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戦争?の裏では

「ええ、一つ予言してあげましょう。ヘクメス王国は戦争には勝つでしょう、ですが亜人の残党により王子達は皆討ち取られてしまうでしょう」


数日前に聞かされたこの言葉にルナリアは激怒していた。


(何を考えているのですか。今あの国に戦争を仕掛けたら容易に勝てるわけがありません!良くても兵士の何割かが失われる・・・最悪ライルたち以外は全滅させられる)


ルナリアの実力を見抜く眼は確かである。自国の戦力とネルファイスにいる数名の人外の戦力どちらが強いかは一番良くわかっているのだ。


『周囲に誰かいるか?』


突如として声が聞こえるがルナリアは慌てない、声の正体がわかっているからだ。


「今は周囲に人は居ませんよ」


ルナリアの影から黒ローブが現れる。闇精霊『タナトス』だ。


『ふむ、場所が変わったか?』


タナトスは周囲を見て思う。


以前は石造りの牢屋だったが今はどこか高い所の一室に居る。


「ええ。二日前にあの地下牢からこちらに動かされました。」

『そうか、まぁいい本題に入ろう』


タナトスは部屋が移ったことをどうでもいいと考え本題に入った。


『お前達の国が軍を出したのは知っているな?』

「はい数日前にベトロント自身から教えられました」

『その軍が明日にネルファイスへの攻撃を行うようだ』


これを聞きルナリアは始まってしまったかと思った。


『だが本題はこれじゃない』

「?違うのですか?」

『ああ、実はネルファイスを挟んで反対側にシグルス帝国軍とやらが陣を張っていたようだ』

「帝国が?」

『タイミングが良すぎるとは思わないか?』


両軍の動きはまるで連動しているようだったことをルナリアに伝える。


「では帝国が関与していたのですか?」

『その可能性が高い』

「・・・・」


(確かにベトロントはライルたちが暗殺されてしまうことを示唆していた、もしその暗殺が帝国軍の仕業でそれをネルファイスになすりつけたのならあの言葉も納得ができる)


ルナリアは以前ベトロントが言った言葉と今回帝国が関与していることからとある予想を立てた。


(ベトロントは帝国と繋がっている、それも相当深く。証拠に地方の貴族とはいえ軍を動かしたのだ皇帝やその側近からの命令でも無ければ無理でしょうね。帝国の住民がネルファイスに気づいてからの軍派遣となれば偶然で済ませられるでしょうがこれは無いわね、ネルファイスから帝国の一番近い町までは馬車でも10日はかかる。ましてや馬車が通ることができない森の中、それも徒歩となると馬車の何倍も時間がかかる。馬だけで行けば時間的には間に合うかもしれないけどなんの異変も無い森に入り何日も遠くの場所に行くとは考えにくい。・・・やはり皇帝もしくはその側近とべトロントは繋がっていると見るべきね。帝国が軍を出したのはベトロントと協力して王国を手に入れようとしているのかしら)


ルナリアの予想は正解だ。帝国の思惑はネルファイスを潰すのはついでだ、本当の目的はライルたちの殺害だ。


『さて』


タナトスの声でルナリアは考えをいったん中断する。


『我が主の言葉だ「ベトロントのところに居るんだろ?ならそこで帝国と繋がっている証拠を探せ」だ』


ルナリアは苦笑する。笑いながら首を掻っ切るしぐさをしているテオドールが想像できた。


「でも外には見張りがいるから動けないわよ」


部屋が変わったとしても見張りが居ることには変わりが無い、だからルナリアは動くことができない。


だが今回は。


『問題ない今回は我がいるのだ。少し待っていろ』


タナトスは移動して扉の向こう側へと消えた。


そして少しすると戻ってくる。


『いいぞ外に出てみろ。』

「え?でも・・・・」

『問題ない、何があっても守ってやる』


ルナリアはためらうがタナトスの言葉で外に出ることを決める。


扉を開けてみると両側に兵士がいた。ルナリアは一瞬ギョッとするが相手が自分に気づいた様子は無い。


「どうゆう事?」


ルナリアは兵士の顔を見てみると眼に生気はなく人形みたいだ。


「・・・彼らに何をしたの?」

『簡単だ幻覚を見せている。彼らの見ている幻覚には先程と同じ光景が見えてるはずだ、お前は部屋の中に居て扉は少しも動いていない』

「なるほど」


ルナリアはこれなら姿隠さずに館の中を歩けると思った。


『だが、それはこいつらだけだ他の連中は普通にお前のことを見ることができるし感じることができる』


その言葉にルナリアの足は止まって周りをキョロキョロと見渡した。


「ちょっとそれを早く言ってよ!」


ルナリアは器用に小声で怒る。


『まぁこれだけではお前はすぐに捕まってしまうだろう。だから少し手を貸してやる』


タナトスがルナリアの肩に触れると、ルナリアの眼に変化が起こった。


「!!!!!!っ・・・・・何をしたの?」


ルナリアはすぐにタナトスに何をしたか問いただした。


『それはお前が一番良くわかっているだろう?・・・・だが一応説明しておこうお前の眼は障害物を見通すことができるようになった』


ルナリアは困惑している、壁を見るとその先まで見えるようになっているのだから。


『これならお前でも問題なく動くことができるようになるだろう?』


ルナリアは頷く。早速屋敷の中を探索しようとしたが。タナトスに部屋に戻された。


「?どうしたの?ベトロントの証拠を探すんじゃないの?」


ルナリアはタナトスに物申すような眼を向ける。


『馬鹿か?その能力を使えるようにするのが最優先だろ?』


タナトスは何当たり前なことをといった雰囲気で返答する。


『しかも今は人の多い昼間だ、こんな時間に動く馬鹿がどこにいる?』

「・・・」


ルナリアは「なら最初に教えてよ」と思った。


その後、メイドによって運ばれてきた昼食を終わってからタナトスの訓練が始まった。


『まず、その眼には二つの能力がある。そこはわかるな?』

「はい、元々私が持っていた人の力量を測るものと。タナトス様に貰った透視する能力ですね」

『そうだ、正確にはその眼自体に魔法を組み込んだだけだ』

「魔法ですか?魔術ではなく?」

『その話は今度にしておこう。まず一つ聴こう、力量を見たいときはどうやっている?』


タナトスが最初に聞いたのはルナリアの能力の発動条件を知ることからだ。


「そうですね、特には何もですね。見たいと思ったときには見えていますから」

『なるほど魔力を多用しないタイプか』


タナトスが確認したのは魔力を使用してさらに多用するタイプかどうかだ。


簡単に言うとオンオフのみできる能力と言うことだ。


『よかったな、もし魔力を多用するタイプの能力だったら難易度が上がっていたぞ』


タナトスが付与した能力は魔力によって発動するタイプなので発動条件がかぶってないのだ。


「私は訓練を受けていませんから魔力を扱うことができませんよ?」

『ん?魔力を使用するのに訓練が居るのか?』


ルナリアの説明では数年ほど訓練して魔力を操作できるようになるらしい。


だがその説明を聞きタナトスは微妙な気分になる。本来(ヒューマン)族は全員多かれ少なかれ魔力を所持している。無論全員に魔力を操作する能力は備わっているはずなのだ。


『(ここまで弱い存在なのだな人とは)・・・・なら今から魔力を操れるようにする』


タナトスはルナリアが死なない程度に魔力を開放する。


ルナリアは動けなくなっていた。鼓動は早くなり冷や汗は出てくる、知らず知らずに体が震えて心臓が掴まれたような感覚がする。


タナトスが魔力の放出をやめる。放出が収まるとルナリアがへたり込む。


「・・・・・・・・・・・・いまのは?」

『魔力を開放しただけだ』


ルナリアは体から何か体から溢れてくる何かの存在を感じ取っていた。


『おそらく実感できただろう。それが魔力だ』

「これが」


ルナリアはいまだに戸惑っている。見えないのに何かがあることがわかるのだ。


『扱い方は魔力を動くイメージするだけだ、そしてそれを眼に集めるように意識してみろ』


ルナリアは眼に魔力が集まるイメージする。すると眼に映るのは部屋ではなく外の風景だった。


『それが透視の使い方だ、次に自分の見たいものを見れるようにするんだ』

「どうやって?」

『簡単だ眼に集まる魔力の量によって透視できる距離が決まっている。夜までに感覚を掴むんだ』


それからルナリアは夜まで透視の練習をした。




その夜、屋敷内を動き回る影が居た。


(ここがベトロントの書斎ですか)


黒い布を被ったルナリアが屋敷内を歩いていた。そして現在ルナリアはベトロントの書斎と思われる部屋に来ていた。


(あるとしたら此処にあるはずなんだけど・・・)


ルナリアは棚や机の中、引き出しを探る。


だがそこには普通の書類しかなく帝国とのつながりを証明するものは出てこない。


(ん~、ここにないってことは他の部屋?・・・は、考えにくいわね。寝室はこの部屋よりも考えにくい。・・・・・・どこかに隠し部屋でもあるのかしッ!)

「キャッ!」


部屋の中を歩き回っていたルナリアは自分の被っていた布を踏んでしまい躓いてしまった。


バサバサバサ


躓いた際に本棚に触れて本が落ちる。


ルナリアは即座に透視を使って人が気づいたかどうか調べる。幸い誰にも気づかれなかったみたいなのでルナリアは安堵した。


そして落としてしまった本を戻すときに違和感を感じた。


(あれ?本棚の奥に何かある)


ルナリアは本を取り出して調べてみると奥には金属板が貼り付けられていた。


(どうやってはずすんだろう?)


ルナリアは板をはずそうとするが一向に外れない。光で照らして良く見てみると角に特殊な形をした鍵穴が見えた。


(何かしらの鍵が必要なのね?でも先に中身を見させてもらうわね『透視』)


金属板の中には鍵付きの箱がある。その中もさらに透視で見てみると何かしらの書類があるのが見える。


(あった!内容は・・・・当たり!帝国とのやり取りの書類だわ!)


ルナリアは目的の者を見つけられて安堵していた。そして屋敷内を透視して鍵を探す。


結構な時間を掛けて鍵を探し当てることができた。でもその場所が問題だった。


(う~嫌なもの見ちゃった・・・・・よりにもよって何でベトロントの首に掛けられているのよ!)


ルナリアが見たのはべトロントの寝室だ。鍵はベットに横になっているベトロントの首にかかっていたのだ。そしてベトロントはなんと()でベットに横になっていたのだ。そして最悪なことにベトロントの横に同じように裸で居る女性が居る。その光景をルナリアは見てしまったのだ。


「・・・・・・・絶対あの部屋には行きたくない」


ルナリアの心からの呟きだった。


『どうしたんだ?』


その呟きが聞こえたのかタナトスが現れる。


「実は―――」


ルナリアが今まで何があったかを教える。


『なるほどな、なら我がこの金庫を開けよう』


タナトスがレイピアを使って空けようとするが、ルナリアがそれを止める。


「待って壊す以外で空けられないかしら」

『お主遠慮がなくなってきたな、まぁどちらでもいいが』


タナトスはレイピアを仕舞って真っ黒い腕を鍵穴に伸ばす。すると腕が粘土のように形が崩れ鍵穴にはまっていく。


そして少しすると「カチッ」という音が鳴りタナトスは腕を元に戻す。


『これで問題ないはずだ』

「ありがとうございます」


ルナリアはお礼を言い箱を取り出す。


その箱の鍵はダイヤル式でできていて右、真ん中、左の0から9までの数字を当てはめるタイプだ。


『ではこれをもって戻るか』

「はい」







翌朝、朝から屋敷の中が騒がしくなっている。


原因はモチロンあの箱だ。ルナリアのところにもベトロントが来たが監視している兵士達が昨日ルナリアのアリバイを証言したため候補から外れた。他にもメイドや庭師、給仕などいろいろな人が疑われたがその全員がアリバイがあり疑いが晴れた。だが盗まれた本人であるベトロントは荒れに荒れた。結局身内に犯人はいないと考えて外部に視線を向けた。ベトロントは自分の動かせる手駒を全部動かして書類の捜索に当てた、信頼のできる騎士、スラムの裏組織、暗殺者などなど。







その後、数日が過ぎる。


この数日間ルナリアは穏やかな時間を過ごしていた。


無論それはご飯の中に持ってあった薬をタナトスが中和したからであり、本来なら自分で思考することができなくなり命令され動く人形の用になっていたのだ。


すると廊下からあわただしい足音が聞こえる。ルナリアが壁に耳を当て盗み聞きをする。



「くそっ!その知らせは本当なのか!」

「はい、伝令の者の話ではネルファイスの侵攻は失敗、城壁に取り付くこともできなかったようです」

「チッ!これでは怖気づいた者がネルファイスたちと和平を結ぶ可能性が出て来てしまう。そうしたらルナリアが亜人に襲われていないのがわかってしまう。その前に人形にし亜人から救出したということにせねば!」


足音はどんどん近づいてくる。


「暗殺のほうはどうなったかわかるか?」

「・・・・それが不明です。・・・・な、なにぶん戦闘が終わった時点で慌てて伝令を出したらしく」


ベトロントではないほうの声は恐る恐るいっているのがわかる。


「まぁいい奴らも馬鹿ではないだろう、おそらくネルファイスの手の者だという証拠を残し暗殺を行うだろう」

「・・・阻止されたという可能性は?」

「おそらく無いと思うが・・・なにせ奴らは帝国の特殊部隊だ。長年王国に潜伏していた者達だ他の兵士達にも信頼されている。ニコル殿下は返り討ちにする可能性もあるがそれも考慮しての暗殺だ。問題ない」


ベトロントの声は自信に満ちている。


「それよりもアレ(・・)は持ってきているか」

「モチロンです。絶対に足がつかないように持ってきたものも殺しましたので此処にはたどり着かないでしょう」

「ならばいい。それにしても食事に何度も薬を盛ったのに効果が無かったのだな」

「おそらく耐性をつけていたのでしょう、王族が操られるなど言語道断ですから」

「ふん、小賢しい。だがこの薬は大丈夫なのだろうな?」

「はい、帝国でも最も強い薬です。ほんの少し摂取しただけで操り人形になるはずです」


足音が扉の前まで来る。ルナリアは壁から離れ椅子に座りなおした。ベトロントは門番と会話しているようだ。


「様子はどうだ?」

「はい!以前と変わらず、まったく問題ないです」

「・・・・ならばよい」


そう言いベトロントたちは部屋に入ってくる。



入ってきたのはベトロントと商人の格好をした人物と護衛の騎士数人。


「お久しぶりですルナリア殿下、此処での住み心地はいかがですかな?」


ベトロントの笑顔にルナリアも作り笑いで答える。


「問題ないですよ、ただ少し息苦しいですけど」

「それならあと少しで開放されますよ」


ベトロントの代わりに商人の格好をした人物が前に出てくる。


「お初にお目にかかりますルナリア殿下」

「貴方は?」

「私目はバトリアと申します、侯爵様と親しくさせてもらっている商人です」

「そう、それで用件は?」

「実は侯爵様にとある品をお求めになられまして。実はそれが少々危険な品物であるのです、はい」

「それで?」

「私としても危険な品物はできるだけ販売したくないのでございます。ですが侯爵様たっての願いですのでこう提案させていただいたのです『使用する際は私が自ら行うなら販売いたします』と」


そういって商人は指を鳴らすすると後ろにいた護衛がルナリアを拘束するように動く。


「ご安心ください殿下すぐに何も感じなくなりますから」



護衛がルナリアを組み敷こうとするがとある存在がそれを邪魔する。


ルナリアは余裕の表情をしている。なぜなら


『貴様ら、我が守護しておる人物に手を出そうとはいい度胸だな』


ルナリアの影からタナトスが出て来る。


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