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予定通り

ステラ達が王都に辿り着いたその日にネルファイスではクレアが同胞を助けることが決まった。


世界樹の近くに建てられた城【メキニアル】では一室で三人が話し合っていた。


「では、チールに連絡お願いしますね」

「わかったよ」

「クレア無茶しないでね、最悪すぐに逃げてね」

「いえ、これは国の面子がかかっているんで早々逃げませんよ」


ここは女王であるティアのために作られた部屋だ。そしているのは(テオドール)とティアとクレアの三人だ。


「本当のことを言えばオルフェウス様にこの任をやってもらいたかったのですけど」


ティアが残念そうな顔をする。俺の本体であるクシャルのほうは既に元の場所に戻っている。


「それは仕方が無い師匠も暇じゃないんだろうし」


嘘です、普通に暇です。


「それよりも準備は大丈夫か」

「ええ既に亜空庫にしまっているので大丈夫です」


クレアたちには唯一魔法である『亜空庫』を教えている。


「それで到着予定は明日でいいんだよな」


普通はもっと時間を取ると思うのだが。


「普通ならそうなのでしょうが今は少しでも人手がほしい時期ですので急いでいきます。それに全速力で行けば1日経たずに着きますので」


俺やチールだと1時間以内につけるがな。


「まぁチールにはネルファイスの使者が行くって伝えとくよ」

「はい、お願いします。ではティア様私はこれからヘクメス王国に行ってまいります」

「本当に気をつけてね」


そういいクレアはヘクメス王国に向けて出発した。







翌日、クレアは無事ヘクメス王国の王都にたどり着いた。


そして城壁まで来ると武装した兵達が門からでてきた。その中の隊長らしき人物が話しかけてくる。


「お前が連絡に会ったクレアとかいう奴か」

「そうですと答えておきましょう。そして、この態度が他国の使者に向けられるものなのですかね?」

「はっ!亜人に敬意なんぞ払う馬鹿がどこにいるのだ!」


クレアは頭痛がしそうな思いだった。


「(これが使者に対する態度だったら・・・・・)まぁいいです、さっさと案内をお願いします」

「いいだろう、だがまず武器を渡してもらおうか」


周りの兵士はニヤニヤしている。


「いいでしょう」


クレアはそういい腰についている()を渡す。


「よしでは付いて来い」


兵達の隊長に促されて王城までくる。


だがそこでは城までの道での態度とは違って歓迎の様子が見受けられた、道の脇では兵士が旗を掲げ

アーチを描いている。そしてその先にはグランとメルダが護衛とともに待っていた。


「わが国にようこそ使者殿」


グランは笑顔のままクレアを迎える。


「以外ですね、私は歓迎されてないと思っていたのですが」

「新しくできた国とはいえ使者を無下には扱いませんよ」

「そうですかではあの城門での扱いは歓待の証だったのですね」

「城門?」


グランは連れてきた隊長に視線を向ける。


「どういうことだ?」


その視線は暖かさや優しさとは程遠かった。その視線を向けられて隊長は冷や汗を流している。


「わ、我々には亜人がこちらに来るので城まで案内されるようにしか、つ、伝えられていませんでした!」

「なんだと?」


グランは少し考え込む。


「まぁいい、その問題は後で調べるとしよう。それではクレア殿、王がお待ちになっておりますこちらに来てもらえますか」


グランは問題を後回しにしクレアを王に会わせることを優先した。


そして城内を通りながらグランが話しかける。


「失礼しましたねクレア殿、こちらの不手際で嫌な思いをさせてしまって」


グランはクレアの顔を見ながら謝罪する。


「いえ、あれくらいならまだ問題ないですよ」

「それでもあの者たちには然るべき処罰を与えるのでそれで満足していただきたい」

「わかりました。それでこの問題は無かったことにしましょう。そしてグラン殿下は今回の事は」

「無論こちらとしても状況とこれからどうすればいいかは聞いているよ」

「話が早くて助かります」

「こちらとしてもメリットがあるからね」


二人は王の待つ扉の前までやってきた。


「それでは健闘を祈るよ」


グランは兵士に扉を開けさせて中に入る。





「父上、ネルファイスの使者が到着しました」

「ご苦労だ、グラン」


王族以外の貴族は疑問を浮かべている。


そしてこれから寸劇が始まる。






「さてようこそわが国へ、ネルファイスの使者よ」

「ご健勝で何よりですヘクメス王国国王レグルス・ザラ・ヘクメス様」


国王は歓迎しクレアは友好的に話し始める。だがそこに


「陛下この者は?」

「新たにできた国の使者である、いや復興した国だな」

「ネルファイスといえば昔に滅びた国ではありませんか。それが復興したとおっしゃるのですか」

「無論だ、現にルナリアはそこにいたわけなのだから」

「真実ですか?ルナリア殿下」


「ええ、真実です」


これはテオドールの案である。ルナリアが捕らえられていたのはティアの故郷だがのそれを新しくできた国にいたことにしてルナリア経由で王にその存在が伝わったことにしたのだ。


「今回使者殿が来た理由は友誼を結ぶために来たのだ」


そこからは貴族達の声が次々とあがった。ほとんどが亜人との友誼などは考えられないとの声だ。その中に亜人を侮蔑(ぶべつ)するような声も上がったりした。


「陛下、独断でこのようなものたちとの会談を設けたのですか」

「すまないとは思うが、これが一番国に利益になると思ったからだ」


これには貴族達は口を閉じた。


「ではこれより使者殿との話し合いに入りたいと思う」


この王の一言でクレアが話に入れるようになった。


「まずはこの場を用意してくださった陛下に感謝します」

「うむ、我々も友好的に接していきたいからな」

「なら話し合いに入る前に一つ宣言させてもらいたい」

「よかろう」

「ではまず我々の同胞を開放してもらいたいのです。速やかに開放してもらえるのなら私達もこれまでのことは水に流します。そして友好的とおっしゃるのなら相互に200年の不可侵条約を結んでもらいたいのです」

「なぜ200年なのだ?」

「我々は長命種以外はそのぐらいが限界です、そしてそのころになればこれまで何があったかを知るものは少なくなりますので」

「なるほど」

「ただそれはどのような関係か語り継ぐものがいなければの話です、無論我々もそのような存在が出ないように留意します」

「子孫にそのような感情を出さないようにするための不可侵条約か」

「そうです」

「だがもし自分で戻りたくないと思うものが現れらのなら?」

「その場合は個人の意思を尊重しましょう。それが個人の意思(・・・・・)ならば」

「あいわかった、そしてみなの者どう思う」


二人の独特の雰囲気に飲まれて貴族達は話に割って入ることができなかった。


そして王の問いかけで話に入ってこれた。


「信用なりません!」

「我々を騙す嘘であることも!」

「亜人の要求なぞ飲む必要がありません王よ!」

「亜人どもが我々に勝機などありません!」


「陛下に一つお聞きしたい、なぜのこのような亜人をこの場に招いたのですか?」


ベトロントが非難するように陛下に尋ねる。


「それは簡単だ交渉する利益と交渉しない不利益があるからだ」

「利益と不利益ですか、それは何か尋ねても?」


貴族の一人から声が上がる。


「そこからは私が話しましょう」


クレアが陛下に変わって答える。


「まず私達がこの国にもたらす利益は二つ、一つは帝国の防波堤になることです。現在、私達の国はこの国と帝国との間にあり両者の進行の妨げになるでしょう」


この言葉にベトロントが反応する。


「はっ、それは進行を退けられて初めて言えることだろうが」

「そうですね、国を作り出したばかりの私達をそう判断するのは普通ですが、ひとつ教えときます。私達の最高戦力がラガラ王国の軍と交戦し壊滅させました」


この言葉にはベトロントも驚いている、そして殆どの貴族がハッタリだと思っている。


「何をばかげたことを・・・」

「信じる信じないは貴方達しだいです。そして二つ目の利点ですが一部地域の交易です」


これには王様以外疑問を持った、なにを交易するのかと。


「これです」


クレアが懐から出したのはうっすらと金色に色付いている液体の入っているビンだ。


「これはエリクサーです」


これにはこの場にいる皆が驚く。


「実際、これをお使いになり陛下は回復なされました」


ステラの剣のことを話すとややこしいことになることが予想できるので、ネルファイスから持ち帰ったエリクサーによって回復されたことにした。


「うむ、効果は我が確認しておる。本物で間違いない」


王がどうやって回復したかを知って、これをほしがる貴族は少なからずこの場に数人存在した。


「彼らを受け入れるのにはこのような利益が存在するのだ」


「ですが王よ、それだけのためにかの国や亜人たちの存在を」

「それに亜人たちを引き渡すとなると労働力が」


一人の貴族がふと言葉を漏らす。


「労働力?」

「ハっ、いえ、あの」

「労働力とはどうゆう事ですか」


クレアは貴族の言葉に反応し、空気がピリピリし始めた。


「何、簡単だ奴隷に強制労働させているだけだよ」


そこにベトロントがどういったことをしているか教えてくれる。


「宰相」

「陛下、残念ながら回復させてもらったことに恩を感じておられるのでしょうですが。我々(ヒューマン)族は出来損ないの亜人どもを支配する側なのです」


宰相のこの言葉に他の貴族達も追従する。


「そうです亜人どもと和平を結ぶなど」

「それに鉱山で働かせている亜人がいなくなると我々は困りますぞ」

「亜人達の好きにさせてよろしいのですか!」


貴族が好き放題に国を罵倒する。


「なるほどそれが貴方達の返答ですか」


この場にクレアの声が響く、この言葉にベトロントが反応し陛下のほうを向く。


「陛下、残念ながら助けられたからといって亜人共の味方はできませぬ。これまでの関係から対等になど無理でございます。言葉では和平を望んでも王弟のように、またいつ牙をむくかはわかりませぬぞ」

「そうか・・・クレアよ今回は力になれずすまなかった」


いろいろ物申したいが王は飲み込み残念な顔をする。


「そうですかそれは残念です」


だがクレアは少しも残念な表情をしてない、代わりに決意に満ちた顔つきになる。


「では変わりに宣言しましょう


わが国ネルファイスは同胞を開放するために動くことを宣言する。たとえどんな手段を使ってもです」


これには戦争も辞さないという意味も含まれている。


「下等種が本性を表したな兵士を呼べ」


ベトロントが兵士を呼ぶ、すると扉から何十人ものフルプレートの兵士が何人も入ってくる。だがクレアはそれに一切眼を向けずに陛下の顔を見て。


「では今回は戻ります、もし話を聞くようであればネルファイスにお越しください」


そう言い出口へと足を運ぶ。兵士はそれを阻止しようと道をふさぐが。


「邪魔です」


ドコからともなく取り出した戦槌【アレス】を取り出し向かってくる兵士に振るう。


すると当たった兵士はトマトのように爆散する。


「「「なっ!」」」

「道を開けてください、でないと死にますよ」


兵士達は尻込みする。


「兵士達よ、この場は引くのだ」


そんな兵士達は王の一言で道を開ける。


「感謝します陛下」

「我に免じて民には手を出さないでくれ」

「それはそちらの対応次第です」


そういい今度こそクレアは出口へと向かった。








クレアがいなくなった王座の前では沈黙が保たれていた。


「はぁ、予想はしていたがこうなったか」

「陛下、なぜあの者をこの場に呼んだのですか」


王は答えず代わりにルナリアが話す。


「それはあの者たちを知っておいてほしかったのです」

「ルナリア殿下」

「私には人の強さを測ることができます」


この言葉に驚くものはいなかった。


「それはよほど田舎者でない限り知っていますぞ、ルナリア殿下」

「闘技大会の結果を何年も言い当てるなど普通はできません、ですが殿下はそれができてしまう。いまさら殿下の眼を疑うようなものはこの場にはいないでしょう」


ルナリアは力量を見切ることができるのは貴族達の間では有名みたいだ。


「私は亜人の所に拘束され連れて行かれたのは皆さんご存知だと思います」


王宮にいる貴族なら知っていて当然の情報だ。


「そこで私は見てしまいました」


貴族達はルナリアが震えているのに気づく。


「(ゴクッ)・・・・・なにを見たのですか」

「・・・一人で一つの都市を相手にできる化け物を」

「化け物・・・それらを亜人どもは使役していたのですか?」

「・・・言い方が悪かったですね、化け物といいましたがアレは紛れも無く亜人です、つまり」


此処から先は言わなくてもわかるだろう。


「ひとりで軍に対抗できる亜人がいるのですか?!」

「ええそうです、正直正面から亜人たちと戦えば負けるのは我々です」


ルナリアは断言したことにより、貴族達はことの重大性を理解した。


しかし先程までやってきた使者を下に見て罵倒に似た言葉を何度も吐いた。


「私は国に被害が及ばないように彼らと和平を結ぶつもりでした・・・・それも失敗に終わりましたが」

「ではあのラガラ王国の軍を滅ぼしたというのは」

「おそらく本当のことでしょう」

「そんな・・・・」


此処でようやく王が口を挟む。


「まぁあのような事態になってしまったが、今後どのようにするかを皆で話し合いたいのだ」


その後、話し合いは夜まで続いた。











「くそ!こうなってしまうとは予想外な!しかしこれはある意味ではチャンスではあるな」


とある部屋で一人が不気味に笑っている。












夜遅く王の寝室では王族が全員集合していた。


「しかし本当にこのような結果でよかったのか?裏で手を回せば和平を結ぶことができたのだが」


レグルスは目の前にいる小さいものに話しかける。


{問題ないで、てか今回はネルファイスが復活したって事を宣言したかっただけがやから}

「それにしてももう少しやりようはあったのでは?」

{無理やろ、ちゃんと力量がわかっているルナはん達なら侮らずに済むけどな。あの連中はちゃうやろどこまでいっても亜人は亜人て態度で接するとおもうんや}

「それは」

{まぁ今までならそれでよかったんけどこれからはアカンのや。でも連中は理解できひんなら手っ取り早くわからせるようにしたらええ}

「それであの案か」



あの場での結論は、領内にいる亜人を引き渡すかは領地を持っているものに任せる。これだ。つまり抵抗せずに亜人を引き渡せば穏便に済ませられる、だが引き渡さずにいると戦いという結末になる。


ちなみに王の直轄地では亜人を速やかに引き渡すことにした。現在亜人たちを速やかに集め引き渡す用意をしている。



{まぁ最終的には貴族らがさっきの条件に賛成してくると思うとる}


ステラはこの言葉に違和感を覚える。


「・・・もしやクレアに亜人たちを」

{正解や}


ステラは額に手を当てる。


「ちゃんと手加減できるのでしょうか」

{そこはワイよりステラはんのほうがよう知っとるやろ?}

「・・・信じましょうか」


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