チールを擬人化すると
俺の言葉を聞いて、長老達は不安になったようだ。
それもそうだろう、全く知らない人物から総理大臣にしてやるなんて言われても信じられるわけが無いのと同じだ。
「何たわけた事を言っている、まずお前一人でどうにかできるはず無いだろう」
いやバリバリできるんですが。
まず本体でゴーレムを送り出して町、いや要塞を造り、俺の生命操作で生き物を作る。具体的には人かな、その後土地を守護しながら時間が経つのを待つ、他にも細々とした事もあるがこれで大抵解決できる。
でも今回それはしない。理由はそうだな、ハードモードとイージーモードのどちらか選ぶならどちらを選ぶ?俺は断然ハードモードだ。そっちのほうが達成感あるし面白いからな。だから俺は彼らを使う、他にも国を作る大義名分なども用意しないといけないからね。
「なら、貴方達亜人はこれまで通り奴隷狩りに同法を攫われ、奪われるだけでいいのですか?なんとかしたいと思わないのですか?」
「だが国を作ったとてすぐに潰されるのが落ちであろう」
同じような質問をティアもしていたな。
「そのためにティア達を強くした、それに俺も防衛に参加する。実力は彼女達が保証してくれると思う」
ティアとクレアは大きく頷く、俺はこの体の最大の力を彼女達に見せたことがあるからな。
「長老」
「なんだスルトス」
「私は訓練場で彼らの実力の一部を見ました」
「どうだったのだ」
「正直、戦士団全員でかかってもテオドール殿一人にも勝てないかと」
「・・・それほどなのか」
ちなみに戦士団とはこの里の唯一の戦力だ。平時は狩りと里の守護を担っていて、もし里のものが攫われた際にはそれを救出しにいく、たとえいくつもの町を滅ぼしてもだ。戦士団にいるものは猛者ばかりだ。
戦士団は1000人ほどなのだが、ゲリラ戦においては1万の軍隊を相手にできるほどの強さなのだ。
「それに俺のほかに、ここにいる誰も勝てない奴も防衛に加わってもらうから心配ない」
「そのものはそれほど強いのか」
「ああ、一夜で城を滅ぼせる奴だ」
正確には国すらもなんだがな。
「だが国を作るにしても場所はどうする、それに新しく居場所を作るにしても大量の素材とか金が必要になるぞ」
「そちらについても当てがある、ネルファイスって覚えているか」
俺の言葉に長老とスルトスが反応する。
「滅びた亜人たちの国だ」
スルトスと長老達は年齢が100歳をゆうに超えているので知っているはずだ。
「俺はそれを復活させる気でいる、名目は我らの先祖の地を取り戻すってな」
結構ありきたりな理由を使う、それと知っておかなければならないことがある。
「その際に旗頭にする者が必要が出てくる、最適なのは王族の血族が最適なんだが」
ここで長老達の反応を見るが、全員渋い顔をしている。
「ここにいるのかどうか答えないのはわかっている、だからティアを王族の血族ってことにする」
「「「!」」」
「それから王族の血族に子供を生ませそれをティアが生んだ子供にする、それなら問題ないだろう」
「「「・・・」」」
長老は少し考え込む、コレも当たり前だろう。
「でもすぐに頷けないのはわかっている、だから結果を見てから考えてくれ」
「結果だと」
「そうだよ、近いうちに帝国と王国がぶつかる。だからそれに横合いを入れるんだ、成功したら協力してくれよ」
グスターは何かを決心した顔になった。
「わかった!ワシはおぬしを信じよう」
「グスター」
「彼の言っていることが本当なら、ワシらに利益しかないじゃないか、何が問題なんだよ」
グスターの意見にクワイが物申す。
「利益しかないから、うそ臭いのだよ」
「無論、俺にも自分の利益があるさ」
「それが何か聞いても?」
「簡単だ俺は、とある組織を作るつもりだ。そのために国を作っているといってもいいぐらいだ」
「では国を作る見返りは、その組織を支援することか」
「そのとおり」
俺はギルドを全国に広めて中立の立場にするつもりだ、けど王国に掛け合ってギルドを作ったら国が上に置かれてしまう。そうするとただの傭兵団みたいになってしまうのでその手段は取れない、よって俺の意思が通じる国を作りギルドを浸透させること、これが俺の利益だ。
「どうです協力してもらえませんか」
「いいだろう、ただし我々に帝国、王国からも護りきれる力を示すことが条件だ」
「わかりました、ただしその際には亜人の勢力として見られるために少し戦士団をお借りしたい」
「全員は無理だが一部なら貸し出そう」
「ありがとうございます」
こうして俺と亜人達は協力関係(仮)になった。
長老との会議が終わりティアの家にまた戻る。
そして一つの部屋を借りいつもの三人とルナリアそれとメルダを呼ぶ。
「さて、私達を呼んで何の用かしら」
いまだに俺を疑っているルナリア。
「簡単だこれからのことを軽く説明しておこうかなと思って」
俺の言葉に全員耳を傾ける。
「まずティアとクレアはこの里に残ってもらい連絡役になってもらう」
「手段は?」
「コレを渡しとく」
俺が取り出したのはデバイスとコアだ。
「コレをこの家に置いておくそうすれば連絡が付くだろう、それとティアは簡易登録だけしとけよ」
「わかったわ」
「次にステラだ、ステラは当分の間メルダの護衛につけ」
「えっ?」
「メルダ殿下にですか、ルナリア殿下ではなく?」
「ああそうだ」
「・・・わかりましたですがルナの身は護ってくださいね」
納得してないようだが
「それは無理」
「「はっ!?」」
ステラと当事者であるルナリアが声を上げる。
「なぜですか!」
「簡単だルナリアには餌になってもらうからな」
ルナリアにはベトロントを嵌める餌になってもらう。
「だがそれは護らないというわけではないぞ、こいつを護衛につける」
俺はすぐ傍で果実を食べているチールの首を猫みたいに掴み上げる。
{なにするんや!}
「もう全員に話していいぞ」
「ええんか?」
「もう問題ないさ」
「でもこの姿でしゃべるのも疲れるから少し形かえるで」
チールは手から離れて俺達の前で姿を変える。
現れたのはどうがんばっても小学生にしか見えない子供だ。愛らしい顔つきに頭の上には丸い耳、背には自分の頭よりも上にまで伸びているリスの尻尾がある。
「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」
全員時が止まったように固まっている。
「で、わてを呼んだ理由は?」
「簡単だ、少しの間ルナリアの護衛をしてくれ」
「それは近づくもん皆殺しにすりゃいいんか」
物騒だなこいつ、まぁこいつらの考えは弱肉強食がベースだからしょうがないけど。
「じゃあどうすればいいんや?」
「簡単に言うとこれからルナリアが捕まる、でその後洗脳みたいなことされると思うからそれを防げ」
「わかった」
「いや!ちょっと待ちなさい!私が洗脳されるってどういうこと!」
これから起こることを教えるとルナリアが驚愕した。
「説明してやれ、ステラ」
ステラはルナリアの身に危険が迫っていることを教える。
「というわけで、現状ルナリアはベトロントに狙われているんだ」
「なるほどな~、ルナリアにあえてつかまってもらうって算段か~」
「そういうこと、ベトロントに内乱を起こさせる状況を作り出してから内乱を起こさせる。無論フリだあくまで軍隊を付き合わせるだけで戦いはしない、で、たぶんその状況でベトロントが動くと思う」
「どう動くと予想しとんや?」
「たぶんだが帝国の力を借りると思う、それか亜人の力を借りると思うんだが」
「なんや~まだわかっておらんのか」
ヤレヤレといった態度を取るのでチョークスリーパーをキメル。
「ならてめぇが考えてみろや」
「ギブギブ!」
とりあえずふざけるのはやめる、だがその時に部屋に進入してきた者がいた。
『何をやっているのだ』
頭に響いてきた声の招待は黒いローブ姿の精霊であるタナトスだ。
「おう久しぶりやあ、ターさん」
『お前は変わらないなチール』
二人は当然ながら知り合いだ、軽い性格のチールに寡黙なタナトスだ元居た場所では結構仲がよかった。
「どうしたんだタナトス」
『実は城の中で騒ぎが起きていまして、その報告に』
「騒ぎ?」
『何でも戦争が始まりそうだと』
「どういうことだ、内乱じゃないのか」
ライルやニコルと協力しているからそうそう内乱になる可能性は無いと思ったのだが。
「詳しく知ることはできるか」
『主からの命令なら調べてきましょう』
「じゃあ頼む、城の中にライル・ザラ・ヘクメスとグラン・ザラ・ヘクメス、ニコル・ザラ・ヘクメスという協力者がいる、そいつらに俺からの使いだって言えば問題ない」
『わかりました』
そう言いタナトスは虚空に消える。
一方、城では一室に三人の影があった。
「はぁ」
「ライル兄上できるだけため息は吐かないほうが」
「グラン、そう言ってもだな、この状況ではため息もつきたくなるだろ」
「そうだね~国防を担っているのがベトロントの息がかかっているの者が大半だからね、しかも比較的に武力を持っている僕の派閥でも10万も相手にはできないからね」
そこに突如として一つの影が現れる。
『おぬし達がライル・ザラ・ヘクメスとグラン・ザラ・ヘクメス、ニコル・ザラ・ヘクメスで合っているか』
三人は動じずに相手を観察する、そしてライルが話し出す
「貴殿はテオドール殿の使いのものですか」
『そのとおりだ、そして我の問いに答えよ』
「合ってますよ、僕がニコル・ザラ・ヘクメスで堅物そうなのがライル・ザラ・ヘクメスで隣の女々しそうなのがグラン・ザラ・ヘクメスです」
「「おい!」」
ニコルの軽口に二人は文句を言う、だがそんな状況にもかかわらずタナトスは質問する。
『城の中が騒がしいが、何が起こっている?』
この問いに三人は見合わせ、やがてライルが口を開く。
「実はラガラ国が攻め込んできたのだ」
そこからライルはどういう事態になっているかを説明した。
『なるほど、情報提供感謝する』
そういい再び虚空に消える。
タナトスが消えるとニコルは大きなため息と同時に椅子に深く座った。そのことが気になったのかグランが尋ねる。
「どうしたんだニコル」
「いや~アレの目の前にいたから疲れただけだよ」
「疲れた?」
ライルとグランはなぜ?と思っている。
「兄さん達はわからないだろうけどアレは絶対に敵対したらだめな奴だよ、僕でもすぐさま逃げ出すくらいだ。まぁ向こうに逃がす気がなければ1秒と経たずに殺されるだろうけど、あ~帰ってきたらテオドールに文句言ってやる」
ニコルの言葉にライルとグランは愕然とする。
「なるほど、だからルナリアが警戒するわけだ」
「今回、姉さんは今までに無いくらい危険視していましたね」
二人は何でルナリアがなんで監視をつけたのかようやくわかった。
再びティア宅の一室では虚空からタナトスが現れる。
『今戻りました、主よ』
「おかえり、でどうだった?」
『主のおっしゃってた三人に会うことができ情報を得ることができました』
「じゃあ報告を頼む」
結果から言おう戦争が起こる。原因は他国のラガラ国だ、この国で何があったかというとクーデターだ王子の内の一人が他の王子と王を殺し王座に座ったのだ。結果血の気の多い野郎どもが新王を持ち上げて侵略に乗り出したというわけだ。
「なるほどな」
『どうやら三人は防衛戦に参加するみたいです』
この言葉にルナリアは反応した。
「軍務卿は何をやっているんですか!国が攻められたときは王国が所有している軍と各貴族の軍が力を合わせて対処することになっているはずです!」
『どうやら宰相が王位継承者を決めるために王子達に戦わせるみたいです』
タナトスの話だと宰相であるベトロントが軍務卿にこういったらしい。
『この後継者争いは内乱にまで発展するだろう、だが私はそれをいいとは思っておらん、だから王子達の派閥にそれぞれ軍を出させる、そして一番功績を挙げた派閥の王子を王位継承権第一位にする』
そして国軍は後ろで警戒を強めるというものだ。
「やられたな~」
「やな」
「どういうことなの、説明してくれる」
ティアはわかってないようだ。
「簡単に説明するとな、ライル達を纏めさせない様にしているんだよ」
王位継承権1位という餌を使い貴族達を纏めないようにするための策だ、貴族達は王子の派閥を勝たせようとするために他の派閥と協力はしないと踏んだのだろう。
「だけどそれは無理なんだよな~」
俺がニコルとライルを組ませたからな。グランも王位を求めているわけではないからライルについても問題ない。
「内乱の問題が終わったからあとは建国とベトロントの排除だけなんだよな、ルナリアが手元にいない時点でベトロントは内乱に介入することができない」
「そ~して、手出しができないうちに王子達の争いを止める」
「本来はそんな感じだったんだが、ここでラガラ国が戦争を始めた・・・ん?」
ここで気づいた。
(もし戦争で王子達全員が戦死したらどうなるんだ)
「なぁ王子達が全員死んだらどうなるんだ」
この質問には嫌な顔をしながらもルナリアが答えてくれた。
「直系の血筋ではなく王家の者が嫁いで行った子孫に王となってもらうわ」
「それにベトロントは入っているか?」
ルナリアは少し考える。
「確か入っているはずよベトロントの母がそうだから、結構王の椅子には近いはず」
「なら方向転換したって考えていいいかな」
どうやってか王子達を亡き者にして王家の血を引く者達での争いにするわけだ、それに帝国の力を使えば問題も無いはずだからな。
「どう動こうかな~」
(一つ、俺が単独で動いてラガラ国を壊滅させてもいい。メリットは俺の実力を知らしめることができる、デメリットはラガラ国から悪印象を受けることになる。二つ、ライルたちをカバーして戦争に勝ってもらう、メリットはライルたちの地位が磐石になり建国に手を貸してもらえるようになる、デメリットはベトロントという膿が国に残ってしまいうから邪魔をしてくる可能性が出てくる。三つ、静観する、メリットなし、デメリットは結果がどう出るのかわからない、帝国とラガラ国を一気に解決すにはどうすればいいか)
「しかっし、ルナはんの国めんどくさいことになっとんねんな~」
「本当よ、いっそ全部吹っ飛ばしてくれればいいのにね」
(ふっとばすか・・・・・・・・めんどくさいからそうするか)
「おし、タナトス三人に伝言を頼む」
「おっなんか思いついたんか」
「なに簡単だった、どうやってベトロントをつぶすか考えていたけど。正攻法で行く必要は無いよね」
俺の表情を見てルナリアは嫌な顔をしている。
「・・・何するつもり」
「ん、ラガラ王国滅ぼして亜人たちに俺の実力を認めさせる。そしてついでに帝国とヘクメス王国の領土を少しぶんどるだけだよ」
この言葉に皆は懐疑的になった。
「その前に師匠に手伝ってもらわないとな」
ラガラ王国の進行軍は着々とヘクメス王国に迫っていた。
「陛下の言っていたとおりヘクメス王国が混乱しているので簡単に攻め込めましたね」
新王の取り巻きが新王を持ち上げる。
「我の言う事に間違いは無いのだ」
「さすがです陛下!」
陛下とその供回りはすでに勝利を確信していた、だがそこに一人の兵士がやってきた。
「報告します、巨大な魔獣と思われるものがこちらにやってきております」
「詳しく話せ」
「はっ!軍の進行方向に竜と思われるものの影が見えます」
「どうせ上空を通り過ぎるだけだろう」
「ですがこちらに向けて降下してきているのです」
この言葉に新王は少し不安になる、だが供回りは問題はないと考えている。
「ご安心を陛下、この軍なら竜の10匹や20匹など討伐できますぞ」
「そうかそれなら安心だ」
そして件の竜が降下していく、竜は白と黒が混じり光り輝いている。
そして竜の頭に一人の男がいるのが見える、そしてここにいる全員に声が響く。
『今すぐにこの地を去れ、出なければ滅ぼす』
その声は新王の下にまで響いた。
「あやつは何者だ!」
「陛下、確認しましたところのどうやら声の正体は木人だそうです」
「はっ、下等種族か、今すぐ打ち落とせ」
新王の命令で全員弓を構えて矢を放つ、だが竜の鱗がそれを阻む、頭の上に人物は緑色の風が巻き起こり矢を防ぐ。
『それが貴様らの選択か、ならいい・・・やれ』
すると竜はまた高く飛び上がっていく。
「陛下、どうやら私達の軍に恐れをなして逃げたようですね」
「ふん!我が軍に叶うものはいないな、ワッハハハハ」
新王は機嫌がよくなり笑い声が響く、だがコレが新王最後の言葉になった。