だったんだから」


母さんは気丈に振舞うがいまだに眼には涙が溜まっている。


アウォウウウウウウウウウウウウウウ


村のほうから獣の遠吠えが聞こえてくる。


「おい馬車をもっと飛ばせ!」


ユリウス兄さんが御者にもっとスピードを出すように言う。


「これ以上早くしたら曲がりきれなくなりますよ!」

「それでもだ、ここで全滅するよりましだろ!」


僕にはなぜユリウス兄さんが焦っているのか分からなかったが、少ししたら分かった


「「「「ガァアアア」」」」


近くの林から何匹もの狼が出てきたのだ。


「やっぱりか!」


出てきたのはの普通の狼とは違って額に角のようなものがあった。普通の狼は額に角なんてないつまりアレは魔物だ。


大型犬くらいの大きさの狼は馬車に襲い掛かってくる。


「うわ!」

「ほら早く速度上げろ追いつかれるぞ」


馬車の速度が上がる。


それに連れて馬車の中はどんどん不安定に揺れていく。


「「「うわ」」」


僕達は馬車の中で大きく揺れる。


馬車がすごいスピードで道を走る。その中で馬車は石を踏みつけたのか、一度とても大きく馬車が揺れる。


「あ!」


それと同時に僕が馬車から落ちてしまった。


「ルーク!」


お母さんの声が聞こえたけど、僕は何度も地面に打ち付けられた事により意識が無くなった。






僕は起き上がってみると馬車はすでに結構先まで進んでいた。母さんは馬車から飛び降りようとしていた。


ガルルルルルル


僕は後ろを振り返ってみると魔物が迫ってきていた。


僕は腰にさしてある木剣を抜いて構える。だが僕の手の中にある物はやたら脆く弱く感じた。


狼はじりじりと僕ににじり寄ってくる。


「・・・・!」


僕は木剣を振り回し寄せ付けないようにする。


「来るな、来るなよ!」


狼はある程度離れた位置から僕のことをじっと見ている。


すると遠くから


『火よ、我が(しるべ)をなぞり、形となせ【火球(ファイアボール)】』


その声と同時に火の玉が狼に向かって飛んでいく。


僕は火が跳んできたほうを見ると。武装した5人組が見えた。


そのうちの軽そうな装備をした人が僕に近づいてくる。


「大丈夫かい?」


その人は狼から眼を逸らさずに話しかけてくる。


「それにしても馬車から落ちるなんて大変だったな坊主、だけどもう大丈夫だぜ後はお兄さん達が何とかするから」


軽装の人は一切こっちを見ずに狼たちを足止めしている。


「うぉおおおおおおお!」


軽装の人とは別に斧を持った大柄の人が狼に突っ込んでいく。


「危ない!」


死角から狼が襲い掛かる。が、突如矢が飛んでくる。


その矢は狼の眼に刺さり動かなくなる。


「ヒュ~、いつもながら言い腕してるぜ」


軽装の男は口笛を吹きながら矢を放った女性を称賛する。


「軽口たたかない、それよりその子は大丈夫なの?」


弓を持ったお姉さんがこっちに駆け寄ってくる。


「ええ、この人に助けてもらいました」


次に神官のような格好をした女性が僕の横に来る。


『光よ、我が導をなぞり、彼の者を癒せ【治癒(ヒール)】』


詠唱を終えると僕の怪我が治って行く。


「ありがとうございます」

「いいのよ、それより少し待っていてね」


神官さんは斧を持った人の近くに来る。


「それじゃあ俺はゼルに加勢してくるは」

「エリックも一応気を付けなよ」

「へいへい、言われんでもわかってるさ、ヘレン達もその坊主をしっかり守れよ」


そういって軽装のお兄さんはゼルと呼ばれた人に加勢しに行った。


「にしてもこんな場所に角狼(ホーンヴォルフ)が現れるなんて」


黒いローブを被った男の人が僕の傍で呟く。


角狼(ホーンヴォルフ)?」


僕のつぶやきに気づいたのか魔術使いがこちらを見る。


「ええ、そうですアレはEランク魔物(モンスター)で・・・ああ、私はマーヴィンといいます」


僕の視線を気づいてマービィンさんは魔物について語ってくるが名乗ってないのに気づいて自己紹介してくる。


「ごめんなさいね、マーヴィンは知識を披露したくなる癖を持っているのよ、私はミレアよ」


神官服を着ている女性はミレアと名乗って手を伸ばしてくる。


「僕はルークといいます」


僕はミレアさんの手を取り立ち上がる。


「そうルーク君ね、少し待っていてね。あの狼達を倒しちゃうから」


そういってミレアさんは微笑む。


「おい、終わったぞ」


ミレアさんの後ろから声がする。


「数匹逃げていったが、ざっと20匹は居たな。それより坊主、怪我なかったか?」


斧を持った人が僕を心配そうに見ている。


「ちょっとゼルは顔が怖いんだから、あんまし近づいたらダメよ」

「それはねぇぞヘレン、ミレア、俺の顔は怖くねぇよな」

「ええと・・・・・・・はい」

「その間は何だミレア、その間は」


彼らは目の前でやり取りをはじめていた。


「簡単に言うと私達は冒険者だルーク君」


他の仲間のやり取りが終わらないのでマーヴィンさんが声をかけてくる。


「冒険者?」

「おや、知りませんか?」

「いえユリウス兄さんから聞いたことがあります」


冒険者、それはギルドという組織で依頼を受けてお金を稼ぐ人達のことだ、とユリウス兄さんから聞いた。


「なら話が早いね、私達はユリウスさんの依頼でこの村の調査をしにきたのですが・・・・遅かったみたいですね」


マーヴィンの見ているほうを見るとその方角は赤く輝いていた。


「村が・・・燃えている、は!まだあそこにはお父さんが!」


僕は村にお父さんや村の人たちが居ることを思い出した。


「お願いだ、お父さんを!村の皆を助けてよ!」


僕はマーヴィンさんに抱きついて何度もお願いした。


だけど


「残念だけど・・・・あの村に生存者はもう居ない」


マーヴィンさんは首を横に振りそう告げる。


「なんで!何でそんなことがわかるの!行ってみないとわからないじゃないか!」

「・・・魔術には【人族探知(ヒューマンサーチ)】というものがある、それは指定した範囲の中に人がいるかどうか調べるものだ。それを使用して調べてみたが反応がなかった」


この言葉に僕も俯く。


「お~いルーク」


遠くから僕を呼ぶ声が聞こえる。


声のほうを見てみると馬に乗ったユリウス兄さんが居た。


「大丈夫かルーク」


馬から下りて僕を心配するユリウス兄さん。


「大丈夫だよ・・・・それより兄さんはどうしてここに?」

「いや後ろでお前が落ちたって聞いてな、ゼルたちとすれ違ったからこれから先は問題ないとわかってな、馬車に繋がっている馬の一匹を借りてお前を迎えに着たんだよ」


ユリウス兄さんは冒険者の皆に近づいていく。


「・・・村はどうなった?」

「生きている人はいなかった」

「そうか」


ユリウス兄さんは暗い顔をする。


「・・・ルーク戻るぞ、馬に乗れ」

「え?・・でも」


僕は冒険者の方を見る。


「ああ、俺達は大丈夫だ来る時も歩きだったからな」


僕はユリウス兄さんと一緒に馬に乗った。


「じゃあ俺は先に戻る、帰るときも気を付けて来いよ」


そういってユリウス兄さんは馬を走らせる。


村のほうを見るとさっきまで煌々としていた火がとても弱くなっている。


僕は知らずに涙を流していた。







その後、町に到着した僕は母さんに抱きしめられた。


「よかった、本当によかった」


僕も強くお母さんを抱きしめた。


「あ~、すみませんが少しいいですか」


声をかけてきたのはこの町の町長だ


「あなた方はこの後はどうするんですか?」


話を聞いてみるとここにいる全員を迎え入れることはできないので親戚が居る家族はそちらに移り住んでもらうことになったみたいだ。


「私達には親戚はないのです」


お母さんは町長に頭を下げる。


「お願いします、私をこの町において下さい。私にできることなら何でもしますので」

「・・・わかりました、幸いほとんどの人たちは親戚のほうに移り住むようなので家は開いておりますので」


この言葉にお母さんは再び頭を下げる。


こうして僕達は村を捨てて新しい町【クレッシェ】に住むことになった。












――――――――――


「いや~びっくりした、あそこで死んだら最悪なことになってたよ」

「そうだね~、生まれたんだから一人で生きることができるまで面倒見ないとね」

「・・・・・元はといえばあんたのせいだからな」

「え~私~」

「当たり前だ、俺は徐々にやってたんだよ!」

「まぁまぁ、落ち着きなよ大筋から外れているわけじゃないからいいじゃん」

「・・・・は~これからどうなるかな~」

「ちゃんと育てないとね!」

「元はといえばてめぇのせいだって事わかってんのか!わざわざ尻拭いしてやってやってるんだからな!」

「はいはい、わかりましたから~、そんな怒らないで」


世界のどこかでこんなやり取りがされていた。

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