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戦争???

ティアが帝国軍を消した翌日、ヘクメス王国に動きがあった。


「報告しますヘクメス王国軍がカウェルに向けて前進してきます」


目の前にいるウサギ耳の男の報告を受けている。


「わかりました、持ち場に戻ってください」

「はい!」


ウサ耳男は持ち場に戻っていく。


そのとき俺は


(兎人(ラビットマン)の男って全員男の娘(おとこのこ)みたいだよな)


という緊張感もかけらも無いことを考えていた。


兎人(ラビットマン)とは言葉通り兎の獣人だ。姿は兎の耳と尻尾をもった人そのもので女性はモチロンのこと男性も華奢で筋肉質とは程遠い姿をとっている。+なぜか女性のような顔のようなものばかりという種族だ。


「なんかへんなことを考えてるわね」


最近思うんだがティアたちは俺の思考が読めるのか?


「テオって感情が出やすいのよ」


そう言われるとこっちに来てから表情を取り繕ってないな。俺は感情を読み取らせないように表情を偽る。


「よし」

「?・・それよりこっちに侵攻してくるみたいだけど大丈夫?」

「お前もわかっているくせに聞くなよ」










ヘクメス王国軍は進軍を開始していた。


「進め!わが国の威を示すのだ!」


そういい貴族達は進軍していく。


ヘクメス王国軍はバラバラになっていた三つの軍を一つにまとめて進軍している。そして当のライル達は群の中でも後方でなおかつ離れた場所にいる。


なぜ軍を一つにしたかというとネルファイスへは森を横断する必要があり、各自にゲリラ戦を仕掛けられたら被害が大きくなると判断したからだ。



まもなく森に突入する時点で異変は起こった。


最前線にいた兵士達が空を舞ったのだ。その後、何度も兵士が空を舞い軍の侵攻が止まる。


「何事だ!」

「そ、それが!アイツが!」


おびえた兵士が指揮官らしき貴族に報告する。


兵士が指差した先には少し前に会議場に盛り込んできた者の姿が映った。


「ふぅ~こんなもんですか、たいしたことは無いですね」


そこには槌を肩に担ぎ、息を吐くクレアの姿が有った。


「それじゃあ殺戮(オシゴト)しますか」


その声を聞くといつの間にか貴族は地上を見ていた。








{えげつないな~}


蹂躙劇(それ)を見ていたチールは引いていた。


「どうしたのチール君?」


チールを抱えているメルダはチールに問いかけた。


{大丈夫や~問題あらへんよ~(あれは子供には見せちゃならんもんや)}


チールは今戦場ではどんなことが起こっているかをメルダには伝えない。


何せその内容が、人を爆散したり、宙を舞って地上にしみを残したりといった無残な光景だ。


{ん?すまんがメルはんワイはグラはんのところ行ってくるで}

「わかりました、気をつけてね」

{わかっとるで、ステラはんもよろしゅ~な~}

「わかっています」


チールはメルダたちの馬から飛び降りて駆けていく。








前線ではたった一人に進路をふさがれていた。


「行け!やつを討ち取ったものには褒美を与える!」


そういって貴族は兵士を鼓舞するが兵士はことごとく肉塊に変えられる。


そういったことを何度も繰り返していると多くの兵士は距離をとりクレアを囲み一斉に槍で刺し殺そうとする。


だが


「甘い!」


クレアは槌を大地に思いっきり打ち付けると周囲の地面が盛り上がり兵士達を飲み込んでいく。そしてその盛り上がった槌を思いっきり殴りつけると散弾みたいに弾け兵士達を襲っていく。


これでは埒が明かないと思ったのか指揮官は兵をいったん下げる。


「さて次はどうするのでしょうか?」


クレアは何が起こるのかと楽しみにしている。


「お前一人にいいようにされるのは不味いからな」

「へぇ~ではどうしますか?」

「弓兵、放て!」


盾と槍を構えた兵士の後方から何百もの矢が放たれる、下手したえら千ほどの数になるぐらいの量だ。


「これでやっただろう化け物が!さてでは進軍を――」


指揮官が進軍させようとするとその場で威圧的な何かが向けられた。


「なに言っているんですか~貴方達の相手は私でしょう?」


目の前には弓矢だらけのクレア・・・ではなく先程とまったく同じ姿のクレアだ。


「どう・・・して」

「こんな矢で私を殺せるはず無いでしょ~」


クレアが微笑むと数名の兵士が怯える。


そのうちの一人が恐怖で矢を放つとクレアの足元から土が蠢き薄い壁を作り矢を防ぐ。


それを見て指揮官は理解する。


「そうかそれで防いだのか」


だが理解すると同時に絶望が襲った、遠距離は先程の壁で防がれ近距離は手も足も出なかった。


「どうすれば・・・・」

「来ないのですか?それではこちらから行きますね~」


クレアが攻勢になろうとするとヘクメス王国軍から援軍がやって来た。


「ルーカー卿だいじょうぶですか!」

「あ、ああ、だがしかしアイツは我々が想像している以上に化け物だ」

「そうですか、ではこちらは精鋭をぶつけなければ」

「おはなしは以上ですか~」


クレアが攻勢になろうとしている。それを見た指揮官達は即座に動き出した。


「全体下がれあの化け物から距離をとれ!」

「我が騎士団は前方に出よ!」


兵士が下がり鍛えられた十数名の騎士が前方に出てくる。


「今度は楽しめますかね~」


そういって戦いは始まる。




クレアが槌を振るうと大盾をもった騎士が前に出て防ぐ、そして左右から別の騎士が剣で攻撃してくるがクレアは距離をとってかわす。距離をとったと同時に火の玉が飛んでくる、後方の騎士が発動した魔術だ。さらに別の騎士が大盾の騎士を治療し前線に戻す。その間に別の大盾を持った騎士が攻撃を防ぐなどして応戦する。


この後も善戦する騎士達をみて、指揮官たちは安堵する。「これならやれると」だがそんな期待も少しすると崩れ落ちる。


クレアが先程と同じように槌で攻撃し大盾がそれを止める、が今度は受け止めきれずに大盾の騎士が後方に飛ばされる。


「私の力って日常では不便で仕方が無いんですよ~」


急に話し始めたクレアを騎士達は油断無く見る。


「だから日常では力をセーブするようにしていたんですよ~」


クレアが話している間に比較的に身軽な騎士が近づき剣を振るう。だがそれを紙一重で避けるクレア。


「今まで支障がなかったので力をセーブしていたことを忘れてましてね~」


クレアは先程とは比べ物にならない速さで槌を振るう。攻撃していた騎士は早くなった攻撃を避けることができずに直撃してしまい、絶命した。


「さて~これで一人目ですね」


クレアは次の獲物を見定める。騎士達は多少動揺したがすぐに気を引き締めた。だがそれでも本来の力を出したクレアには敵わず戦死した。









その後もクレアによって進軍を止められたヘクメス王国軍。次に取った行動は一定の戦力でクレアを足止めし他の戦力がネルファイスに進軍するというものだ。


だがその考えも間違いだとすぐにわかる。クレアを足止めし迂回して進軍しようとすると森から幾つもの矢が飛んでくる。


この矢はシグルス帝国に使われた魔術が付与されている、おそらくこの後どうなったか予想できたものは多いだろう。


王国軍は幾度の爆発により軍を止める事しかできなかった。


そして思い知ったネルファイスに侵攻するということはあの化け物を打ち倒し進むか爆発する矢を凌ぎながら進軍するしかないと、それならばと今度は持久戦に持ち込もうとしたがネルファイスの攻撃はそれだけではなかった。










カウェルの城壁の上ではとある準備がされていた。


「テオ、座標を教えて」


ティアが魔弓【アルテミス】を構える。


アルテミスは双剣【ジェミニ】の柄と柄をあわせることで現れるもう一つの姿だ。ジェミニ自体は剣の付け根に翡翠を埋め込められた大きく反りの入ったサーベルだ。


柄同士を合わせることにより姿を変えることができる。弓の形をとれば剣先から剣先に魔力でできた弓弦が現れる。そしてティアの右手には1メートルを超える矢が握られる。この矢はアルテミスの能力である【魔矢創造】で作られたものだ。矢には幾重にも紋様が入っており観賞用にできるほど綺麗なものだ。


それを弓に番える。


「テオ!」


おっと他のほうに思考がずれてしまった。俺は此処からヘクメス王国軍までの立体情報をティアに送る。


「やっぱり私がやるのとは段違いね!」


ティアは弓を引き絞る。するとティアの足元に魔術式ができ、それと同時に矢の先に円錐型を作るように何重にも魔術式が出てくる。


足元に現れたのは無属性魔術『座標把握(ポイントチェック)』、これは使用者の周囲を把握するための魔術だ。そして矢に付与されているのは『分裂』『加速』『風圧耐性』『衝撃強化』『貫通強化』『重力強化』『回転』『磁力付与』だ、効果は文字通りだ。


ティアが矢を放つ。矢の軌跡はヘクメス王国軍の上空を目指している。







ヘクメス王国軍では風を切る音が聞こえていた。兵士達が音の正体を探るように見渡す。すると一人の指揮官が上空に何かが飛来してきているのがわかった。指揮官は兵士に上に盾を構えるように指示する、そして自分も上に盾を構える。


だが音がおかしい、先程まで一つの風きり音だったのがいくつにも増えている。おかしいと身を盾に隠しながら上空を見上げると一つしかなかった影がいくつにも分裂していく、そしてそれはどんどん数を増やしている。


そして落下してくる物を盾で防ぐと一つの衝撃で膝をつく。たった一つでこれだこれがいくつも降ってくればどうなるか理解できるだろうか。









俺は城壁の上からティアの放った矢がどうなるかを見ていた。


ティアの矢は軍の上空に来ると矢が分裂しその数をどんどん増して軍に飛んでいく。1が2に2が4に倍々になって飛んでいき最終的には百万を超える数となって軍に降り注ぐ、さながら豪雨のように。


ちなみに飛んでいくうちに数が増えたのは【魔矢創造】で作られた矢の特性だ。


だがティアは満足していないのか第二射の準備に入っている。


「おいティア、ライルたちには当てるなよ~」

「わかっているわよ!」


俺がライルたちの情報を正確に渡してティアがそれを参考にしながら範囲を決めて矢を放つ。放たれた矢は軍の後方には一切被害を出さずに前方にいる軍にだけ被害を出す。


「さすが~」


分裂した矢は一定の範囲内で収まるようになっており何かしら外部からの影響が無ければ外部にまったく被害が出ないようになっている。


よって急に嵐になるなどの場合が無い限りライルたちに被害は無いだろう。



「ん?」


どうやらヘクメス王国軍に動きがあった。


「撤退してるの?」


ティアもそれに気づいたみたいだ。ヘクメス王国軍は兵士を引き上げて撤退を選んだようだ。


「当然ね、近距離ではクレア一人に対処できないし、迂回しようとしたら爆発する矢が飛んできて、持久戦に持ち込もうとすれば私の矢で攻撃される」


聞けばヘクメス王国の勝ち目なんて無いように聞こえるな。


「さて次はどうなるかな~」


クレアも帰還して今日は終了した。











撤退したライル達は離れた場所に陣を張って集まっていた。


場の雰囲気は敗戦したときのようなものだった。


「「「「「「・・・・・」」」」」」


会議では誰もしゃべらない。


(このものたちも相手の強さがどんなものか理解したみたいだな)


その後も一切会議は進まず解散になった。


「兄上」


ライルは声のする方向を見てみると、そこにはグランとニコルがいた。


「兄上の会議はどうでしたか?」

「グラン、たぶんそっちと同じような感じだろう」


ライルの言うとおりグランの方もほぼ無言の会議になっていた。


「兄上達のほうはそんな感じになっているのか」


ただ一人、ニコルは指揮権を渡していたので責任がすべて指揮権を渡された貴族達のほうに向いたので面倒ごとが一切無かった。さらに加えてニコル直属の兵は一切損害が無かった。


「しかし面白いことになりそうだね」

「どういうことだニコル?」


ライルとグランはニコルを見るが、当のニコルは笑っているだけだ。


「明日になればわかるさ」


ニコルはそう言って自分の陣地に戻っていった。


「僕も戻るよライル兄さん」

「ああ」

「それじゃあ、おやすみ」


グランも自分の陣地に戻っていく。


ライルも悩みながらだが自分の天幕に戻っていく。ライルは自分用に用意されたベットで眠りにつく。










ライルが眠っている間に動くものがいた。


「いいのですか?指示では――」

「しかたない、奴らがあそこまで強いとは思わなかった、だが奴らも和平を望んでいたからなやりようはいくらでもある」

「ですが」

「くどい、お前達は即座に動くんだ」

「・・・わかりました」


片方がその場を離れる。










静まり返った陣地ではぐっすりと眠っているライルに近づくものがいた。天幕の中で明かりもない真っ暗な空間で寝ているライルに向けて短剣を取り出す。十分近づき短剣をライルに突きたてようとする。


キィーン


金属同士がぶつかり合った音がその場に響く。


「なっ!」


暗殺者は驚く天幕には誰もいないことは確認した。天幕の隙間から月明かりが差し込み邪魔したものの姿を出す。


先程まで何も無かった場所に突如として現れたのは。見えたのは鉛色の羽が月光で銀色に輝く大きな鳥だ。


「ありがとう、ヂル」


ライルは落ち着きながらヂルの体を撫でる。なぜライルは落ち着いているのかというと襲撃者が来た時点でヂルが起こしてくれていたからだ。


「なぜ私を狙う?」


ライルは暗殺者を見ながら問いかける。暗殺者はどうにか逃げ出そうとしている。先程の金属音で兵士達が集まってくるのは明白なので即座に逃げ出したかったのだ。だがライルを羽で包んでいる鳥が問題だ、うまく逃げ出せても周囲は見渡しやすい草原、さらに今日は満月で光源は十分にあることから逃げ出すのは至難の業だ。最善なのはここでライルを殺し自決するのが一番なのだが、あの鳥がそれをさせてくれない。


暗殺者がここで取った行動は逃げることだった。だが行動に移そうとすると鳥が全速力で突進してくる。それをまともに受けた暗殺者は衝撃で気絶してしまった。






また別の場所では


{まさかその程度でワイの守りが抜けると思ったんかい}


天幕の上に座っているチールがつぶやく。


天幕の中では動けなくなった暗殺者が横たわっている。


{さて他のほうはどうやろな~}








キィン、キィン


「あはははは」


ニコルの天幕では剣戟が繰り広げられている。


ニコルは終始笑顔で楽しそうに、それを見て暗殺者は冷や汗をかく。そして時間が過ぎていくと外から援軍が来る。剣がぶつかる音が鳴り響けば兵士達が何が起こっているか確かめに来るのは当然だろう。


「そろそろ頃合か~、まぁ楽しかったよ暗殺者君。『身体強化(フィジカルアップ)』」


そういいニコルは剣に魔力を流し込む。すると剣が淡く黄色に輝きニコルの体も同調するように黄色に輝く。


準備が終わり先頭が再開するがものの数秒で暗殺者は気絶させられた。


「ふぅ~やっぱりいいね~」


ニコルは手に持っている剣を眺める。


「・・・・・そういえば、まだこの剣には名前を付けてないって言ってたな・・・・・・じゃあ僕が付けよう・・・・『ジーク』、これにしよう」


ニコルが剣に名をつけたことにより刀身に紋様が現れた。


(なんか出てきたけど・・・なんだろ?あとでテオドールに聞いてみよ)


これは所有者を定めるもので本人、もしくはその子孫でないと剣の本当に力が引き出せなくなってしまう。





こうして騒々しい夜が過ぎていく。


【ジーク】:魔剣

品質★6

製作者不明

【説明】

元は名も無き魔剣だったが『ジーク』と名付けられた魔剣。

攻撃力:657

倍率:斬1.0打0.4貫0.7

スキル

【所有者固定】【身体強化】

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