新婚に仕事は頼みにくい
俺は本体(以降クシャルと呼ぶ)とグレールでラガラ王国をつぶす。一応勧告もした返答が矢を放つという行為だ、ならこちらも攻撃をする。
「上がれ」
グレールに上昇するように指示する、そして後ろにいる三人に話しかける。
「長老方、これから起こることをしかと眼に焼き付けてくださいね
グレール」
『はい』
フゥッ、ガアアアアアアアア
グレールは大きく息を吸い、ブレスを放つ。
グレールの口から放たれたブレスは軍の中央部めがけて放たれる。そして衝突と同時に巨大な爆発が起き軍をすべて飲み込んだ、後には大きなクレータのみが残っている、生き残った人数も数えられるくらいだ。
「さて俺達の実力はわかりましたか」
クシャルの言葉に四人は示し合わせたように何度も頷く。
「グレールもご苦労様」
「いえ、自分の恩はこの程度では返せません。いついかなるときでもお呼びください」
「そうかでは戻るとしよう」
ちなみに何でこうなっているかというと少し前にさかのぼる。
俺達が全員集まっている時のことだ。
「その前に師匠に手伝ってもらわないとな」
この言葉に反応したのは2人だ、正確には一匹と一体かな。
「ちょっとまてや!それはまずいやろ!」
『そうですぞ!あの力が振るわれればこの国もどうなるか!』
二人は意味がわかっているからこそ焦っている。俺の本体の本気を出せばこの大陸すべてを壊すことなんて簡単なんだからな。
「とりあえずチールとタナトスはいまから言う指示に従ってくれ」
俺は二人に指示をする。
「チールはグレールに連絡を付けてくれ師匠にもだ、タナトスはグラン達に伝言を頼む、内容は『ラガラ王国は俺が解決する、そして王国は下手に動くな』と」
俺の指示を聞くと二人は魔法を使い瞬時に消える。
「さてじゃあ俺が何するかを説明しようか」
ここにいる5人は何がなんだかわかっていないようだ。
「これからの手順を言う、まず師匠にラガラ王国を壊滅してもらう。長老三人には師匠についていってもらってその力を見てもらう」
ここでメルダは疑問に思い、質問する。
「そのお師匠さんはどれくらい強いの?」
「そうだな、師匠ならパンチ一回で山を壊すことできる。他にも蹴りだけで海を割ることができるぞ」
クシャルはステータスの関係からそれらを簡単に実現できる。
「話を戻すぞ、ラガラ王国を潰したあとティアとクレアにこの里の皆を連れてある場所まで行ってほしい。次にルナリアとメルダだ二人は城に帰すがそのときステラを連れてレグルス王の下に行ってくれ。他に聞きたいことがあれば聞いてくれ」
「いろいろと言いたい事は有るけど、まず貴方はどうするの」
ルナリアは頭の痛そうな顔をしながら質問してくる。
「俺は国造りに必要な機材とか道具を運んでくるよ」
とそこにタナトスが戻ってきた。
『主よ頼まれていた伝言は伝えました』
「おう、サンキュー」
さてさて後はチールだが、あっちではどうなっているのかな。
本体のほうに意識を戻す。
「お目覚めですか、クシャル様」
「ああ、おはようフィーシィ、それで何でここに?」
「ふふ、寝ている時の顔を見ていました」
フィーシィは恍惚とした表情で断言する、俺はそれに気恥ずかしくなって顔を背ける。
「それよりここにチールが戻ってきているはずなんだが」
「はい、既に戻ってきています。あと10分もしないうちにここに到達しますよ」
「そっかなら少しだけ先に準備しておくか」
「お供します、クシャル様」
俺は自宅の横にある研究所に足を運ぶ。そのうちの一室にある魂無き身体を作っている部屋に来る。
「また新しい体をお使いに?」
「そうだよ、テオドールのほかにもう一人必要になりそうだから用意しようと思ってね」
俺は一つのカプセルに近づく。
「この魂無き身体をお使いになるので?」
「そうだ、不死性を持ちどんな状況にも対応できるテオドールと違い、この体は戦闘にはあまり適していないんだ。変わりに物事の性質を見切る眼を持たせているからどちらかというと交渉とかをさせるための体なんだ」
「そうなんですね、ではこの体をお使いに?」
「そうだよ用事が終わればテオドールのほうは100年動けなくなる、だから新しい魂無き身体であるコレを使う」
俺はこの体を取り出し以前使ったことがある台に乗せる。
「この体の名は――――」
そして作業が終わるころにチールとグレールがここの階層に到着したので表に出る。
すると緑色の栗鼠がこちらにやってくる。
『グレール呼んで来たで』
「ご苦労さん」
その後ろには大きな龍がいる。形は西洋の竜に似ていて翼は2対あり角はまるで王冠の様になっているのが4本、体には黒い鱗と白い羽毛が紋様のようにちりばめられている。体長は30メートルを超えていて一目見ただけでも王者の風格というものが感じられるぐらいだ。
それがチールの後ろで座って待っている。
(なんか躾けられたドーベルマンみたいだな)
そんなことを思いながらグレールに近づく。
『お呼びですか、クシャル様』
首を落としながら話けてくるグレール。
「少し頼みたいことがあってね」
「なんなりとクシャル様」
用件も聞かずにグレールは頷く。
「おいおい用件を聞か無くてもいいのか?」
「ええ、クシャル様の頼みならどんな難題も聞きますよ、僕はそれほどの恩を貴方から貰いました」
グレールはそういうが、あの時俺はこの木の番犬になるかな~って気持ちだけだったから、こんな気持ちを持っているグレールには申し訳なく思っている。
けど便利だからこき使っているけどな。
「そうか、頼みごとってのは少しの間、お前の力を使いたいんだ」
「わかりました、僕の力が役に立つならお使いください」
グレールの了承を得たのですぐに出かけるのだが、その前にグレールの嫁達さんがグレールに文句を言って時間を食ってしまった。
(なんだろ急に出張が決まったときの夫婦の反応に似ている)
横でグレールが嫁達へのご機嫌取りを聞いていると、甘ったるい言葉などを並べている。
ちなみに横にいるフィーシィーもなにやらこちらを見つめているが無視する。
どうやらグレールの痴話喧嘩がこちらにも飛んできた、声をかけてきたのはグレールの嫁の一人である蒼竜であるルーソだ。
「クシャル様、グレールをどうするおつもりですか」
声は荒げてないのに、なぜか怒っているのがわかる。
「すまんな、今回はグレールの力を借りるのが一番簡単なんだ。君達には悪いがグレールを少しの間貸してくれないか?」
「・・・どれくらいの期間ですか?」
止める事はできないとわかってくれたみたいなので、どのくらいかを聞いてくる。
「そうだな、短くて1年長くて10年てとこかな」
ここは誤魔化さずに言う。
でもルーソの反応は違った。
「え?それだけですか?」
そうだった竜の時間感覚はかなりずれているんだった、彼らの1年はそこまで長いという感覚がないのだ。
「それなら問題ありませんよ」
「ありがとうな、なるべく速く返すようにするからさ」
次にフィーシィーに話しかける。
「言っておいたものは準備できたか」
「はい、こちらにあります」
フィーシィーはある物を渡す。
「これで準備が整ったな、それじゃあ少しの間留守を任せる」
「はい、いってらっしゃいませ」
こうして準備ができた俺を頭に乗せてグレールが羽ばたく。
グレールの最高速度は音速にも匹敵するほどだ、よって6時間もかからずに目的地に付くことができる。
さてこれでクシャルのほうは問題ないだろう、次は里にいるテオドールのほうだ現在ティアとクレアをつれて長老達に面会を求めに向かっている。
「ねぇ、本当にコレでいいの」
ティアが質問してくる。
「問題ないよ、ラガラ王国なら師匠一人でおつりが来る、むしろラガラ王国が善戦できるかどうか」
「そこは心配していないわ、いままで派手に動かずにいたんじゃないの?」
ああそこか。
「俺が派手に動かなかったのは変に脅威と見られて拘束されるのが嫌だったからだよ、それがなくなるなら関係ないさ」
実際、俺の実力を知っている三人は納得した顔をしている。
しばらくして長老達の家に着く、既に話が伝わっているのかすんなりと通してくれる。
そして前回の部屋に案内され中に入る、中には以前と同じく4人がいた。
「いよう、にしても急に呼び出しやがって今回はどうした」
グスターは入った途端に話しかけてくる。
「実は師匠が今日の夕方頃にここにくるんだ、その出迎え頼んだ」
「おいおい、急だなお前さんはどうするんだよ」
「俺か俺は・・・・・バックレる」
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」
みんなの視線が痛い。
「いや冗談だよ、冗談、俺は国を作る場所を確保してくるさ」
正確には、国のシンボル的な何かを作りに行くだけなんだけどな。
「それと帝国相手じゃなく、ラガラ王国を潰すことで国を護れるって証明したいんだが、いいか?」
「こちらは国を護れる力があることを証明してくれれば問題ない」
それはどの国を対象にしてもいいってことだと解釈する。
「それじゃあ、俺は動くからよ、ああそれとステラ」
「なんでしょうか?」
「明日からルナリアとメルダを連れて王都に行きな」
「わかりました」
これでルナリアとメルダは問題ない、ステラ一人がいれば道中の危険もわけないだろう。
「それでティアたちだがこの里に待機していてくれ」
「それでいいの?」
ティアは不安になっているみたいだが問題ない。
「大丈夫だ、お前達の動くのはもう少し先だ」
ティアたちはこのまま里で待機させる。
「そして長老達には悪いですが、明日師匠とともにラガラ王国のほうに行ってもらいますよ」
「それはいいが、君の師匠はここにたどり着けるのか?誰も案内もせずに?」
「大丈夫です、たぶん見たらわかります」
グレールに乗ってくるからな、見間違いなんてものは無いだろう。
その後、細々とした話し合いも終わり家に戻る。
「じゃあ俺はこれから行くことがあるから」
「そういえばどこにいくか聞いてないけど」
「ん?ああ言ってなかったね、ネルファイスの元都市である場所だ」
戦争があってからは都市は壊されて現在そこにはある程度の自然しかない。
そして俺は土でできた人形馬とトレーラーハウスを繋ぎ里を出た。
日が沈むとき里に大きな影ができた。里の皆は影の原因を探し見つける、それは夕日に当たって本来白い羽毛が金色に見え、黒い鱗は光りを浴びて艶が出ていて神秘的な龍だ。
だがそれよりも、その龍の頭に載っている人物に全員の視線が集まる。
日に当たり輝いている長い髪、神に作られたような顔、そして何よりも誰もが頭を下げたくなるオーラがある。
それが龍とともに降りてくる。
俺はグレールの頭の上で里を見ているが、案外混乱は無かったな、中には跪いているものもいる。
「あそこの場所に下りてくれ」
グレールに訓練場に下りるように指示する。
今、訓練場は無人のようなのでそこに降りる。
すると入り口あたりが騒がしくなる。
『誰か来たようですね』
『そうだな、それと俺はここではオルフェウスと名乗るから間違えるなよ』
『わかりましたオルフェウス様』
そして姿を現したのは長老達とスルトス、それと戦士団にいた数名だ。
俺の前に来ると長老の一人であるクワイが話しかけてくる。
「ようこそおいでくださいました、貴方様はテオドール殿の師匠であらせられますか」
「そうだ、俺がテオドールの師匠であるオルフェウスだ」
話すとここにいる全員(グレールは除く)は驚いている。
「どうしたんだ?」
「いえ、女性の方だと思っていたのですが」
「ああ顔でそう思われていたのか」
やっぱ一目見ただけでは女性と思われるか。
「それよりも我々の館に招待したいのですが」
「じゃあ向かおうか、案内してくれ」
「はい、それと・・・・」
クワイの視線がグレールに向けられる。
「ああ、グレール、お前はここに残っていろ」
『わかりました』
グレールをに残して、俺は以前会談した場所に案内された。
中には俺と長老とスルトスそれとティアとクレアが呼ばれている、だがこの体はティアとクレアに会ったことがないので初対面を装う。
「そっちの彼女達は?」
「そちらは私の孫であるティアです。隣が同じ長老であるグスターの孫であるクレアです」
「そうか、君達がテオの言っていた子か」
肝心のティアとクレアだが顔から血が引いて青白くなっているのがわかる、彼女達はクシャルとの力の違いを理解しているからだと思われる。
そんな彼女達を無視して本題に入る。
「それよりテオにとある軍隊を潰してくれと頼まれたんだが」
「はい、亜人の国を作りそれを護ることができると証明するために力を見せるといっていました」
「そうか、ならそれに長老達も加えてくれといわれたんだが」
「私達も確認しなければなりませんから」
「なら明日の朝に貴方達を連れてラガラ王国を滅ぼしますがそれでいいですね?」
「ええこちらもそれで異論ありません」
これで話がある程度まとまる。
「さて、では話すことはこれで全部ですかね」
「そうですね、誰か質問のある者はいるか?」
クワイが周りを見渡して質問があがらないのを確認する。
「ではオルフェウス殿よろしく頼む」
「了解、こちらこそテオを頼むよ」
俺とクワイは握手をする。
「オルフェウス様、こんばんは我が娘の家に泊まっていってくだされ」
「では今晩は泊めさせてもらうよ」
こうして長老との話し合いが終わり、ティアとクレアが案内してくれている。
「ここが私の家です」
ティアたちの家に到着してご飯をご馳走になり寝た。
翌朝、長老達と合流して訓練場にいる。
「じゃあ、行くぞグレールの背に乗ってくれ」
全員が乗るのを確認するとグレールが飛び立つ、目標は進行中のラガラ王国軍だ。
そして到着し冒頭にもどる。
俺はグレールにラガラ軍を攻撃させた、結果軍は消滅した。
「さて、これで俺達の力はわかってもらえたと思う」
「・・・ああ、これほどとは思っておらんかったよ」
クワイは疲れた顔で言う。
「オルフェウス様が一人いればどこの国も手が出せなくなるでしょうな」
「なら?」
「ええ亜人の国ネルファイスの復興に私達も尽力します」
これで亜人たちの協力を取り付けることができた。