悲劇の始まり
翌朝、僕は起きるとご飯を済ませていつもの場所に集まる。
そこにはロブとラナとユリウス兄さんがいた。
「よしこれで集まったな」
「それで今日は何するんだユリウス兄さん?」
ロブがのんきにユリウス兄さんに尋ねる。
だがユリウス兄さんはその言葉を聴いて笑み浮かべているが僕には怒っているようにしか見えない。
「ロブ~お前、あんな危険なことしといて罰が何もないと思っているのか」
ユリウス兄さんがロブの肩を強く掴みながら言う。
「え!?・・・・え~と」
「とりあえず正座しろ」
ユリウス兄さんはロブを正座させる。
「なに見てるんだ?ルーク、ラナお前たちも正座だ」
僕とラナも正座させられて懇々と叱られた。
「別に森に魔物見に行きたいと思ったのはいいんだよ」
「いいの?」
「ああ、誰か森に詳しい大人に来てくれって頼めばいいだけだったんだからな」
僕は話をきいてなるほどと思った。
「要するに俺はお前達が安全も確保できてないまま森に入ったことを怒っているんだよ」
僕達はユリウス兄さんの言葉を聞いて反省した。
「はぁ~お前達これから森のほうには近づくなよ」
「なんで?」
森の奥は危険だが近くなら問題ないはずだ。
「実は最近森の様子がおかしいんだ。念のために戦うことができない人たちは森に近づかないようにするんだ、いいな?」
「「「はい!」」」
僕達は返事をする。僕たちはユリウス兄さんの笑顔を見ていやとは言えなかった。
それを見てユリウス兄さんは何度かうなずいて。
「さてじゃあ何をする?」
「ユリウス兄さん剣を教えてくれよ!」
ユリウス兄さんが聞くと、ロブが元気良く答える。
「・・・まぁそろそろお前達も戦えるように鍛えたほうがいいかな」
「ぼ、僕も剣を教えてよ」
ユリウス兄さんが許可を出したので僕もロブに同調する。ただラナは
「私は・・・剣を握りたくないな」
そんなラナを見てユリウス兄さんは
「じゃあラナは魔術でも練習してみるか?」
「魔術?」
「そう、少し待ってて」
ユリウス兄さんは一度家に帰り、すぐに戻ってきた。
「これだ」
「・・・『初心者魔術士入門書』?」
「ちょうど安く売っていたから暇つぶしに買ってみたんだ」
僕達は本を見てみる。
一応この村には文字を教えてくれる人がいて僕達は日常会話程度の文字なら読むことができる。
「ラナが嫌なら他の遊びを考えるけど」
「ううん、これがいい!」
ラナは本を抱きしめてからそう告げる。
「ならよかった、ロブとルークに剣を教えている間ラナはその本を見ていてくれ」
こうして僕達はユリウス兄さんに剣と魔術を教わっていった。
「よしここまでにするか~」
ユリウス兄さんの宣言で僕とロブは崩れ落ちる。
何があったかというとお昼を食べていつもの遊び場に来るとユリウス兄さんが3本の木剣とあの本を持っていた。
「よし来たな、ほれ」
僕とロブには木剣をラナには本を渡してくる。
「これで何するんだ?」
ロブは木剣を振りながら尋ねる。
「素振りだ」
「・・・え?」
「だから素振りだ。まずはそこからはじめるぞ」
ロブは固まったおそらく模擬戦をすると思っていたんだろう。
「私は?」
「ん?一応、その本を最初から読んでみてくれ。それでわかんない所があったら聞きに来て」
「わかった」
ラナは近くの切り株に腰掛けて早速本を読んでいる。
「じゃあルークにロブ、素振りからはじめるぞ」
それから一通りの振り方を教えられて、それを日が暮れるまで続けたのだ。
「俺は明日から当分いないけど素振りは続けろよ」
「え!ユリウス兄さんいなくなるの!?」
「ああ、フェルタナさんと一緒に一度近くの町に行ってくるんだ」
「そっか」
それからユリウス兄さんは準備があるからと家に帰っていった。
「俺達も帰るかお腹すいたし」
「そうだね」
「私もお腹減ってきた~」
僕達はそれぞれの家に帰った。
僕はこのときこんな日常がずっと続くと思っていたんだ。
3日後
僕達はいつもの場所で素振りをしている。
「なぁ、ルークこんなことして俺らは強くなっているのかな~」
ロブは素振りをしながら、不満を言う。
「僕達は剣を習ってから三日目だよ、仕方ないさ」
「だけどずっと素振りだけぜ、つまんないよ」
ロブは僕から視線をはずしてラナを見る。
「ラナはアレから本ばかり見てるし」
ラナはアレから本ばかり見ている。
すると暇になったのかロブが僕に提案してくる
「なぁルークこんなことより模擬戦しないか」
「模擬戦?」
「そう、詳しくやり方は知らないから一撃当てたら勝ちでどうだ?」
正直僕も暇だったので僕はロブの提案に乗った。
僕とロブは互いに構えて向き合う。
「それじゃあ行くぜ、オラ!」
「は!」
僕達は模擬戦をはじめる。
だがそれは傍目からただのチャンバラしているようにしか見えなとおもう。
それでも僕達はそれが楽しくて休憩もせずに続けていた。
「そろそろ帰らない?」
ラナの声で僕達は空を見る。空はうっすらと暗くなってきた。
「確かに暗くなってきたね、そろそろ終わろうかロブ」
僕はロブに話しかける。話しかけられたロブは地面に横になっている。
「はぁ、お前、はぁ、なんで、そんなに、はぁ、ピンピンしているんだよ」
「なんでなんだろ?」
ロブは息が荒くなっているのに対して僕は汗すら掻いてない。
「それにしてもルークって本当に体力あるよね」
ラナは僕の体を眺める、いや観察しているって行ったほうが正しいかな。
グゥ~~~
「腹減った~帰ろうぜ~」
音の原因であるロブを見て、僕とラナは苦笑する。僕とラナでロブを起こし家に帰っていった。
翌朝、僕はいつもの場所に向かったが村が騒がしい。
「どうしたんだろ?」
疑問を感じながらも僕は集合場所に急ぐ。
いつもの所には二人がいる。
「おはよう」
「おう、おはようルーク」
「ルーク、おはよう」
二人は普通にしていたが、すこし表情が曇っている。
「どうしたの?」
二人は顔を見合わせる。
「知らないのか?バートおじさんが森で魔物に襲われたんだってさ」
バートおじさんはお父さんと同じで猟師をしている人だ。
「なんでも森で魔物に襲われて、腕を怪我したんだってさ」
「バートおじさんが・・・」
「それも、今後は猟師として生活するのは難しいって」
僕達は暗い表情をする。小さい村で一人の男手た貴重だってことぐらい僕でも知っている。それも森の害獣を狩る猟師だ男手の中でもさらに重要だろう。
「だから村のほうが騒がしかったのか」
僕は村の騒ぎの意味に納得した。
ロブは暗い話題を変えるように
「おし、ルーク早速模擬戦はじめようぜ」
「え?素振りからじゃないの?」
「やる必要ないだろ、模擬戦するぞ!」
そして昨日と同じように時間が過ぎていった。
その次の日。
昨日と同じように村の中が騒がしい。
僕はいつもの場所でロブとラナと合流する。
「おお、ルーク」
ロブが僕に気づいて手を上げる。ある程度近づくとロブが話しかけてくる。
「ルーク知っているか?」
「何を?」
「また出たんだよ魔物の犠牲が」
「え!?」
「今度はクリフさんとその奥さんだ」
「クリフさんって畑仕事している人だよね?」
「そう、夫婦揃って農家をしているよ」
「クリフさん達は大丈夫なの?」
「なんでも軽く怪我したみたいだ。バートさんみたいに今後仕事ができなくなるわけじゃないから大丈夫だろう」
「どこで襲われたんだ?」
「なんでも、森に近い場所で畑をいじっているとゴブリンが現れたそうだ。」
僕はロブの言葉を聴いて安心した。
「それにしても最近はどんどん魔物現れているみたいだな」
だがロブの言葉で再び不安になる
「ユリウス兄さん達がギルドに依頼しに行ったからすぐに前の生活に戻るって聞いていたけど」
ラナが会話に加わる。
「でもそれって後数日はかかるんだろ?それまでにどれだけ犠牲者が出るか」
僕達はそろって暗い顔になる。その後も気まずいまま時間が流れていく。
その夜、ベットに横になろうとしたとき
ドンドンドン
「コーディさん今いるかい?!」
その後も何度も扉をたたく音がした。
「カール、どうしたんだ?」
「実はジェナがまだ帰ってきてないんだ、何か知らないか?」
カールは父さんの友人だ、そしてジェナさんはカールさんの奥さんだ。
「ジェナが?」
「ああ今日仕事から戻ってみると誰もいなかったんだ、もしかして誰かの家にいるのかもしれないと思って今、村中に聞きに行ったがどこにもいなかった」
「俺は日中森のほうに行っていたから詳しくはわからん」
「・・・」
「だけどノーラなら知っているかもしれない、聞いてくるから少し待っていてくれ」
その後家の中であわただしい足跡が聞こえた。
「カールさん」
「ノーラ、こんな遅くにすまん。ジェナを知らないか?」
カールさんの声は藁にもすがるような声だった。
「えっと、ジェナさんなら昼頃に一度此処に来て「塩を分けてほしい」って言われて塩を分けたんです」
「此処に来たのか!」
「え、ええ、塩を渡した後少し立ち話をして帰っていきました。」
「その後は?」
「すみませんが・・・」
「そうか、ここに来たのがわかっただけでも上出来だ」
カールさんの声は気落ちしていた。
その後カールさんは少し話をしたら帰っていった。
翌朝、朝ご飯を食べていると扉が何度も強くたたかれた。
「コーディ、コーディ!いるか!」
「村長たち、どうしたんだ?こんな朝早くから」
父さんが扉を開けると村長と数名の大人達がいた。
「実はジェナについてだ」
皆が家の中に入り話を聞く。
全員が席に座り話し合う。
「それで村長、ジェナについて何かわかったのか?」
お父さんが村長に問う。
「ジェナは行方不明じゃ。最後にここを訪れたのはわかっているのじゃが、その後がわからない」
村長が父さんを見ながら言う。
「待ってくれ俺達がジェナに何かしたって言うのか」
父さんは村長たちが自分達を疑っていると思ったようで慌てている。
「そうではない、此処に来たのはコーディ、お前の力を貸してほしい」
「俺の?」
「そうだ、この村にいないとなれば残りは森に行った可能性がある。そこでこの村一番の猟師であるコーディにも探索に手伝ってほしいのだ」
お父さんは納得した表情になった。
「なるほど、それでしたら喜んで手伝いましょう」
お父さんは小屋で準備して村長たちと一緒に森のほうに向かって行った。
「行ってらっしゃい!」
「行ってくるよ。それとルーク、森に近づくなよ」
父さん達を僕は見送って、僕もいつもの場所に向かった。
夜、僕は家に戻って母さんと一緒にお父さんを待っている。
「お父さん遅いね」
テーブルには料理が用意されていて、僕とお母さんはお父さんが帰ってくるのを待っている。
それから料理が冷めるまで待っていたが一向に帰ってこない。
すると突如、村のほうから鐘の音が聞こえた。
「お母さんこの音は?」
「ルーク今すぐに大事なものだけ用意して家を出るよ」
お母さんは急いで家の中に戻り荷物を集める。
僕もお母さんに言われて必要なものだけ集めた。
その後すぐに家を出て村の中央にある大きな建物に向かう。
そこには村のほぼ全員が居た。
「ねぇ母さん、さっきの音って」
僕はさっきの音は何か質問する。
「ああ、ルークはまだ知らなかったね、アレはこの村が危険になると鳴るようになっているの」
「それでここに来たの?」
「そうよ、この建物は最も頑丈に作られているから皆ここに集まるの」
話を聞いているとロブとラナを見つけた。二人も僕に気づいたのか近づいてくる。
「ようルーク」
「ルーク大丈夫だった?」
ロブは普通に挨拶してくるがラナは心配していた。
「ラナどうしたの?僕なら平気さ」
ロブとラナが顔を合わせる。
「ルークはなんで集まったのか知らないのか?」
「うん、あの鐘が鳴ったから母さんが急いで僕を此処に連れてきたんだよ」
「なら仕方ねえか」
「あのねルーク、私達が集まったのは」
ラナが何か言おうとしたら入り口のほうが騒がしくなった。
僕達は近づくと村長と武器を持った大人達がそこに居た。
村長は中に入り中央に来ると。
「皆ここにいるな?」
「ええ、確認したら全員居ることになります」
村長が近くに居る大人に確認をする。
「さて既に知っているものも居ると思うが、ここに集まってもらった理由だ」
村長はなぜ皆を集めたかを話し始めた。
「昨日からカールの妻であるジェナが行方不明になっていた、カールは村の隅々まで探したそうだがジェナは見つからなかった」
昨日カールおじさんがとても慌てていたのははっきりと覚えている。
「村に居ないとなると周辺の場所しかなくなる、ワシ達は数名の猟師たちと一緒に周囲を探索した」
村長さんは顔を伏せて話す。
「・・・・ある程度森野中を進んだ所にジェナが居た」
「え?」
周りに居る人たちも僕と同じ反応をした。
「ジェナはどうやら山菜を摘みに森にはいったようだ」
だがここにはいないってことは・・・
「そこを運悪く魔物に襲撃されたようだ」
この言葉に村の皆も静かになる。
「だが話しはこれだけではない、我らが森から戻ってくる途中遠くにある影が現れたのだ」
「ある影?」
「その影を確かめに我々は高い所から見てみた・・・・・そこに居たのは魔獣だ」
村長の言葉に周りがしゃべりだす。
「おい魔獣って確か」
「ああ、ユリウスから聞いた」
周囲の大人達は魔獣の存在を知っているみたいだ。
「ねぇ、魔獣って?」
ロブが近くに居る大人に聞いている。
「ん?ああ、魔獣ってのは魔物の一種でな相当強いといわれている動物なんだ」
「強いってどれくらい?」
「聞いた話だと大きい魔獣一匹で小さい村一つ潰せるらしい」
この言葉に僕達も不安になった。
「静かにせい、魔獣が近くに居たのは確かだがこの村には来ないかもしれん」
村長の言葉に少し不安が無くなった。
「だがその確証はないよって一番安全であろうこの場所に集まってもらったのじゃ」
だがそのとき
ゴォオオガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
耳を劈くほどの咆哮が聞こえてくる。
すると建物に一人駆け込んできた
「村長!魔獣がこの村に向かってきてます!」
「どういうことだ!あいつは森の奥深くにいたんだぞ」
村長は森の深くにいることからやってくる可能性が低いと見ていたみたいだ。
「それが森からゴブリンが出てきたと思ったら、魔獣も一緒に出てきたのです」
どうやら魔獣はゴブリンを追っていて、そのゴブリンが運悪く村のほうに来てしまったみたいだ。
「・・・・どうするべきだ」
村長はどうすべきか迷っている。するとそこに
「逃げるしかないだろ」
その声を聞いて村長は首が取れるんじゃないかってぐらい早く振り向いた。
そこに居たのはボロボロの服を着たユリウス兄さんだ。
「ユリウス、お前はギルドに依頼しに行ったんじゃないのか?」
おそらく村全体の疑問を村長が代弁する。
「俺も本来はそうするつもりだった、だが道中の魔物の数が異常だったから依頼だけしてすぐに引き返してきた。それと俺はこの現象を聞いたことがある」
皆が耳を澄ます。
「魔物群集暴走だ」